第十一話 「自分の中にいる魔物がかけてくる魔法」
学校から少し離れた森の中にきたマリネたちは辺りを見渡す。近くに別のチームがいないことを確認すると、開けた場所に五人で座れる円形のテーブルを用意してお茶会を始めた。
席に着くなりソワソワと体を揺らしてマリアはマリネのほうを心配そうに見つめる。
「あ、あの、マリネちゃん、こないにゆっくりしとってええんかなあ?」
「あーぁ。心配性だなーマリアさんは!大丈夫よ。ウチがいればなんとかなるってね」
マリアを横目にマリネはゆっくりとお茶を飲んでいく。レヴィンは腕を組んでじっとマリネを見つめた。
「とはいえ、マリネ。どう動くつもりなんだよ?」
「んーン?別に変えるつもりはないよー、レヴィン。前方はヒメカとエリオ。中央にレヴィンとマリア、後方にウチの盤石な布陣!」
マリネはカップをテーブルに置いて、胸に拳を当ててみんなにウィンクをしてみせた。自信に満ち溢れるマリネをよそに、ヒメカはお茶を飲みながらじとっとマリネを見つめる。
「マリネがどっかいかなければね?」
「ほーぉ?ヒメカはウチが信じれないと?」
マリネは顎に指を当て、じっとヒメカを見つめる。思い出した様子で頬をかきながらエリオが呟く。
「ま、まぁ、前科あるような・・・」
「エ、リ、オ・・・・?」
「ひぃ!!!何もありません!!!」
「ふーン?なら、よろしい」
エリオがぶんぶんと勢いよく首を振る。エリオの反応にマリネは満足げに、にっこりと微笑んで返した。しばらくして、目を瞑っていたレヴィンがスッと瞼を開けてマリネを見つめる。
「なあ、マリネ」
「ん―ン?どうしたん?レヴィン」
「それで、一体何を練習するつもりなんだ?」
レヴィンの問いかけにマリネは人差し指で宙に円を描きはじめる。
「ぁーあ。そうねー。不安なとこを重点的に対策するのがセオリーなんだけどねー。な、ん、だ、け、ど。今週って言ってもねー。もう時間も限られているわけだしねー、やったって意味ないじゃん?」
「お、それもそうだな。じゃあ、戦略的に決めることはないってことでいいか?」
レヴィンはマリネに手のひらを向ける。彼の質問に考える間もなくマリネは頷いた。
「まーぁね?行動次第で変わるから、自由に動けるのがウチらの強みだから、ガチガチに決めちゃうと足枷になっちゃうかなーって」
「なるほどな」
レヴィンは深く頷くと、用意されたお茶を一気に飲み干すと立ち上がった。マリアは心配そうに彼を見つめる。
「レヴィンはどこに行く気なん?」
「少しばかり体を動かしに行ってくるわ」
そのままレヴィンは森のほうを向くと、振り向くことなく手のひらをひらひらと仰ぎながら消えて行ってしまった。マリアはあらあらと息を吐く。
しばらく時が流れ、マリアは未だにマリネに怯えるエリオを一生懸命に励ましていた。一方、マリネはお茶を飲みながらいつになくツッコんでこないヒメカをちらりと見る。すると、ヒメカはお茶のカップを難しい顔をしながら見つめていた。
「んーン?ヒメカ、ど-したん?」
「なんでもないわよ、もぉ」
ヒメカのツンツンした態度を見て、マリネは溜息をつく。すぐにマリアのほうを見ると、彼女と自然と目が合った。マリネはすぐに顔をクイっと素早く横に動かして森のほうを示す。マリアはヒメカを一度見てから頷いて、エリオを促し一緒に席を立って森に消えていった。
それからまたしばらく静かな時間が過ぎ、いてもたってもいられずヒメカが腕を組んでそっぽ向く。
「な、なんの気遣いしてんのよ!バカぁ!」
「えーぇ?誰かさんはいっつも強気で負けず嫌いなのに、本当に言いたいことがある時は恥ずかしがり屋さんになっちゃうからなー。ウチってできる女だろ?」
クスクスと小悪魔的な笑みをマリネは浮かべて、机の上で頬杖をつく。
「もぉ・・・。はーあ!マリーには叶わないわね」
「ふふふ。これでもヒメカの彼女だからさー!」
「それは違うわ」
「えーぇ!?」
マリネが体をガクッと頬杖を崩すと、ヒメカはクスッと笑い、ようやく笑顔が戻ってきた。マリネは椅子をヒメカの椅子と繋げて隣に座る。
「ちょっと、何近づいてんのよ!」
「んーン?こっちのほうが安心するでしょ?」
ヒメカの紅く染まった頬をツンツンと人差し指でつつきながら顔を覗きこむ。ヒメカは恥ずかしそうに視線を外す。
「バカ」
「でーぇ?何が不安なの?」
マリネはあくびをしながら机に腕枕をしながらヒメカを横目で見つめる。一方のヒメカはチラチラとマリネを見る。目線が合う度にヒメカはモジモジと太ももを動かす。
「私、囮しかできないし、魔法だって当てれるか分かんないから・・・」
なるほどと言わんばかりにマリネは人差し指を立てると、ガバッと体を起こすなり、ヒメカを抱きしめた。ヒメカは驚きのあまり背筋をピンと伸ばす。
「ちょ、ちょっと!!!ここは外よ・・・!?もぉ、変態!!!」
「んーン?違うっての。あ、それともそちらが望みなら・・・!」
マリネはニヤニヤとヒメカの顔を覗き込むと、ヒメカはマリネの胸元にポカポカと拳を何度も当てる。
「バカ!!!バカ!!!こっちはこんなにも真剣で・・・」
「分かってるから」
そんなヒメカを見て、マリネは真剣な顔つきでヒメカの腕を握って暴れるヒメカを止め、顔を上げさせて見つめ合う。
「ねーぇ。ウチが手を添えててあげるから魔法撃つつもりで構えてみて。そうだな、あの目の前の細い木を吹き飛ばすつもりで!」
「え?」
「いーぃから」
「う、うん」
ヒメカはマリネの言う通りピンと肘を伸ばして正面に向かって構える。それを見てマリネはゆっくりと添えていた手を離す。
「え・・・?マリー?」
「はーぃ、前を向く。しっかり狙って、当てるつもりで!!!」
「う、うん」
あの細い木をにブチ当てればいい。ただそれだけ。でも、当たるかどうか分かんない。あんな細いのに当てたこと今までないし・・・。
次第にヒメカの腕が震えていく。マリネはゆっくりとまた手を添えるとヒメカの震えは収まっていった。
「んーン!!!ウチは嬉しいんだけどなー」
「ちょっと、な、何よ。何が言いたいのよ!」
ヒメカがマリネのほうを見ると、マリネは満足げな表情を見せた。
「ウチがおもちゃにするときと同じように手を添えてたらピンと伸ばせてるんだもの。これはもう、戦闘もヒメカはやっぱりウチがいないと不安なんだなって!」
「違うわよ!!!」
「まーぁ、半分冗談で半分本気なんだけど、それは少しだけ置いておくとして、自分と戦おうか。ヒメカ」
「えっ・・・?」
マリネはヒメカの胸をツンツンと指さすと、マリネからの予想外の提案にヒメカは唖然とするのだった。




