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明けの朝?

「……ああ、うん。ありがとう。ではそのように……」


 ぼそぼそと遠く声が聞こえてきて、アマリアはうっすら目を開けた。


 体はあたたかなものにしっかり包まれていて、心地いい。


 ぐっすり眠っていたようだ。


 目を開けて、少々ぼんやりした心持ちでいた。


 意外なまでに深く眠ってしまっていたようで、意識はすぐに覚醒しない。


 そのうちにばたんと音が聞こえた。


 ドアの閉まるような音だ。


 その音でアマリアの意識は刺激されて、ごそごそ動いて上半身だけを起こした。


 そちらに少し霞む視線を向ける。


「ああ、起こしてしまったかい。すまない」


 見えたのはフレイディの姿だった。


 誰かと話をしていて、それが終わったという様子。


 昨日、眠ったのと同じ、シャツにスラックスという姿でアマリアのほうを向き、ドアから離れてこちらへ向かって歩いてきた。


「いえ……」


 広い部屋ではないのだ。


 すぐにベッドサイドまでやってきたフレイディは、そっとベッドの端に腰掛けた。


 こちらへ手を伸ばしてきて、まだぽやんとしていたアマリアの髪に触れた。


 大きな手が髪と頭を撫でてくれる。


 寝起きのアマリアはどきどきしたり緊張したりするよりも、心地良さを強く感じて、ふにゃっと笑みを浮かべてしまった。


 つられたようにフレイディも笑顔になる。


「よく眠れたようで良かったよ」


「……はい」


 そう言われて、自分のこの体調からするに、ぐっすり眠れたのは本当だろうと思えたので、アマリアも頷く。


 そのアマリアにもうひとつ身を寄せて、フレイディは昨夜と同じように、アマリアの前髪をかき分けた。


「おはよう」


 ひとことだけ。


 それと同時に額にやわらかなくちづけが落とされる。


 アマリアはくすぐったくなってしまった。


 こんなふうに朝を迎えたことなんてない。


 でもとても幸せなものだと思ってしまう。


 こんな幸せな朝は初めてだ。


 まだ覚醒しきらない意識はアマリアに素直な喜びをもたらし、そのまま表情に表れたようだ。


「おはようございます」


 やっと少ししっかりしてきた声でアマリアも言う。


 身を引いたフレイディも微笑んだ。


「伝令が帰ってきたよ。援護の隊が、明るくなると同時にあちらを出発してくれたそうだ。あと一、二時間で着くだろうという話だ」


「それは良かったです」


 現実的な話になり、アマリアの意識は覚醒へ向かっていく。


 帰れるのだ。


 一夜の宿は有難かったが、やはり慣れない場所だった。


 もはや住み慣れた自宅となった宮廷に帰れるというのには喜びを覚えてしまう。


「さ、支度をしよう。食事もいただけるそうだから」


「はい」


 支度といっても、ほかに服はない。


 寝乱れたのを直したり、顔を洗ってメイクをしてもらったり、髪をとかしてもらったり、その程度だろう。


 それでも外に出るのだからきちんとしなければ。


 フレイディは別室で執事に支度をしてもらうからと出ていった。


 アマリアはそのままこの部屋にメイドを呼んで、支度をしてもらうことになる。


 そこでやっと、はっとした。


 先ほどまでフレイディと何気なく話をしていたが、寝ていたために髪も服も乱れていただろう。


 そんなところを見られ、あまつさえ触れられてしまった。


 遅ればせながら恥ずかしくなってしまう。


 いや、寝姿や寝顔まで見られてしまっただろうから、そんなことは些細なことかもしれないけれど。


 それでもそんな姿は初めて見せてしまったのだから、どうしても恥ずかしい。


 支度が終わって顔を合わせたとき、ちょっと恥じらってしまいそうなのはなくならない気がする。


 アマリアは今更、居心地の悪い気持ちを味わってしまった。

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