今夜はひとつ、床の中5
その様子はフレイディにとっても新鮮だったらしい。
ふ、と表情が崩れて笑みになる。
「そういう顔もかわいらしいよ」
今度は違う意味でのからかいに、アマリアはやっと、はっとした。
違う意味で恥ずかしくなってしまう。
こんな、慣れていなかったり、わかっていなかったりする様子を見られ、あまつさえかわいいなどと言われてしまった。
「か、からかわないでくださいませ」
なんとか口を開いた。
また膨れるようになってしまって、アマリアは自分がもどかしくなってしまう。
どう考えても、自分が子供すぎたと思い知ってしまったのだから。
そしてこの状況では、どうしてもフレイディのほうが年齢も経験も圧倒的に上だ。
主導権も完全にあちらであった。
アマリアのその拗ねたような声は、くすっという笑いで終わらされてしまった。
「からかってなんていないさ。……でもそのことは覚えておいておくれ」
しかし、後半は少し声が固くなっていた。
アマリアが混乱の中でもそれに疑問を覚えたとき、フレイディの顔が、すっと近付けられた。
どくんっとアマリアの心臓が跳ねる。
まさか、こんな至近距離で近付かれるなんて、まさか……。
そう思って、ぎゅっと目を閉じて身を縮めたのに。
ふわっとやわらかなものが触れたのは、額だった。
アマリアのやわらかな髪をかき分けて、額にくちづけが落とされる。
アマリアはどくどく速くなった鼓動は治まらないまま、きょとんとした。
「さ、おやすみ。今のところはなにもしないからね」
おやすみ……。
おやすみ……。
そして額にくちづけ……。
まるで子供を寝かしつけるようなものだった、と思ってしまい、アマリアは気まずくなった。
まさかくちづけ、なんて思ったことに恥じ入ってしまう。
「……おやすみ、なさいませ」
でももう、子供扱いなんて! とはやはり言えないのだった。
アマリアはなんとかそう言い、もそっと動いて、落ち着きのいい場所を見つけて、目を閉じた。
フレイディの手はアマリアの肩に戻り、肩から背中にかけてを優しく包んでくれる。
あたたかくてしっかりとした感触に、どきどきしてしまいながらも、アマリアは安心を覚えた。
フレイディの気持ちや望みがまったくわかっていなかったことに、罪悪感や、自分が子供かつ呑気すぎたという後悔はある。
でもこの状況はとても心地良かった。
あたたかくて、ほんのり香水のような甘い香りもして、心地いい。
一日の疲れと心労が再び襲ってきた。
もう月だってほとんど真上を超してしまっただろう時間になっているのも、後押しする。
アマリアは、ふぅ、と長い息をついて力を抜いた。
すぐに意識は眠りへと吸い込まれる。
「おやすみ、アマリア」
大きな手がアマリアのやわらかな髪を撫でて、上のほうから小さな声でそう言ってもらえたのも、ほとんど認識できないままだった。




