第4話
更新を待っていてくれた皆様方、大変お待たせしました。
村が見えるところまでやって来た。木の陰に身を隠しながら様子を伺う。
村は約2メートルの木の柵でぐるっと囲まれており、ここからでは中の様子が見えない。
どうしたものかと思い、取り敢えず村の門があったところまで迂回することにした。
森を迂回していると、森の中にいくつかの足跡があった。恐らく村を襲った魔物のものだろう。2足歩行に、子どものような足幅、何かを引きずったような跡………これらから推測するに、ゴブリンだ。
ゴブリンと言えば、大抵の人は子供くらいの身長をしている緑色の肌をした小鬼…というイメージだと思う。しかしこの世界でのゴブリンは、身長こそ同じだが肌の色が赤黒くお腹の辺りが白い。目は黄色でギラギラしており、尖った爪に尖った歯、横に尖った耳を持っている。武装はイメージ通りに木を折っただけの棍棒や木の盾、村から奪ったであろう農具や状態の悪い剣や弓などを装備している。因みにここに在る引きずった跡から見るに、どこかの村から奪ったであろう鍬や鋤で武装しているのが予想される。
ゴブリンと言えば最弱の魔物。それはこの世界でも大差はない。特に訓練されていなくても、成人男性なら手傷を少し負うぐらいで十分に倒せるし、子どもでも数人で囲めば倒すのは早々難しい話ではない。だが、数が増えればその限りではない。
この踏み荒らされた森を見るに、少なくとも100匹近くのゴブリンが、村へ向かっている。
村の人口が何人かなんてのはさすがに分からないが、俺が住んでいた(という設定)の村はそこまで大きくない。成人男性は40人いるかいないかで、あとは子供や女性や老人だ。特に老人の人数が多い。この数のゴブリンが一斉に襲ってきたのであれば、耐えられるはずがない………か。
俺は目を閉じて覚悟を決めると、足跡を追って門へと向かった。
門前では、50匹近くのゴブリンが弓に射られて死んでいた。門の左右にある2つの物見やぐらから弓で狙っていたらしい。ゴブリンにも弓持がいたらしく、物見やぐらにもいくつか矢が刺さっていて、胸に矢を受けた男が倒れているのが見えた。
門は数の暴力で無理やり突破されていた。門だった木にはクワや鋤で何度も叩かれた跡がある。
門が突破された後は激しい戦いが起こったらしく、人もゴブリンも関係なく多くの死体があった。次第に人が数を減らし、数の力に押されるような形で村の中心地へと死体が続いていく。
村の中心地には村長の大きな家がある。そこはもしもの時の避難場所としてされており、恐らくこの襲撃の時も村長の家が避難場所となっていたのだろう。村長の家の前でまた激しい戦闘があったようだ。総力戦になったらしく、子どもとか老人とか関係なしに、全員の男性が武器を取って戦ったらしい。俺よりも年下の男の子もいた。
村長の家に入る。入ったとたん、一段と血と臓腑の匂いが強くなった。部屋に入ると、そこには数十匹のゴブリンが、女性の死体を食べていた。
肉が噛み千切られ、骨をしゃぶり、また別の女性の死体へ。
俺は狩人という設定もあって、狩った動物を解体した記憶があるし、今やろうと思えば間違いなくできる。だからそういう光景を見るのには多少の耐性はあるし、神様もあまり取り乱さないように、精神を強化してくれたらしいから、もう少し大丈夫だと思っていた。だが、これは無理だ。涙が止まらない。
もう、見れたものではなかった。まだ無事な村人もいるが、何人かはもう食い散らかされている。
直接かかわりを持っていたわけではない。この記憶は神様が俺に植え付けた記憶。
それにまだよかったではないか。ゴブリンやオークと言った魔物は女性を忌み者にする。この村に関わらずこの世界の大概の女性は、そう言う結果になりたくないため自害用のナイフを持っているのだが、全員がそのナイフで咽喉を裂いていた。もちろん、子どもはそこまでの勇気がなかったようで、血が付いてないナイフを握りしめている女の子もいた。代わりに、母親がやったのだろう。
だから、そう言う光景を見るよりかはよかったではないか。所詮俺の持っている記憶は本物ではなく、偽物で、俺とこの村人たちとは、何ん関係も―――
「――ないなんて、言える訳ないだろ!」
俺の叫び声に、ゴブリン達が一斉に俺を見た。
「グゲゲゲゲ」
その目は、まるで獲物を見つけた時のような、そんな目だった。
ピシュンと、小さな音が鳴る。それと同時に、一体のゴブリンの頭に小さな穴が開き、血を流して倒れた。
【水鉄砲】。俺の指先から、圧縮された小さな水の弾丸が放たれたのだ。
ゴブリン達は突然仲間が血を流し倒れたことに戸惑いを隠せない。
すぐさま【水鉄砲】を撃つ。
貫通した【水鉄砲】は、そのまま縦に並んでいた2匹のゴブリンの頭にも風穴を開けた。
また、音がしたと思ったら、仲間の3匹が倒れた。
慌てて床に置いていた武器を取るゴブリン。
「グゲゲゲゲゲゲ!」
「いいぜ、かかってこい。皆の敵だ。生きて帰れると思うなよ」
決して言葉の意味を理解したわけではないだろうが、ゴブリンが一斉に襲ってきた。
俺は慌てず近い奴から【水鉄砲】で頭を撃ち抜く。そうすると必然的にその後ろにいたゴブリンに貫通して、大体2~4匹を同時に倒せる。利き手の右手で頭を正確に狙い、左手は取り敢えず心臓を狙って撃つ。
「【水鉄砲】【水鉄砲】【水鉄砲】」
7匹のゴブリンの頭に穴をあけ、6匹の胴体に風穴を開ける。胴体に風穴を開けたゴブリンは、当たり所が悪かった奴は即死するか少し苦しんだ後に動かなくなり、運が良かった奴は床に転がりもがき苦しんでいる。
可愛そう……とは思わない。もっと苦しめ……とまでは思わないが、苦しんで当然だとは思っている。自業自得だ。
何匹かが慌ててお鍋の蓋(木製)や木の盾、鉄の盾を構えるが、俺はお構いなしに、そいつらにも【水鉄砲】を撃つ。
俺が撃った水の弾丸は何の抵抗もなく盾を貫通し、ゴブリンに穴をあけた。
「悪いな。そんな物じゃあ俺の魔法は防げない」
十数匹のゴブリンを、一瞬で皆殺しにした。
さすがにまずいと思ったのか、残り7匹のゴブリンが横に広がり、俺を囲うようにじりじりと距離を詰めたきた。
「【水剣】」
俺の手のひらから3メートルの水の剣が出現。俺はそれを一気に振りぬく。
何本かの柱を巻き添えにしながら、しかし何の抵抗もなく残り7匹のゴブリンの首を飛ばした。
ありがとうございました。
本日より、日は空きますがこの作品に限らず他の作品も更新を再開していきますので、良かったらどぞ。
また、感想の方では返信こそできてませんが、しっかろと見てます。感想をくれた方、ありがとうございました。