こんにちはーーーー ※
※職場で体験したお話です。そして現在進行系なので短めです。
それは、仕事に慣れてきた頃の事だった。
うちの職場は、入り口の扉を開けるとまず受付があり、奥にはパソコンなどが並ぶ事務所。そしてその奥には喫煙所がある。
仕事が始まる前には、タバコを嗜む人もそうでない人も、飲み物片手にそこで軽くオヤツを食べたり喋ったりして過ごす。
ある日、五人で喋っていると受付から声がした。
「こんにちはーーーー」
それは男性の声だった。
若者ではなく、老人でもない。しかし、少し細めで語尾は長い。
誰も動かないので、新人である自分の仕事だ……そう思い、受付へと向かう。
しかし、誰もいない。
そして、よく考えてみると扉の「ちりりん」という開閉音もない。
気になってその場を見渡したものの、立ち去る姿さえ見当たらない。
首を傾げながら喫煙所に戻ると、四人が口々に訊いてきた。
「何で突然表に行ったの?」
「ちりりんって、ベルの音だった?」
「ノックの音?」
「こんにちはーーーー?」
そこまで聞かれると、嫌な予感しかしない。
しかし――。
「こんにちはーーーー、って男性の声がしたんですよ」
と声音を真似てみた。
「「「「やっぱりかーーーー!!」」」」
声がハモった。
「見えた?」
「見える人?」
「そういうの感じるタイプ?」
「入り口の盛塩の理由がわかった?」
皆が矢継ぎ早に訊く。
皆さん曰く、建物に難があるわけではないらしい。ただ、建物の裏手が某市民病院なので、通っているんではなかろうか……とのこと。
ただ、ここはそれだけではないらしい。
挨拶する人は常連さんらしく、忘れた頃にいらっしゃるらしい。
そして、他にも突然水道をジャーーーッと勢い良く流すものや、筆記用具の入ったマグカップを動かすもの。鍵が掛かって入れない裏口をノックするものなど、多種多様なのだとか。
「いつか一人で留守番する時、給湯室の水道が激しく流れても、絶対止めに行かなくていいからね。勝手に止まるから。心配でも確認しなくてもいいからね」
そう笑顔で話す社員さんに、少しだけゾワリとしたのは内緒です。