31.決戦前夜(3)
「アテナと」
「アナスタシアの!」
「「アルカディアらぢお~!」」
ギルド【アルカディア放送局】の、ギルドハウスの一室。
彼女達はそこで生放送を行なっている。ラジオと銘打ってはいるが、映像付きだ。
毎週末に某大手動画サイトにて放送されるこの番組は、ゲーム内の最新ニュースやマル秘情報が聞けたり、トッププレイヤーや、目立った活躍をした注目のプレイヤーがゲストで呼ばれたりしており、彼女達の小粋なトークや可愛らしい見た目もあって、人気を博している。
「さてさて今日も始まりました、アルカディアらじお。パーソナリティはいつも通り私アテナと、アナスタシアでお送りしております。
秋も終わりに近付き、すっかり寒くなってきた近ごろ。皆様はいかがお過ごしでしょうか。こんな寒い日は、あったか~いうどんでも食べたい気分ですねぇ」
「うどんと言えば、来週はうどん公国が建国してからJust three years。首都のうどん市……旧・香川県高松市では盛大なceremonyが開かれますネー」
ちなみにこの作品の世界、この時代において四国は【うどん公国】として独立しているが、特にそれが作中に大きな影響を与えるわけではないので、詳しい説明は割愛させて貰う。
「というわけで私アテナ、ギルド【C】の料理長クックさんに、本日のために特別に、きつねうどんを作っていただきました!どーん!」
アテナがアイテムストレージから料理を取り出し、実体化させる。
「皆様、こちらに見えますのがクック氏特製、驚きの品質★×10のうどんでございます。いやぁ美味しそうですねぇ!あ、こいつぁたまりません!ヨダレずびっ!」
おどけて口元を拭う仕草をしながら、アテナがうどんをアイテムストレージに収納し、カメラ目線でビシッ、と指を指した。
「これは私があとで美味しくいただくとして、何ともう一つ!視聴者の皆様のために同じ物を用意させていただきました。番組にお手紙を送ってくれた方の中から抽選で一名様にプレゼントしちゃいまーす!」
番組に届いたメールが過去最高記録を突破するフラグが立った。だがその時、カメラに向かって騒がしく語る相方に、アナスタシアが話しかける。
「ところでアテナちゃん、ワタシの分はどこにありますかー?」
「えっ」
「えっ」
「………………」
「………………」
気まずい沈黙がその場を支配する。軽く放送事故である。
しばらくお互い黙ったまま見つめ合った後、アテナがウィンクをしながら舌を出す。
「忘れてた。ごめんねっ☆(ゝω・)」
「よろしい。ならば戦争だ」
アナスタシアが刀を抜いた。目が据わっている。怖い。
「アナちゃん口調!いつものいかにもキャラ作りっぽいエセ外人口調どこいっちゃったの!?っていうかなんかキレ方がおっさんみたいで怖いよ!」
「ころしてでも うばいとる」
暴れだすアナスタシア。それをなんとか抑えながら、アテナが声を張り上げる。
「きょ、今日のゲストはギルド【流星騎士団】の団長、シリウスさんでーす!明日のボス戦に備えて忙しい所をわざわざ来てくださいました!ちょっと予定より早いですけど入ってきてくださーい!っていうか助けて!メイン盾はやくきてー!」
「僕、明日のボス戦について発表するために呼ばれた筈なんだけど、何でここでもトラブルに巻き込まれてるんですかねぇ!?」
心底嫌そうな顔で部屋に飛び込んできた騎士によって、数分の後にアナスタシアは鎮圧された。
突然起こったトッププレイヤー同士の戦いも含めて、【第一次うどんの乱】と名付けられた放送事故は、長く伝説として語り継がれる事となった。
うどん公国に栄光あれ。
シリアス(笑)なんてなかった(キリッ




