表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
最終章 いじめ、三連続

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/96

最終回 第七十八話 セリアの選択



夏の終わり――。


貴族たちの大きな行事、星見祭が終わって数日。


王城の奥。


限られた者しか入ることを許されない一室で――


秘密の会合が開かれていた。



円卓を囲むのは、この国の中枢。


アルヴェリア国王。


グラディウス宰相。


ヘリオドール侯爵。


シュヴァルツリッター辺境伯。


そして、その嫡男カール。


ノルドハーフェン港湾伯爵。


さらに――


転生者の代表として選ばれた三人。


王太子レオンハルト。


カイゼル・グラディウス。


アルヴィン・シュタールヴェルト。



静かな空気の中。


最初に口を開いたのは、国王だった。


「……“日本”か」


低く、重い声。


「識字率が、そこまで高いとはな」


宰相が続ける。


「国民が王を選びます」


一拍。


「任期は、長くて四年」


辺境伯が腕を組む。


「国中から税を集め、道路を整備する」


港湾伯爵が言葉を重ねた。


「港の改修も、同じく税から賄われていたそうです」


国王は、ゆっくりと頷いた。


「何より――」


視線を細める。


「国民が、飢えていなかった」


静かに言う。


「……興味深い」



そのとき。


アルヴィンが、手を挙げた。


国王が、目で許可を示す。


「発言を


 許す」


アルヴィンは、一歩前に出た。


「我々がいた“日本”は、世界規模の物流網を持っていました」


淡々とした声。


「そして島国です。陸続きの侵略がない」


一拍。


「すべてを、そのまま適用することはできません」


その言葉に、場がわずかに引き締まる。


国王は、静かに言った。


「神の啓示があった」


全員の視線が集まる。


「“未来の憂いを払うため、未来を知る子供たちを授けよう”」


重い言葉だった。


「内戦を防ぎ、国を安定させるための存在」


ゆっくりと視線を巡らせる。


「それが、お前たちだろう」


誰も、否定しなかった。



宰相が続ける。


「将来、この国を担う者の中に――転生者が多くいる」


ヘリオドール侯爵が、口元を緩めた。


「となれば」


静かに言う。


「子の代で、中央集権は進むでしょうな」



カールが、すぐに口を開いた。


「その分――」


はっきりと言う。


「辺境伯領の防衛費は、国から出していただく」


視線は鋭い。


「現状の負担は、不均衡です」


ノルドハーフェン港湾伯爵も続いた。


「港湾都市も同様です」


落ち着いた声。


「このままでは、カルメリア海商共和国に遅れを取る」


一拍。


「港湾強化の支援を願いたい」


そして、わずかに笑う。


「利益は、必ずお返しします」



カイゼルは、そのやり取りを見ながら思った。


(……繋がった)


中央集権。


それは誰かを抑えつけるためのものではない。


それぞれの利益と、交換されるものになりつつある。


(血を流さずに、進めるかもしれない)


初めて、そう思えた。



そのとき――


王太子が立ち上がった。


「父上」


まっすぐに国王を見る。


「僕の代で――」


一拍。


「アルヴェリア連合王国を、さらに発展させると誓います」


静かに、しかし確かな声。


「どうか、ご安心を」


国王は、何も言わなかった。


だが――


その目は、わずかに細められていた。



数日後。


エーデル男爵家、応接間。


穏やかな午後。


ソファには、ロゼッタとカイゼル。


その傍らで、セリアが紅茶を用意していた。


カイゼルが、ぽつりと話し始める。


「……国王が、秘密の会合を開いた」


かいつまんで、内容を語る。


ロゼッタは、静かに聞いていた。


やがて、小さく息を吐く。


「……内戦は、避けられそうなのね」


カイゼルは頷いた。


「中央集権に向かって動いている」


少しだけ苦笑する。


「税の取り合い、でもあるけどな」


ロゼッタは、遠くを見るように言った。


「ゲームの内容から――」


ゆっくりと首を振る。


「こんな未来になるなんて、思わなかった」


沈黙。


その隙間に――


セリアが、そっと口を開いた。


「……もう」


静かな声。


「ゲームなんて、関係ありません」


二人が、振り向く。


セリアは、まっすぐに言った。


「私たちは――」


一拍。


「私たちの未来を、生きていきましょう」


ロゼッタが、ふっと笑う。


「……本当ね」


カイゼルも頷いた。


「ああ」


短く。


だが、確かに。


「その通りだ」


セリアは、静かに紅茶を注ぐ。


湯気が、やわらかく立ち上る。


これまで。


ゲームに振り回されてきた。


未来に怯え。


決められた結末を、なぞろうとしていた。


だが――


もう違う。



これは、誰かが作った物語ではない。



自分たちの選んだ、未来だ。



春に始まった日々は、


やがて夏を越え、


そして――


新しい季節へと進んでいく。


セリアは、静かに思った。


(もう、怖くない


 誰かに決められた未来じゃなくていい


 私は――自分で選ぶ)


その一歩は、小さい。


だが確かに。


未来へと、続いていた。



―完結―


数ある作品の中から本作をお選びいただき、最後までお読みくださりありがとうございました。貴重なお時間に感謝いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
検索用タグ 乙女ゲーム、悪役令嬢、バッドエンド、ハッピーエンド、異世界転生、魔法、貴族社会、主人公最弱スタート、孤児主人公、バッドエンド回避、男爵令嬢、宰相の息子、転生者、コメディ、会話多め、転生者同盟 異世界転生 乙女ゲーム 悪役令嬢 学園 魔法 群像劇 政治 貴族社会 中央集権 政略結婚 バッドエンド シリアス ダーク 転生者複数 女主人公 人間ドラマ 成長
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ