最終回 第七十八話 セリアの選択
夏の終わり――。
貴族たちの大きな行事、星見祭が終わって数日。
王城の奥。
限られた者しか入ることを許されない一室で――
秘密の会合が開かれていた。
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円卓を囲むのは、この国の中枢。
アルヴェリア国王。
グラディウス宰相。
ヘリオドール侯爵。
シュヴァルツリッター辺境伯。
そして、その嫡男カール。
ノルドハーフェン港湾伯爵。
さらに――
転生者の代表として選ばれた三人。
王太子レオンハルト。
カイゼル・グラディウス。
アルヴィン・シュタールヴェルト。
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静かな空気の中。
最初に口を開いたのは、国王だった。
「……“日本”か」
低く、重い声。
「識字率が、そこまで高いとはな」
宰相が続ける。
「国民が王を選びます」
一拍。
「任期は、長くて四年」
辺境伯が腕を組む。
「国中から税を集め、道路を整備する」
港湾伯爵が言葉を重ねた。
「港の改修も、同じく税から賄われていたそうです」
国王は、ゆっくりと頷いた。
「何より――」
視線を細める。
「国民が、飢えていなかった」
静かに言う。
「……興味深い」
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そのとき。
アルヴィンが、手を挙げた。
国王が、目で許可を示す。
「発言を
許す」
アルヴィンは、一歩前に出た。
「我々がいた“日本”は、世界規模の物流網を持っていました」
淡々とした声。
「そして島国です。陸続きの侵略がない」
一拍。
「すべてを、そのまま適用することはできません」
その言葉に、場がわずかに引き締まる。
国王は、静かに言った。
「神の啓示があった」
全員の視線が集まる。
「“未来の憂いを払うため、未来を知る子供たちを授けよう”」
重い言葉だった。
「内戦を防ぎ、国を安定させるための存在」
ゆっくりと視線を巡らせる。
「それが、お前たちだろう」
誰も、否定しなかった。
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宰相が続ける。
「将来、この国を担う者の中に――転生者が多くいる」
ヘリオドール侯爵が、口元を緩めた。
「となれば」
静かに言う。
「子の代で、中央集権は進むでしょうな」
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カールが、すぐに口を開いた。
「その分――」
はっきりと言う。
「辺境伯領の防衛費は、国から出していただく」
視線は鋭い。
「現状の負担は、不均衡です」
ノルドハーフェン港湾伯爵も続いた。
「港湾都市も同様です」
落ち着いた声。
「このままでは、カルメリア海商共和国に遅れを取る」
一拍。
「港湾強化の支援を願いたい」
そして、わずかに笑う。
「利益は、必ずお返しします」
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カイゼルは、そのやり取りを見ながら思った。
(……繋がった)
中央集権。
それは誰かを抑えつけるためのものではない。
それぞれの利益と、交換されるものになりつつある。
(血を流さずに、進めるかもしれない)
初めて、そう思えた。
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そのとき――
王太子が立ち上がった。
「父上」
まっすぐに国王を見る。
「僕の代で――」
一拍。
「アルヴェリア連合王国を、さらに発展させると誓います」
静かに、しかし確かな声。
「どうか、ご安心を」
国王は、何も言わなかった。
だが――
その目は、わずかに細められていた。
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数日後。
エーデル男爵家、応接間。
穏やかな午後。
ソファには、ロゼッタとカイゼル。
その傍らで、セリアが紅茶を用意していた。
カイゼルが、ぽつりと話し始める。
「……国王が、秘密の会合を開いた」
かいつまんで、内容を語る。
ロゼッタは、静かに聞いていた。
やがて、小さく息を吐く。
「……内戦は、避けられそうなのね」
カイゼルは頷いた。
「中央集権に向かって動いている」
少しだけ苦笑する。
「税の取り合い、でもあるけどな」
ロゼッタは、遠くを見るように言った。
「ゲームの内容から――」
ゆっくりと首を振る。
「こんな未来になるなんて、思わなかった」
沈黙。
その隙間に――
セリアが、そっと口を開いた。
「……もう」
静かな声。
「ゲームなんて、関係ありません」
二人が、振り向く。
セリアは、まっすぐに言った。
「私たちは――」
一拍。
「私たちの未来を、生きていきましょう」
ロゼッタが、ふっと笑う。
「……本当ね」
カイゼルも頷いた。
「ああ」
短く。
だが、確かに。
「その通りだ」
セリアは、静かに紅茶を注ぐ。
湯気が、やわらかく立ち上る。
これまで。
ゲームに振り回されてきた。
未来に怯え。
決められた結末を、なぞろうとしていた。
だが――
もう違う。
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これは、誰かが作った物語ではない。
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自分たちの選んだ、未来だ。
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春に始まった日々は、
やがて夏を越え、
そして――
新しい季節へと進んでいく。
セリアは、静かに思った。
(もう、怖くない
誰かに決められた未来じゃなくていい
私は――自分で選ぶ)
その一歩は、小さい。
だが確かに。
未来へと、続いていた。
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―完結―
数ある作品の中から本作をお選びいただき、最後までお読みくださりありがとうございました。貴重なお時間に感謝いたします。




