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乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
不慮の寵姫

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第七十一話 少年たちはまっすぐだった

21時に短編「不慮の寵姫」を上げます。念の為。ゲーム内のアデリーナを書きました。本編の転生者のアデリーナとは別人です。安定のバッドエンドです。


5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。





春――。


王城の一室。


王太子レオンハルトが主催する、小さなお茶会。


集められたのは、未来の王国を背負う子供たちだった。


誰もが、家を背負い。


誰もが、立場を持っている。


そして――


誰もが、まだ子供だった。



沈黙を破ったのは、アルベルトだった。


「最高裁判所の時はさ」


軽い口調。


だが、視線は鋭い。


「港湾伯爵達、賛成に回ったよね」


一拍。


「なのに、今回は反対だ」


カイゼルがすぐに応じる。


「……先の港湾工事だけでは満足しないのか?」


アルベルトは肩をすくめた。


「逆だよ」


指を軽く立てる。


「伯爵の次は子爵、男爵って来るだろ?」


視線を巡らせる。


「今は港湾伯爵が、子爵家以下の婚姻を管理してる」


少し笑う。


「それで都市を治めてるのに――権利を取り上げられるんだ」


ディルクが腕を組む。


「……そりゃ反発するな」


カイゼルは苛立ちを隠さない。


「女王派は性急すぎる」


吐き捨てるように言う。


「可決しないだろう」


その言葉に。


レオニードが静かに口を開いた。


「可決するさ」


淡々と。


感情を挟まずに言う。


「法案はな、出すことに意味がある」


一拍。


「時間さえかければ、いずれ通る」


空気が変わる。


カイゼルの目が鋭くなる。


「……ふざけるな」


低い声だった。


「最高裁判所設立で、僕の姉は人質になった」


一歩踏み出す。


「お前を許さない」


レオニードは微動だにしない。


「必要な犠牲だ」


迷いなく言い切る。


「中央集権は、外国勢力から国を守るために不可欠だ」


ディルクが顔をしかめた。


「どっちでもいい」


吐き出すように言う。


「血を流さないでくれ」


レオニードは、わずかに視線を動かした。


「……多少は流れる」


ディルクは強く言い返す。


「流れるのは俺たちだ」


拳を握る。


「最前線に立つのは、俺たちなんだぞ」


カイゼルも言葉を重ねた。


「理想で人を切り捨てるな」


怒りが滲む。


「身内を差し出したんだぞ」


レオニードは、静かに言う。


「それでも、やるしかない」


アルベルトがため息をついた。


「僕はね」


軽く笑う。


「利益にならないことには賛成しないよ」


フェリクスは何も言わず、ただ観察していた。


エヴァルトも口を挟まない。


ただ、静かに考えている。


そのとき――


レオンハルトが口を開いた。


「……どちらも、一理ある」


全員の視線が集まる。


王太子は、ゆっくりと続けた。


「だが――」


静かに。


はっきりと。


「どちらも、足りない」


誰も言葉を返せなかった。


その意味を。


まだ、誰も何が足りないかを言い表せなかった。



その頃。


エーデル男爵家――執務室。


重厚な机の前に、セリアは立っていた。


向かいには、エーデル男爵ハインリヒ。


「来年の話だがね」


静かな声だった。


「セリアには、魔法学院に入学してもらうことになった」


「……え?」


思わず、声が漏れる。


ハインリヒは続けた。


「光魔法使いとして、最高の教育を受けてもらう」


一拍。


「そして、ロゼッタと共に宰相家へ送り出す」


セリアの胸が、ざわつく。


「……行きたくない、と言ったら」


思わず出た言葉だった。


ハインリヒは、少しだけ困ったように笑った。


「前世、だったかな」


柔らかい声。


「不安なのは分かる」


だが――


その目は、優しかった。


「ロゼッタが守ってくれるはずだ」


静かに言う。


「何かあれば、私に報告しなさい」


ゆっくりと頷く。


「なんとかしてあげる」


そして。


はっきりと告げた。


「――行くんだ」


逃げ道は、なかった。


セリアは、小さく息を吸う。


そして――


「……はい」


答えた。


それは。


従うしかない、答えだった。



(……魔法学院)


胸の奥に、重いものが落ちる。


ゲームの記憶。


避けたかった場所。


それでも――


(ロゼッタお嬢様と一緒……)


わずかな救い。


だが同時に。


(花嫁道具……)


その言葉が、離れない。


自分は何なのか。


誰のために、そこに行くのか。


分からないまま。


運命だけが、決まっていく。



春の空は、穏やかだった。


だが――


その下で。


少年たちは、国の未来を語り。


少女は、自分の未来を決められた。


まだ、誰も知らない。


この選択が、どこへ繋がるのかを。

21時に短編「不慮の寵姫」を上げます。念の為。ゲーム内のアデリーナを書きました。本編の転生者のアデリーナとは別人です。安定のバッドエンドです。


5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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