第七十一話 少年たちはまっすぐだった
21時に短編「不慮の寵姫」を上げます。念の為。ゲーム内のアデリーナを書きました。本編の転生者のアデリーナとは別人です。安定のバッドエンドです。
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春――。
王城の一室。
王太子レオンハルトが主催する、小さなお茶会。
集められたのは、未来の王国を背負う子供たちだった。
誰もが、家を背負い。
誰もが、立場を持っている。
そして――
誰もが、まだ子供だった。
⸻
沈黙を破ったのは、アルベルトだった。
「最高裁判所の時はさ」
軽い口調。
だが、視線は鋭い。
「港湾伯爵達、賛成に回ったよね」
一拍。
「なのに、今回は反対だ」
カイゼルがすぐに応じる。
「……先の港湾工事だけでは満足しないのか?」
アルベルトは肩をすくめた。
「逆だよ」
指を軽く立てる。
「伯爵の次は子爵、男爵って来るだろ?」
視線を巡らせる。
「今は港湾伯爵が、子爵家以下の婚姻を管理してる」
少し笑う。
「それで都市を治めてるのに――権利を取り上げられるんだ」
ディルクが腕を組む。
「……そりゃ反発するな」
カイゼルは苛立ちを隠さない。
「女王派は性急すぎる」
吐き捨てるように言う。
「可決しないだろう」
その言葉に。
レオニードが静かに口を開いた。
「可決するさ」
淡々と。
感情を挟まずに言う。
「法案はな、出すことに意味がある」
一拍。
「時間さえかければ、いずれ通る」
空気が変わる。
カイゼルの目が鋭くなる。
「……ふざけるな」
低い声だった。
「最高裁判所設立で、僕の姉は人質になった」
一歩踏み出す。
「お前を許さない」
レオニードは微動だにしない。
「必要な犠牲だ」
迷いなく言い切る。
「中央集権は、外国勢力から国を守るために不可欠だ」
ディルクが顔をしかめた。
「どっちでもいい」
吐き出すように言う。
「血を流さないでくれ」
レオニードは、わずかに視線を動かした。
「……多少は流れる」
ディルクは強く言い返す。
「流れるのは俺たちだ」
拳を握る。
「最前線に立つのは、俺たちなんだぞ」
カイゼルも言葉を重ねた。
「理想で人を切り捨てるな」
怒りが滲む。
「身内を差し出したんだぞ」
レオニードは、静かに言う。
「それでも、やるしかない」
アルベルトがため息をついた。
「僕はね」
軽く笑う。
「利益にならないことには賛成しないよ」
フェリクスは何も言わず、ただ観察していた。
エヴァルトも口を挟まない。
ただ、静かに考えている。
そのとき――
レオンハルトが口を開いた。
「……どちらも、一理ある」
全員の視線が集まる。
王太子は、ゆっくりと続けた。
「だが――」
静かに。
はっきりと。
「どちらも、足りない」
誰も言葉を返せなかった。
その意味を。
まだ、誰も何が足りないかを言い表せなかった。
⸻
その頃。
エーデル男爵家――執務室。
重厚な机の前に、セリアは立っていた。
向かいには、エーデル男爵ハインリヒ。
「来年の話だがね」
静かな声だった。
「セリアには、魔法学院に入学してもらうことになった」
「……え?」
思わず、声が漏れる。
ハインリヒは続けた。
「光魔法使いとして、最高の教育を受けてもらう」
一拍。
「そして、ロゼッタと共に宰相家へ送り出す」
セリアの胸が、ざわつく。
「……行きたくない、と言ったら」
思わず出た言葉だった。
ハインリヒは、少しだけ困ったように笑った。
「前世、だったかな」
柔らかい声。
「不安なのは分かる」
だが――
その目は、優しかった。
「ロゼッタが守ってくれるはずだ」
静かに言う。
「何かあれば、私に報告しなさい」
ゆっくりと頷く。
「なんとかしてあげる」
そして。
はっきりと告げた。
「――行くんだ」
逃げ道は、なかった。
セリアは、小さく息を吸う。
そして――
「……はい」
答えた。
それは。
従うしかない、答えだった。
⸻
(……魔法学院)
胸の奥に、重いものが落ちる。
ゲームの記憶。
避けたかった場所。
それでも――
(ロゼッタお嬢様と一緒……)
わずかな救い。
だが同時に。
(花嫁道具……)
その言葉が、離れない。
自分は何なのか。
誰のために、そこに行くのか。
分からないまま。
運命だけが、決まっていく。
⸻
春の空は、穏やかだった。
だが――
その下で。
少年たちは、国の未来を語り。
少女は、自分の未来を決められた。
まだ、誰も知らない。
この選択が、どこへ繋がるのかを。
21時に短編「不慮の寵姫」を上げます。念の為。ゲーム内のアデリーナを書きました。本編の転生者のアデリーナとは別人です。安定のバッドエンドです。
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