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乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
折れた忠誠

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第六十二話 お告げの範囲

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




秋のある日。


澄んだ空気と、やわらかな陽射しが王都を包んでいた。


ロゼッタは、従姉妹のいるエーデル伯爵家のお茶会に招かれていた。



エーデル伯爵家の応接室。


大きな窓からは、色づき始めた庭が見える。


落ち着いた色合いの家具に囲まれたソファに、三人が座っていた。


ロゼッタ。

マティアス。

そしてエミリアである。


長男のフリードリヒは魔法学院に通い始めていなかった。


穏やかな時間の中で、ロゼッタはふと口を開いた。


「お二人は――『日本』って分かりますか?」


マティアスは眉をひそめる。


「なんだそれ。新しいボードゲームか?」


エミリアも首を傾げた。


「分からないわ。教えて、ロゼッタ」


ロゼッタは一瞬だけ言葉に詰まり――


そして、微笑んだ。


「……知らないなら、それでいいんです」


軽く手を叩く。


「ボードゲームをしましょう」


空気を変えるように言った。


マティアスはすぐに乗ってくる。


「いいね。今日は負けないぞ」


エミリアも楽しそうに笑った。


「私も本気でいくわよ」


三人の間に、いつもの穏やかな空気が戻る。


だが――


ロゼッタは内心で考えていた。


(マティアス様が知らないのはいいとして……)


ちらりとエミリアを見る。


(同い年のエミリアも知らない……)


胸の奥に、小さな違和感が残る。


(神のお告げの子供達は……全員じゃないのね)


誰にも言わず、心の中だけでそう結論づけた。



その頃。


セリアは使用人控え室に下がっていた。


伯爵家の控え室は広く、数人の侍女たちが忙しく動いている。


その一角で、セリアは軽く頭を下げた。


「お久しぶりです」


侍女の一人がにこりと笑う。


「いらっしゃい。相変わらず礼儀正しい子ね」


別の侍女が思い出したように口を開いた。


「ねえ、あなた。前に話してた、セイント・サーキット教団って覚えてる」


少し声を潜める。


「あそこの教祖が逮捕されたって知ってる?」


別の侍女が驚いた顔をする。


「本当?信者も多いのに、よく捕まえられたわね」


セリアは静かに言った。


「未来視がいなくなったせいでしょう」


その言葉に、侍女の一人が感心したように頷く。


「よく知ってるわね」


少し声を落とす。


「未来視の少年がいなくなってからも、予言は当たっていたのよ 


 天候の予言だけだけどね。それで庶民には人気があったの」


セリアは目を丸くした。


「本当に?」


侍女は肩をすくめる。


「カルメリア海商共和国の未来視から情報を買っていたのよ


 それがバレて――」


声がさらに低くなる。


「未来視は王家の特権だってことで、取り締まりが入ったの」


セリアは小さく頷いた。


「時間はかかりましたけど……


騙される人がいなくなって、よかったですね」


すると、別の侍女が少し苦い顔をした。


「それが、そうでもないのよ」


セリアは首を傾げる。


「え?」


侍女はため息をついた。


「女王派が資金源を渡す代わりにね


 国王派に最高裁判所の法案を飲ませたんですって」


セリアは言葉を繰り返す。


「……取引?」


侍女は頷く。


「そう。政治的な取引


 要は、女王派の都合のいいように動くってことよ」


セリアは少し黙った。


言葉の意味は、分かる。


だが――


実感が伴わない。


(……どういうことだろう)


胸の奥に、もやもやとしたものが残る。


そのとき。


最初の侍女が手を叩いた。


「そんな話より、お嬢様達のお茶を替えましょう」


一気に空気が戻る。


「そうね、時間だわ」


侍女たちはそれぞれの持ち場へと散っていく。


セリアも慌てて立ち上がった。


「はい」


だが――


頭の中には、さっきの言葉が残っていた。


(最高裁判所……


 取引……)


よく分からない。


誰かに聞こうと思ったが――


皆、忙しそうだった。


結局。


その疑問は、胸の中に残ったまま。


セリアは何も分からないまま、仕事へと戻っていった。



秋の陽射しは、静かに屋敷を照らしていた。


知らないことは、まだ多い。


けれど――


世界は確実に、動いていた。

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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