第八章 始まり
本日も読んでいただきありがとうございます。
もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。
冬も深くなっていた。
空は低く、冷たい空気が屋敷を包み込んでいる。
エーデル男爵家では、年末に向けて慌ただしさが増していた。
使用人たちは廊下を行き交い、磨かれた床に足音が小さく響く。
その中で――
爺やが静かに声をかけた。
「セリア、新年に向けて飾り付けをします」
セリアは振り向き、すぐに頷く。
「はい」
爺やは続けた。
「屋根裏から国旗や飾りを出します。手伝ってください」
セリアは素直に答える。
「わかりました」
⸻
屋根裏部屋。
普段は誰も立ち入らない場所だった。
扉を開けると、ひんやりとした空気が流れ出る。
中は薄暗く、わずかな光が小さな窓から差し込んでいるだけだ。
足を踏み入れると、埃がふわりと舞った。
「……すごい埃ですね」
セリアが顔をしかめる。
爺やは苦笑した。
「年に数回は掃除しないといけませんね」
セリアは頷く。
「確かに」
二人は棚に積まれた箱を一つずつ下ろし始めた。
木箱の蓋を開ける。
中には丁寧に畳まれた国旗や、金糸で縁取られた飾りが入っていた。
「これは玄関用ですね」
「ええ、そちらは応接間です」
会話は短く、作業は淡々と進んでいく。
静かな時間だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。




