第四十七話 蛇のブレスレット
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ヴァルグレイ騎士伯爵家の庭。
嫡男の婚約お披露目会は
賑やかな空気に包まれていた。
国王派。
中立派。
女王派。
それぞれの貴族たちが入り混じり、
表向きは穏やかな笑顔で
挨拶を交わしている。
だが――
その笑顔の奥には、
それぞれの思惑が隠れていた。
⸻
庭の端。
ロゼッタは
母マルガレーテのそばにぴったりと立っていた。
こういう大きな社交の場には
まだ慣れていない。
爺やが少し離れた位置に立っている。
邪魔にならない距離で
ロゼッタを見守っていた。
魔力暴走を起こさないよう
注意しているのだ。
セリアも同じだった。
万が一暴走した時の回復役として
ロゼッタの近くに控えている。
そのとき。
一人の令嬢が歩いてきた。
カミラだった。
エーデル男爵家に
ジャガイモの販路で恩のある家の令嬢だ。
中立派だ。
カミラは優雅に頭を下げる。
「ロゼッタ様、ご機嫌よう」
ロゼッタも数歩前に出て、
慌てて頭を下げた。
「カミラ様、ご機嫌よう」
カミラはにこりと笑う。
「もう少し前なら
婚約者を紹介できたのに
残念ですわ」
少し頬を赤くする。
「すごくかっこいいの
私の婚約者」
ロゼッタは少し困った顔をした。
「はあ……」
そのとき。
カミラの視線が
ふと別の方向に動いた。
「あら?」
嬉しそうな声。
「イリス様
イリス様じゃない」
一人の少女が近づいてきた。
ベルフォード伯爵家の令嬢。
イリスだった。
「カミラ様
久しぶりです
会いたかったわ」
二人は親しそうに笑い合う。
カミラはロゼッタを振り返った。
「ロゼッタ様
紹介しますわ」
軽く手を向ける。
「ベルフォード伯爵家の
イリス様よ」
そしてイリスへ。
「こちらは
エーデル男爵家の
ロゼッタ様」
少し声を弾ませる。
「宰相家へ嫁ぐ予定の方です」
ロゼッタは小さく頭を下げた。
イリスも優雅に礼を返す。
⸻
その様子を
セリアはすぐ横で見ていた。
イリスを
淡い水色の髪
緩くウェーブする髪
紫の瞳
そして――
思い出した。
イリスのバッドエンドを。
『漏えいの噂』エンド。
外交の天才と呼ばれた伯爵令嬢。
婚約破棄をきっかけに
スパイの標的となる。
彼女はそれを返り討ちにする。
だが――
「売国の噂」が広がる。
誰も信じてくれない恐怖
孤立無援。
疑念と恐怖。
誰も信じられなくなる。
自室に籠城。
そして――
誇り高いまま
孤独に餓死する。
セリアは思った。
(あれも大概……)
小さく息を吐く。
(悲惨なバッドエンドだった)
思わず
じろじろとイリスを見てしまう。
そのとき。
セリアの視線が
イリスの腕に止まった。
ブレスレット。
蛇の形をした金のブレスレット。
セリアは目を細めた。
(……あれ?)
頭の中で
警報が鳴る。
(ブ◯ガリだ)
蛇のデザイン。
間違いない。
セ◯ペンティ。
セリアは固まった。
(え?
この世界にブル○リあるの?)
すぐに首を振る。
(あるわけない
じゃあ――
誰かがデザインをパクって作った?)
セリアの眉が動く。
(パクリは嫌い)
自分の絵が転載され
一銭にもならなかった記憶が蘇る。
胸の奥が少し痛む。
だが――
すぐに考え直した。
(いや
違う、そこじゃない!)
セリアは周囲を見渡した。
他の令嬢たちの装飾を見る。
宝石。
花。
リボン。
だが――
蛇はない。
一つもない。
(蛇モチーフがない)
つまり。
(この世界の流行じゃない)
セリアの思考が繋がった。
(じゃあ)
視線がイリスに戻る。
(イリスか?
イリスがデザインをパクって作らせた?)
つまり――
セリアの頭の中で
一つの推理が完成した。
(イリスは転生者だ)
庭は賑やかだった。
笑い声。
音楽。
グラスの音。
だがその雑踏の中で
セリアは静かに考えていた。
(どうする)
今回を逃せば
女王派の令嬢であるイリスと
直接話す機会は
二度とないかもしれない。
それに、カミラが転生者だと知ってる。
(なら、いいか)
セリアは小さく息を吸った。
(……今しかない)
そう思った。
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