第六章 始まり
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エーデル男爵家の応接室。
午後の柔らかな光が窓から差し込み、丸いテーブルの上には紅茶と焼き菓子が並んでいた。
ロゼッタは椅子にちょこんと座り、右腕に二つ、左腕に二つ――ごつい金属のバングルをつけている。
その重そうな腕輪を、指でくるくるといじっていた。
ロゼッタ「……」
小さく唇を尖らせる。
向かいに座る父、ハインリヒ・エーデル男爵はその様子を見て、ふっと笑った。
「宰相家での新年の挨拶。立派だったよ」
ロゼッタは視線を落としたまま、ぽつりと言った。
「……可愛くないって」
バングルを少し持ち上げる。
金属がかすかに音を立てた。
母、マルガレーテ夫人が優しく声をかける。
「ロゼッタちゃん」
ロゼッタは少し顔を上げた。
「でも」
少しだけ胸を張る。
「勇者の腕輪だから、カッコいい」
小さな拳を握る。
「カッコいいって言わせてみせる」
ハインリヒは紅茶のカップを置いた。
そして穏やかに言った。
「強くなったね。ロゼッタちゃん」
ロゼッタは少し驚いた顔をする。
次の瞬間。
マルガレーテが立ち上がり、そっとロゼッタを抱きしめた。
「ロゼッタちゃんは、とても素敵よ」
ロゼッタは少し照れたように笑った。
四つのバングルが、かすかに触れ合って小さな音を立てる。
エーデル男爵家のお茶会には、今日も穏やかな時間が流れていた。
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