第四十四話 あのスケッチを燃やせ
本日21時に短編「解けない死の術式」上がります。ティアナに興味がない、ゲームバージョンのエヴァルトをお楽しみください。
5時30分と17時の2回更新しています。
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王城でのお茶会。
まだ新年の空気が残っている。
母親たちも、いつものような派閥争いの緊張はなく、
ゆったりとした雰囲気で談笑していた。
子供たちは早々に庭へ追い出されていた。
庭では、すでに騎士ごっこが始まっている。
王太子レオンハルトが木剣を振り上げた。
「僕の剣を受けてみよ!」
ディルクは大げさに倒れた。
「ぐはー!」
フェリクスが飛び出す。
「お前の仇はうってやる!」
レオニードは慌ててルードヴィヒのそばに駆け寄った。
「ルードヴィヒ殿下、大丈夫ですか!」
ルードヴィヒは嬉しそうに叫ぶ。
「兄上!」
アルベルトは腕を組んで笑った。
「僕は商人だからね。正々堂々とは勝負しない」
庭は子供たちの声で賑やかだった。
その少し離れた場所で。
カイゼルとエヴァルトは、こっそり騎士ごっこから外れていた。
カイゼルが小さく言う。
「エヴァルト」
エヴァルトは振り向いた。
「教団から未来視が消えたらしいな」
エヴァルトは薄く笑った。
「流石に耳が早い」
カイゼルは眉をひそめる。
「どうやったんだ」
エヴァルトは少しだけ空を見上げた。
「……あのスケッチを燃やせ」
カイゼルの目が動く。
エヴァルトは静かに続けた。
「君は何も知らない
それが君のためだし
僕のためでもある」
小さく肩をすくめる。
「僕も知らぬ存ぜぬだよ」
カイゼルはしばらく黙った。
やがて頷いた。
「……わかった
セリアにも口止めしておく」
二人は何事もなかったかのように、再び騎士ごっこに戻った。
カイゼルが木剣を振る。
「とう!」
エヴァルトも木剣を構えた。
「なにくそ!」
⸻
数日後。
いつもの懇親会。
場所はエーデル男爵家の応接室だった。
ロゼッタとカイゼルはソファに座っている。
セリアはその近くで紅茶の準備をしていた。
カイゼルが言う。
「ロゼッタ
新年のお披露目、お疲れ様」
ロゼッタは腕のバングルを触りながら答えた。
「カイゼル様もお疲れ様でした」
カイゼルは少し笑った。
「今日は嬉しい知らせを持ってきた」
ロゼッタは目を輝かせた。
「楽しみ」
カイゼルは声を落とす。
「セイント・サーキット教団から未来視の魔法使いが消えたらしい」
ロゼッタは目を丸くした。
「本当?」
カイゼルは頷く。
「予言が当たらなくなって、信者から不満が出ているそうだ」
少し間を置く。
「それだけじゃない
本来なら政治と距離を取っている国土正教が
今回に限って、国王派と手を組んで教団を潰すと言っている」
ロゼッタは立ち上がった。
「そうしたら――」
声が弾む。
「ティアナ様のバッドエンドは完璧に回避することになる!」
嬉しそうに手を握る。
「やったわ!」
カイゼルは静かに言った。
「エヴァルトが何かしたと思う
だが
俺たちには口止めしてきた」
カイゼルはセリアを見る。
「セリア
フェルディナントの絵は他にあるか?」
セリアはすぐ答えた。
「いいえ
カイゼル様に渡したものだけです」
カイゼルは頷いた。
「それならいい
もしあれば、すべて処分してくれ
俺たちは何も知らない
それが一番いい方法らしい」
ロゼッタは笑った。
「ティアナ様がバッドエンドを回避できたなら
なんでもいいです」
懇親会は、
一つのバッドエンドが消えた安心感に包まれ、
いつになく楽しいものになった。
⸻
後日談。
セリアは
日頃の感謝の念を込めて
今の画材で出来る
精一杯の絵を描いた。
セリアは男爵家の家族の肖像画を描いた。
そして、男爵に渡した。
男爵は目を丸くし、
男爵夫人は何度も頷き、
ロゼッタは嬉しそうに笑った。
三人とも、とても喜んでくれた。
セリアはその様子を見て、小さく微笑んだ。
平穏な時間だった。
爺やもセリアからもらった肖像画を嬉しそうに持っている。
エーデル男爵家に幸せな時間がながれた。
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