第三十六話 掲示板
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冬の王城の庭。
冷たい風が枝を揺らし、空気は澄んでいた。
少し離れた場所では――
ルードヴィヒ、フェリクス、ディルクの三人が、相変わらず騎士ごっこをしている。
「殿下を守れ!」
「やらせるか!」
「えい!」
木の剣がぶつかり、子供たちの声が庭に響いていた。
その喧騒から少し離れた場所。
静かな場所に、二人の少年が立っていた。
カイゼル。
そしてエヴァルト。
カイゼルは静かに口を開いた。
「お前――ライクラを知っているのか」
エヴァルトは答えなかった。
風が枝を揺らす。
しばらく沈黙が続いたあと――
エヴァルトが小さく笑った。
「あんなクソゲーを知っているとは」
そしてカイゼルを見た。
「興味深いな。ゲーマーか?」
カイゼルは少しムッとした。
「元カノの趣味だ」
肩をすくめる。
「会話を合わせるために男キャラの情報を集めた程度だ」
そして聞き返す。
「お前は?」
エヴァルトはさらりと言った。
「クソゲーを集めた掲示板をよく見ていた」
少し肩をすくめる。
「その中の一つがライクラだっただけだ」
カイゼルは頷いた。
「なるほど」
エヴァルトは淡々と続ける。
「乙女ゲームのくせに攻略対象全員に婚約者がいる
寝取り乙女ゲー
設定だけでクソゲー確定だった」
少し笑う。
「読んでいる分には大爆笑だった」
そして視線を庭に向けた。
ルードヴィヒの小さな声が聞こえる。
「やー!」
エヴァルトは静かに言った。
「だが――
実際に転生してみると地獄だな」
カイゼルは頷いた。
「ああ
死亡ルートだらけの世界
だが」
少し皮肉な笑みを浮かべる。
「全然おかしくない世界だ」
エヴァルトは小さく息を吐いた。
「確かに
荒廃した庶民
抗争ばかりの貴族社会
あのゲームの設定
細部までつくりこまれていたんだな。」
二人の視線がぶつかる。
カイゼルは聞いた。
「主人公をなぜ探している」
エヴァルトは少し黙った。
それから聞いた。
「僕のルート
なんて呼ばれているか知ってるか?」
カイゼルは首を振った。
「ゲームはプレイしていない
すまない。わからない」
エヴァルトは言った。
「初心者ルート」
カイゼルは眉を動かした。
エヴァルトは続ける。
「主人公と接触するだけで危険。
すぐ、心中エンドになる」
少し視線を落とした。
「その時
婚約者のティアナはどうなると思う?」
カイゼルは少し考えた。
そして静かに言った。
「主人公は
僕が確保している」
エヴァルトの眉がわずかに動いた。
カイゼルは続ける。
「魔法学園に入学することは絶対にない
安心してほしい」
エヴァルトは静かに言った。
「どうだかな」
そしてカイゼルを見る。
「お前は国王派
邪魔な女王派の僕を消すこともできる
すごいカードだ」
声が少し低くなる。
「その時
ティアナはどうなる」
カイゼルはすぐに答えた。
「ティアナの専用バッドエンドは
僕も胸糞だ」
そして言った。
「僕を信じてほしい」
エヴァルトは何も言わない。
カイゼルは続けた。
「セイント・サーキット教団を潰す」
その瞬間。
エヴァルトはため息をついた。
「バカだな」
カイゼルの眉が動く。
エヴァルトは淡々と言った。
「セイント・サーキット教団は女王派の資金源だ
潰せば派閥争いが激化する」
少し視線を庭に向ける。
フェリクスが叫んでいた。
「殿下を守れ!」
エヴァルトは続ける。
「中立派だって巻き込まれる」
カイゼルは少しだけ黙った。
それでも言った。
「父がうまくやるはずだ」
そして続ける。
「信じてくれ」
エヴァルトはカイゼルを見た。
そして言った。
「転生者と言っても」
「所詮は子供だな」
その言葉のあと。
エヴァルトは黙り込んだ。
もう何も言わない。
庭の向こうでは、子供たちの笑い声が続いていた。
「やられたー!」
ディルクが倒れる。
ルードヴィヒが笑う
それに釣られてフェリクスも笑う。
三人の笑い声が、冬の庭に響いていた。
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