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第三十四話 光魔法の値段

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

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初冬の午後。


庭の木々はすっかり葉を落とし、枝だけが空へ伸びていた。

冷たい風が屋敷の窓をかすかに鳴らす。


エーデル男爵家の応接室では、暖炉の火が静かに揺れていた。


その前で、セリアは手を前に出している。


指先から、細い光が伸びていた。


糸のように細く、淡く輝く光。


光魔法――光の糸。


それを維持し続けている。


二十分。


向かいに座るシスターが、感心したように言った。


「まあ」


身を乗り出す。


「もう光の糸を二十分維持できるようになったのね。すごいわ」


セリアは少し得意そうに答えた。


「日々、復習を欠かしませんでしたから」


シスターは嬉しそうに笑った。


「魔法学院なら、一年生の魔力制御で満点を取れるわ」


セリアの眉がぴくりと動いた。


「魔法学院?」


少し嫌そうな顔になる。


「私、行かなきゃダメですか?」


セリアは内心で思った。


(嘘でしょ


貧乏男爵が使用人の学費出すのか?


いや……


最近、男爵家はそんなに貧乏じゃない


もしかして……


もしかするのか???)


だがシスターはあっさり言った。


「行ける訳ないじゃない」


セリアは心の底から安心した。


(よかったあああああ)


そして真面目な顔で言う。


「私、行きたくないです」


シスターはうんうんと頷いた。


「そうそう。身の程を知るのがいいわ」


そして、少し遠い目をした。


「私は騙されたの」


セリアは首を傾げる。


「騙された?」


シスターは紅茶を一口飲んだ。


それから静かに話し始める。


「光魔法の子供は、孤児院枠で魔法学院に入れるの」


「へえ」


セリアは相槌を打ちつつ、それ知ってる、と思った。


「でもね」


シスターはさらりと言った。


「学費は生徒持ちなの」


セリアは固まった。


「は?」


思わず声が裏返る。


「魔法学院の学費が生徒持ち??」


シスターは頷いた。


「そうよ


 もちろん最初は断ったわ」


そして肩をすくめる。


「でもね、甘い言葉を囁かれるの」


セリアは聞いた。


「甘い言葉?」


シスターは指を一本立てた。


「魔法学院は貴族しかいない」


そして続ける。


「貴族のお手つきになったら、学費なんてすぐ返してくれる」


セリアは真顔になった。


シスターは続ける。


「お手つきが嫌なら、女子生徒の専属侍女になれるようにアピールしたらいいってね」


セリアは腕を組んだ。


「いい話に聞こえますね」


セリアは思った。


(ゲームではいじめられてたけど、普通は違うのか?)


シスターは笑った。


「ええ」


そして続ける。


「でもね」


声が少し低くなる。


「魔法学院では孤児院出身は壮絶ないじめを受けるの」


セリアは黙った。


(やっぱり)


シスターは続ける。


「お手つきどころか、口も聞いてもらえない


そして最後には」


シスターは静かに言った。


「学費が借金になる


教会から抜け出せないのよ」


セリアは小さく息を吐いた。


「光魔法が少ないのって」


少し考えて言う。


「教会に囲い込まれるからなのでは?」


シスターは頷いた。


「そうね」


そして微笑む。


「でも救いはあるわ


二十五歳を過ぎたら、寄付金を積んだ貴族の家の専属侍女になれるの


そこから婚活ね」


セリアは目を丸くした。


「はあ?


そんなひどい!


十八から二十五歳の貴重な時間が!」


シスターは苦笑した。


「言わないで」


そして言った。


「専属侍女はいい話なのよ


伯爵以上の貴族の侍女に決まってるんだから


孤児からしたら大出世」


シスターはのんびり笑った。


セリアは少し考えて聞いた。


「先生は


今、幸せなんですか?」


シスターは迷わず答えた。


「幸せよ」


穏やかな声だった。


「安定した未来


 そして」


セリアを見る。


「優秀な生徒」


セリアは笑った。


暖炉の火がぱちりと鳴る。


ちなみに、このシスターは国土正教の修道女だった。


国土正教は、この国で最も大きな宗教組織である。

王国中に教会と孤児院を持ち、庶民の生活にも深く関わっている。


そして彼女は、その中でも数少ない光魔法の使い手だった。


光魔法は治癒や浄化を司るため、教会が特に重視している魔法でもある。


そのため光魔法を扱える者の多くは、教会に所属していた。


このシスターも、孤児院で才能を見出され、

教会に引き取られて修道女になったのだ。


つまり彼女は、ただの家庭教師ではない。


巨大な宗教組織である国土正教の一員であり、

しかも貴重な光魔法の使い手。


そのため、男爵家の使用人に魔法を教える立場とはいえ、

扱いは自然と丁寧なものになる。


エーデル男爵家でも彼女は――


家庭教師というより、教会から来た客人に近い存在だった。


シスターは手を叩いた。


「さあ、次の練習よ」


セリアの指を指差す。


「光の糸を二本にして二十分」


セリアは目を見開いた。


「ヒエ」


シスターは楽しそうに笑う。


「最終的には五本の指全部から糸を出してもらいますからね」


セリアは顔を引きつらせた。


「鬼だ」


シスターはふっと優しく言った。


「あなたが


 私みたいにならなくて本当に良かった」


少し間を置く。


「エーデル男爵家の使用人になれて、本当に良かったわね」


セリアは静かに頷いた。


「はい」


暖炉の火が静かに揺れていた。


その頃。


カイゼルは王城のお茶会に参加していた。


物語は、再び王城へと向かう。




5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


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