第十五話
続きです。
「どういうこと?海莉ちゃんのおじいちゃんと幼馴染って…というより、早く離れて!顔近い!」
彩奈が困惑しながらも、私の目の前にあった狐火先生の顔を引き剥がす。
「なんじゃなんじゃ、青春の気配を感じるぞ。」
狐火先生が茶化してくるけど、今はそんなこと気にしてられない。
「わゃたしのおじいちゃんとおさにゃにゃじみって…」
「うむぅ、猫語な海莉は可愛いのぉ。この前見た時と変わらないな。」
狐火先生は目を細めて、涎を垂らしそうなねっとりとした言い方でそんなことを言ってくる。
あの、普通に引くんですけど……
「詳しいことは、明日話す。どうせ雅爪にも用があったしな。」
その時に家に来るってことね。っていうか、おじいちゃんと幼馴染ってことは大体にひゃく……
「おい、何か失礼なことを考えておらぬか?あまり深く考えぬ方が良いぞ。」
うっ、バレた。まぁでも、気になっちゃうじゃんかなりさぁ。
半目でこちらをじっと見てくる狐火先生に気まずさを感じて顔を背ける。
「一つ忠告しておこう。今のお主がこの体力テストをすると、とんでもなくふざけた記録になるのでな、保健室にでも行って休んでくると良い。」
そう言って狐火先生は私の頭に手をかざす。
それはなんだかあったかくて…だんだん頭がボーッとして、ちょっとフラッとしちゃって…
「彩奈…だったかのぉ?海莉に熱があるようだから連れて行ってやってくれ。」
何をしたのかわからないけど、狐火先生は白々しく彩奈に私の介抱を頼んだ。
彩奈は狐火先生を少し…いや、キレる二歩寸前ぐらいの顔で睨んでいたが、私の肩を支えてきた。
「さ、海莉ちゃん保健室行こ?」
私は力の抜けそうな足で、彩奈に支えられながら保健室へと向かった。
保健室に入ると、体調不良ということでベッドで休ませてもらった。
彩奈は私を送り届けると、少し心配そうに私を見ながらも、体育館に戻った。
熱を測ると、7度5分ほど。微熱だね。何故こんな急に熱が出たのかは、明らかに狐火先生に何かされたからだろう。
ふと、隣のベッドに誰かがいることに気がつく。
それと同時に、向こうのカーテンが開き、私側のカーテンも開いた。
そこには、所々はねた髪のまま、目元まで垂れた髪の奥で、どこか眠そうな表情をしてこちらを見つめてくる女の子がいた。どこかで見たことあるような…
後ろ髪は雑にゴムでまとめられている。
「あなたは…サボりではないみたいですね。」
いきなり何言ってきてんの?まるで自分はサボりできてるみたいな言い方だし……
「あ、もちろん私はサボりですよ?組むペアがいなかったもので。」
そう言って、彼女は遠い目をする。なるほど、見たことあるのはクラスの人だったからか。
でもなんか、うん気まずい。あまり認知してなかったから……何となく話すのが…ね?
「無視…ですか。やっぱり自分と話す人は誰も……」
「えっ、あぁいやごめん、ちょっと考え事しててごめんね?話はちゃんと聞いてたよ。」
慌てて釈明するとお相手さんは衝撃を受けたような表情をした。
「自分の話聞いててくれたんですね。いつも何か話しても無視されるので……」
それは…なんというか……可哀想。
「なんで無視されてるの?」
「なんでも何も…自分は存在感が薄いので……」
彼女からドヨンとした空気が漂う。えぇと…この場合は何で声をかければ……というより、確か名前は…
「風見…ろくろちゃんだったっけ?これからも話は聞くから…そんなに落ち込まないで?」
「自分の名前!覚えていてくれたんですね!」
……咄嗟に思い出せたなんて言えないね…。
「まぁ、話したことなかっただけだからね、あはは…」
誤魔化して笑うと、ろくろは嬉しそうに笑った。
「それじゃあ、これから自分たち友達ってことですか!?」
髪に隠れて見えにくいが、目が輝いている。
話して数分の相手に友情を感じたわけではないが、悪い子ではなさそうなので、友達になった方がいいかも。
「うんよろしくね、ろくろちゃん。改めて猫山海莉だよ。」
手を取ると、ろくろは何故か震え始めた。そして、私の手の甲にポタポタと透明な液体が垂れる。
「お友達…初めてのお友達だぁ……」
どうやら感激しすぎて泣いてしまったらしい。どれだけの間無視されて孤独だったかが計り知れない。
「あのあの!お友達ができたらやってみたいことがあるんですけど、いいですか!?」
ろくろは拳を握って息も荒くなっている。テンションが上がってる。
「いいけど…ごめんね、今は無理かも。熱あるからさ。それはまた今度ね。」
「そ、そうでしたねごめんなさい。」
途端にシュンと縮こまってしまう。熱のせいか、少し頭痛もしてきたが、せっかくならもう少し話を聞きたい。
「ろくろちゃんってどんな事するのが好きなの?」
海莉ちゃんを保健室に送り届けて、ボクは体育館へと戻ってきていた。
あの狐火とかいう先生…海莉ちゃんに何して……
それにあんなに近づいてたし!もぉ、あんな至近距離で話をできるのはボクの特権なのに〜!
というか、あの人、どこかで見たことあるような、ないような……少し記憶が曖昧になってる。
多分あるかもしれないけど、興味ないから忘れてるんだと思う。
それはそうとぉ、早いことペア見つけて続きを……
「なんじゃ、戻ってきたのか?組む相手がおらぬなら我が組むが?」
「いえ、大丈夫です。」
噂をすれば…!今海莉ちゃんいないんだから、よってくる必要ないじゃん!
「まぁそんな冷たい事言うでない。少し話がしたいだけじゃ。」
話…?別に話すような相手じゃないと思うんだけど。僕は。
そのまま他のところに行こうとすると、狐火先生が一言。
「今なら海莉の秘密を話すぞ。」
「よし乗った。」
ずるいよ、海莉ちゃんを引き合いに出すのは。僕が後ろ髪を引かれないわけがないのに。
狐火先生の目の前に行くと、その不思議な雰囲気にちょっと体がすくむ。
さっき見た時に思った通り、この人は普通じゃない。多分僕や海莉ちゃんと同じ……
「なんじゃ?我の力の大きさを察したのか?」
少しおどけるように目元をニヤけさせてそんなことを言ってくる。
少し腹立つけど、海莉ちゃんの秘密というものの方が気になるので我慢する。
というか……
「海莉ちゃんのおじいちゃんの幼馴染ってことは、相当歳いってるってことでしょ?何でそんな若作りしてるの?」
狐火先生はグフォっと、吐血エフェクトが見そうなほどに、ショックを受けた表情になった。
そして、呼吸が荒くなり、額に青筋もで始めた頃、一度深呼吸した。
「…ふぅ。いきなり刺されるとは思わんだったわ。彩奈よ。今度その話をした時は……」
「でもやっぱ、それは妖家の力が関わってるよね?人に若く見せてるのか、実際に若くなってるのか…どっちも可能性はありそう。」
何となく考えたことはこうだ。狐火先生には何かしらの妖家の力があり、それは人に幻覚を見せることで、自分を若く見せている。
若しくは、自分そのものが若返っていて、それを繰り返すことができる…っていう感じの力を持っているみたいな。
「ふむ、中々に鋭いが、正解であり不正解じゃな。その答えは今度教えよう。」
なに、教えてくれないの?まぁ、別に今は知らなくてもいいんだけど。敵か味方かの判断ができればそれだけで。
狐火先生は一呼吸おき、ボクの目を真っ直ぐ見てきた。
「話というのは…海莉のあの症状について、じゃ。」
気になってたことは教えてくれるみたい。
久しぶりの投稿になりました(定期)まぁでも、登場キャラたちの設定考えるのは楽しいです




