第472話その2
「さて、どこに行かれてましたか?まあ、イザヨイメダルを探す為に他の女の所に行っていたという事ならいいんですけど?」
そんなつもり微塵も無いくせに、トモヨちゃんが詰問してきた。婚約者を決めるのは君なんだから、君の認めない女なんか側に寄るわけないじゃん?
こういう時には、トモヨちゃんが代表で詰めてくる。さすがは、リーダー色の赤の王女。
「えっと、聞いてね?」
というわけで、とりあえず包み隠さず説明した。隠しても、どうせトモヨちゃんには夢で見られちゃうから意味無いからね。
「マツチヨ一族?あれまだ、生き残りいたんだ?」
「そういえば、聞いた事がある名前ですね」
小真穂やグレイスも名前は聞いた事があるみたいだから、そこそこ知名度はあったんだな大魔王の一族。
『指差した相手に死ねって言うだけで殺せるとか、チートじゃんそれ』
『そんな能力を持つ者がいるなんて、魔王族は侮れませんねお姉さま』
「ご主人様は、大丈夫だったんですか?」
「俺はグレイスのおかげで、呪いは効かないからな。ありがとうグレイス、助かったよ」
「い~え。カナタちゃまのお役に立てたのなら、嬉しいです」
「そういう事で、今回は俺は一人で行ったのが正解で……」
今回は、本当にあれがベストだったんだよ。下手に一緒にいて大魔王に目を付けられるくらいならともかく、呪いを掛けられたりしたら助けられないし。
「……まあ、話はわかりました」
おっと、トモヨちゃんの声がちょっと柔らかくなった。これは、理解してくれた?
「本当にその大魔王の能力が即死チートなら、確かにわたし達は足手まといですね。カナタさんもグレイスさんに守られたから難を逃れたわけですし。ありがとうございます、グレイスさん」
足手まといとは言わないけど、死なれると俺が発狂するから正解なんだって。君だって、他の子達が死ぬのは嫌でしょ?
「そういえば、シグレ達もグレイスさんとは愛し合っているけど、『ダイヤ・ラック』の加護はシグレ達には効かないの?」
ふと、シグレちゃんが尋ねていた。確かに、グレイスの『ダイヤ・ラック』の加護は彼女に認められた者に与えられるモノ。実際に全員で愛し合っているこの子達には、『ダイヤ・ラック』の加護があっても不思議じゃないな。
「う~ん、どうでしょう?確証は無いんですけど、私の『ダイヤ・ラック』は認めた者を王にする尻尾だって言われてます。だから、加護も多分カナタちゃま……つまり王になる者だけに掛かるんじゃないかと思います」
グレイスは、シグレちゃんの考えは否定した。確かに『ダイヤ・ラック』は、認めた者を王にする尻尾。『ダイヤ・ラック』の力は、その王にしようとする者に対して与えられるような気がする。
「そこは、恐らくカナタさんだけでしょうね。わたし達の王は、あくまでカナタさん一人なんですから」
トモヨちゃんも、肯定した。のはいいんですけど、その王正座させられてますが?
「不確実なモノを当てにして戦うのは、よろしくないな」
「そうだね、ウサギちゃん。私達は、その力は無いものとして行動するべきだよ。やっぱり、私達の王はカナタきゅん♡だけだし~」
ウサギやミズキの言う通り、グレイスの加護を前提に戦うのは良くない。変に余裕を持つと、足下掬われる可能性あるし。みんなには、危険に近付かない石橋を叩いて渡る生き方をしてもらいたい。
「私達のテンニョモードだとどうなのかな、お姉ちゃん?」
「防御は硬いって言ってたけど、さすがに呪いまでは無理じゃない?」
呪いの耐性の確認とかは、やらなくてもいいよ。
「はぁ」
なんか、トモヨちゃんがため息をついた。
「まあ、今回に関してはカナタさんの行動は間違ってはいないみたいですね」
トモヨちゃんも、ちゃんと理解してくれた。実際、今回の敵は色んな意味でヤバい奴だったんだって。だから、今回はおとがめ無しという事で。
?トモヨちゃんは、どうして上着を脱いでるのさ?
「それはそれとして、勝手な行動はやっぱりペナルティですよね?」
「え、駄目?」
「当然、駄目です。わたし達を置いて行かないと、いつになったら理解していただけるのでしょうね、ホントに」
ああ、またあの笑顔だよ。やっぱり、単独行動は許してくれないのね。
で、トモヨちゃんはどうして脱いでいるのかしら?
「えっと、何をして?」
「悪い事をしたなら、お仕置きをしないといけませんよね?まあ、さすがにお仕置きとまでは言いませんが、罰としてわたし達にご奉仕していただかないと♡」
うわぁ……。起きたばっかりで、もう発情期なの?もちろん、他の子達までいそいそと脱ぎ出す始末。
「ちなみに、今回は罰なのでご奉仕ですが、いい事をすればご褒美としてわたし達を好きにしていい権利を差し上げますね♡」
なんてトモヨちゃんが言ったけど、それ多分ヤる事一緒!ご奉仕かご褒美って、名前が違うだけ!
やっぱり、この子らは底無し沼だよ。
「……」
まあ、大魔王の持ち上げ隊よりかは全然マシか。
その後、あの女から情報を絞り出したギリアムは、ワタルを大将にして大魔王の生息地域に攻め入った。あの女がその後どうなったのかは知らないし興味も無いけど、大魔王の生息地域にいた魔王達は本当に全て滅ぼしたらしい。
まあ、大魔王を止めなかったんだから、仕方ないよね。
リホ母さんが言った通り、俺達はその遠征には呼ばれなかった。真穂もグレイスも当事者じゃないんだから、当たり前か。あと、ロッサやスーにも声が掛からなかったけど、この二人はもう俺らの関係者とみなされているのかも。ロッサとかジャアクに手酷くやられた後だから、戦いたがりそうだけど。
あ、ロッサは女には手を上げなさそうだから今回の任務は不向きか。カスミとは、ガチバトルしてたけどそれはそれ。
大魔王は成敗される運命だから、是非もないよね!
しばらく経った、ある日。
俺達は、まだレコウガイオーに滞在していた。俺達には特に用事も無いんだけど、ここではまだフレンドシップバトルが続いているからな。真穂と、あとロッサとスーは気になるだろうからその結果が出るまではいる事にした。
なんだかんだ言って、次の魔王族の王もギリアムになって欲しいし。
そんな、お昼時。
『うん、食べた食べた。じゃあ、彼方くん。食欲を満たした事だし、性欲も満たそうよ』
昼食終わってすぐ、マホが言った。ホントにこいつは、無限大の性欲持ちかよ。
「飯食っていきなりか?こういう時は、眠くなるモノじゃねえのか?」
『三大欲求は、生きる基本だからね。食欲、性欲、睡眠欲。だから、食べたらヤって、その後寝るんだよ♡』
可愛い顔でウィンクするけど、言ってる事は酷いな。
「本能だけで生きてるのか、お前は?それだと、単なる獣だぞ?」
『わたし達の獣を目覚めさせたのは、彼方くんだよ!』
「わたしは最初から獣ですよ、ご主人様♡」
クーンは、獣生族だからな。て、そうじゃねえ。
そして、やっぱり服を脱ぎ出すみんな。この子らにちゃんと服を着せている意味、あんまり無いな。
と、その時誰かのV4が鳴り出した。今回は、俺じゃないぞ。
「と、わたしだ。お母様?」
鳴っていたのは、小真穂のV4だった。相手は、リホ母さんらしい。それは無視出来ないので、小真穂には出てもらう。みんなにも、ちょっと静かにするようにシィーとした。
「はい、お母様?……わかりました」
しばらく話して、小真穂は電話を切った。
「リホ母さん、何だって?」
「うん。なんか話があるから、わたしと彼方くん。あと、ロッサ兄様とスー兄様に来て欲しいだって」
用件は、リホ母さんからの呼び出しだった。俺と小真穂はともかく、ロッサとスーまでとは珍しい。
「まあ、呼ばれたら仕方ないか。行くか」
さすがに直々の呼び出しはブッチ出来ないので、ロッサとスーも呼んで謁見の間に行く事にした。まあ、直前でおあずけしたから彼女達の不満は高まるだろうけど。戻ったら、絶対爆発するぞー。最近のみんな、ブレーキ踏まなくなったし。
謁見の間は、リホ母さんの魔力が戻ってからは衛兵もいない状態だった。それは、リホ母さんが町の復興を優先させて送り出したからだけど、単純に自分が戦いたいから隙を作ってるだけなんだよなぁ。こないだの大魔王も他に衛兵とかいたら止めていただろうけど、誰もいないから止める奴いなかったし。
だけど、行ってみると今日はレイル兄様もいた。なんか、久し振り。
「さて。いい話と悪い話、両方あるけどどっちから聞く?」
なぜかニヤニヤしながら、リホ母さんが聞いてきた。いきなり、何?
「ん~。彼方くん、どっちから聞く?」
なぜか、小真穂に選択権を委ねられた。いや、このメンツなら話の内容はギリアムに関する事じゃねえの?それを、俺が決めてどうするさ?
「ロッサとスーは?」
「ん?俺らのリーダーはお前だから、お前が決めていいぞカナタ」
「カッちゃんに任せるよー」
なのに、ロッサとスーにまで委ねられた。ロッサって自己主張激しそうなのに、弁える所は弁えるよな。
「はぁ……。じゃあ、悪い話から」
委ねられたのなら、俺が決めよう。で答えると、リホ母さんが驚いた顔をした。
「あら意外。人間って、いい話から聞きたがりそうなモノなのに」
「煩わしい事は、さっさと片付けたいじゃないですか」
後回しにして、いい事何て何も無いよ。小真穂との事を後回しにしてきた結果が、今の遠回りなんだから。
「そうね。じゃあ、まずは。フレンドシップバトルの国内予選が終了したわ」
あ、予選終わったんだ。町の復興の傍ら、予選もやってたんだな。
「え、それじゃあ」
「もちろん、レイルが優勝したわ」
「やっぱり!レイルさん、おめでとうございます」
「レイル兄様、おめでとう~」
「ま、レイル兄なら当然だな」
「さっすが、レイル兄様!」
みんなで祝福すると、レイル兄様は柔らかく微笑んだ。うん、イケメンの微笑みは破壊力高いわ。こんなん、女子は惚れるやろ。
「ありがとう。だが、お前達が全員で頑張ってバトル・ファイオーに勝ったおかげだ。お前達こそ、おめでとうだ」
フレンドシップバトルに勝ったのはレイル兄様個人の力なのに、こっちまで祝福してくれるレイル兄様。ホント、カッコいい。
「でも、これはいい話なのでは?」
悪い話から聞かせて、って言ったはずだけど。
「その先よ。フレンドシップバトルに優勝した後、普通はレイルを称えて三日三晩町を上げての優勝大宴会を行うのよ」
戦いが終われば、大宴会ですか。どこぞの、海賊王になる漫画かな?
「ただ、今回は前哨戦でボロボロにされて復興の真っ最中でしょ?さすがに、こんな中では大宴会している場合じゃなくてさ。だから、今回は大宴会は中止」
「ああ」
本来なら大宴会で大狂乱しようとしたのに、それを中止せざるを得ないから悲報って事ね。前哨戦の後始末だけでも大変なんだから、やってる場合じゃないわな。
「それは、残念でしたね」
レイル兄様の優勝を大々的に祝えないのは、確かに残念だ。
「そんな事よりも、一日でも早くこの町が本来の営みに戻る方が大事だ」
そして、自分より町を優先するレイル兄様。もうヤダ、このイケメンホンマ推せる!
「それが悪い話というなら、いい話というのは?」
宴会出来ないが悪い話なら、いい話はどんな規模の話なんだか。十円拾った、とか?
「フレンドシップバトルのギリアム代表は、レイルに決まったわ。で、そのタイミングで他の家から連絡が入ったのよ。今回は、みんな辞退するって」
ん?他の家が、フレンドシップバトルを辞退?それは、つまり。
「他の家も、クシーズ家やビクタク家みたいに辞退したんですか?」
「ええ。他の二十家、いえ十九家全部ね」
わざわざ言いに来てくれたビクタク家やスール家、クシーズ家にザラブ家だけじゃなくて他の連中も?全滅した、カイドウ家はともかく。
「なんだ、そりゃ?どいつも逃げたのか、だらしない」
「どうして、いきなり?」
「他の家の連中が、前哨戦をスパイしていたのは把握していたわ。そいつらも、カイドウ家が滅んだ事は知っていたでしょうしね。そこで、こっちもスパイを送って噂を流したのよ。もしギリアムに逆らったら、あのカイドウ家を滅ぼした救世主が攻めて来るって」
うわ、俺の噂を各家に流して恐怖心を煽って辞退させたのか!?
「いや、俺は滅ぼしませんけど?」
カイドウ家は、勝手に自滅しただけ!俺を拐った、ウージが悪い!
「他の家も、救世主がギリアムを守って戦ったのは知っているしね。そこを、利用させてもらったわ~」
リホ母さん、めちゃくちゃ悪い顔をしていた。その顔は、正に計画通りに悪事を遂行した悪役顔ですよ。
「リホ母さん……」
「とまあそういうわけで、フレンドシップバトルは我々ギリアムの勝利。しばらくは私が女王を続けるけど、いずれレイルにあとを継がせようと思っているのよ。あなた達も、それでいいかしら?」
今回の話は、跡継ぎの話だった。だから、ロッサとスーも必要だったんだ。
「はい!レイル兄様が、相応しいと思います!」
「レイル兄は、俺より強いからな。当然だと思う」
「レイル兄様になら、任せられます!」
ギリアムの兄妹は、諸手を上げて賛成。もちろん、俺もそれでいいと思う。レイル兄様以上に適任な人には、会ってないし。
「そう。決まりね、レイル」
「は。王に相応しい存在になれるよう、精進したいと思います。ロッサもスカイもメーも、ありがとう。そして、カナタ。我が弟妹をよろしく頼む」
レイル兄様が、頭を下げてきた。俺みたいな人間にも頭を下げられるんだから、本当にレイル兄様は凄い人というか魔王だ。
「はい。一緒に、平和な世界を築きましょう」
平和にする為には、魔王族の力もいる。だから、一緒に戦って下さいレイル兄様。
「うむ」
レイル兄様が手を出してくれて、しっかりと握手した。
「じゃあ、元気でやんなさいよ」
「たまには寄るといい。歓迎するぞ」
フレンドシップバトルも終わったので、俺達はデス・ダーク・ドレッド王国を後にする事にした。
ギリアムの王族に見送られて、俺達はレコウガイオーを離れた。目指すは、覇王城。




