表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

PTA 一 役員選出・班分け

 冬も近づく日曜日の昼下がり、『神子』の『合宿』から帰宅したところで、ちょうど来客だ。確か斉藤さんだったか。五年生の息子さんがいたはず。


「こんにちは。慶一さ……、主人は外出しているようですけど、なにか言付(ことづ)けますか?」


「いえ、保護者ならどちらでもいいんですけど……」


 訊くと、PTA役員決めの話だった。上の学年から順にお願いに回っていたらしい。紙を一瞥すると、広報総務委員と保健体育委員の横には名前が入っている。環境安全副委員長と母親代表(副)の横は空欄だ。




 四月の授業参観後にあった、PTA総会の資料を思い出す。

 校区の各町内の保護者から、理事とそれに被らない委員を選出することになっていた。割り当ての理事――副会長とか書記とか各委員長――は、各町でローテーションになっていたはず。

 委員の任期は一年だが、理事は翌年『副』が取れてもう一年だ。しかも、委員会と理事会の両方に出る必要がある。

 理事の拘束時間は、単年度でも委員の二倍以上。それが二年なので、時間的負担だけでも五倍以上になる。


 おそらく、一人一人にお願いをしても断られるか、少しでも軽い委員で逃げられたに違いない。


 こういうのはまず保護者を公民館なりに集めて、選出割当て人数と各委員会の内容を説明した上で選出するべきだ。

 過去に、リーダーシップがある保護者がこの係にあたったときは、委任状を兼ねた出欠案内と各委員の仕事内容を配布して、最後はくじ引きで決めたらしい。でも、このお母さんは個別にあたっている。

 実際は集めた方が自身の人間関係から離れる分楽なのだが、そこまで(はら)を据えられなかったのだろう。


「主人と相談することになるかとは思いますが、どうしてもなり手がいらっしゃらないのであれば、お引き受けしますよ」


 斉藤さんの表情が明るくなる。でも、役職は二つあるぞ。一つの世帯から同時に二人は避けるだろうから、もう一人は選ばなくてはならない。

 現一年生の保護者にまで回るということは、もう頼む相手がいないということ。結局、保護者を集めることになるから二度手間だし、一度断った相手にもう一度というのも難しい。




 斉藤さんの後ろ姿を見送りながら総会を思い出す。理事も委員もほぼ男性ばかりだった。つまり、PTAに母親がほとんど関わっていない。いや、学級委員は大半が母親だから、棲み分けが出来ているとも言えるか。

 ということは、私は環境安全副委員長ではなく母親代表になる可能性が大だ。




 翌週の金曜日夜、PTA役員選出のため、小学生の保護者が公民館に集まることとなった。案の定、来ているのはほとんど男性だ。あ、女性も二人混じっている。でも一人はシングルマザーだから、彼女にあてるのは酷だろう。


 男性陣はいろいろ話している。「母代があたるぐらいなら、あんたが理事引き受けてきてって言われた」とか「あてられたら実家に帰る」とか……。

 月に何度も無いが、それでも貴重な夜の時間を取られるのは、専業主婦でも嫌なものだ。




 斉藤さんがおずおずと説明を始めた。

 立候補を募るが、案の定、理事の引き受け手はいない。結局くじ引きで決めることに。

 仕方無い、斉藤さんに言っちゃったし、慶一さんの了承も得てる。


「母親代表、引き受け手がいないなら、私がしますよ」


 お父さんが『母親代表』を当ててしまったら、下手をすると家庭不和の原因になるだろう。ここは、専業主婦――会社の手伝いはしてるけど――で暇がある私が受けるのが順当だ。


 二人の女性と大半の男性が、小さく安堵の溜息をついた。

 と、一人が「なら、私が交通安全委員を引き受けてもいいっすよ。母ちゃんから『母代あたるぐらいなら、あんたが理事になって』って出がけに言われてて、やる覚悟でしたし」と、立ち上がった。

 おっさん、委員の名前、間違ってますよ。それに、そこはかとなく下心を感じますよ。隣のお父さんも「出遅れた」って顔してるし。

 中学生時代の委員決めを思い出す。


 結局、理事決めはクジを使うことなく終わった。




 年も改まった二月、引き継ぎを兼ねた最初の理事会が行われた。

 やはり男性が多い。でもこれが都市部になると、女性比率が上がるらしい。不思議だ。


 引き継ぎでは、母親代表には理事会や行事に出る以外に執行部での仕事はほとんど無いこと、市の母親委員会なるものに出ることなどが聞かされた。

 うーん、これも女性を動員するための役職のようだ。性別を決めた役職なんて、おかしいんじゃないか? 母親委員会でこれを言ったら、どういう反応になるんだろう。


 母親委員会では、四・五人の班分けがあり、それぞれでテーマを決めて活動、発表をするとのこと。

 活動が大変かどうかは、ほぼ班のメンバーで決まるらしい。


 年間事業計画も前例踏襲で淡々と進む。新たに企画するぐらいなら、例年通りにこなして任期を終える方が楽だ。やりたくて能動的に理事を選んだ人より、じゃんけんかくじ引きでなった人の方が多いなら当然だ。




 年度が改まり、初めての母親委員会に出た。こっちの方がPTAや婦人会より大変かも知れない。

 初回は、自己紹介と班分け、あとは班の活動や今後の大凡の予定を決めることになっている。

 自己紹介をしたが、私の外見に周囲りがザワつく。主に三・四十代の女性の中、私の外見は、(からだ)つきはともかく顔は十代だ。校区でこそ私の外見は知られているものの、市全域で知られているはずがない。


 仮の議長が、レジュメで今日の予定を確認する。あとは班分けと班長選出だ。さっさと決めてお開きにしよう。




 ……と思っていたのに、班分けの方法に揉める。


 テーマを決めて、希望者がそこに集まるという案。

 ――私たちは、少なくとも私は、そんな意識高い系じゃないし。


 リーダーを決めて、集まるという案。

 ――リーダーなんか決められないし、そもそも知り合いいないし。


 世代を分散させるためにも、世代順に分ける。

 ――悪くないけど、年齢の話は……、いいの?


 あいうえお順で、あるいはクジ引きで。

 ――もうそれでいいんじゃないかな。


 結局、クジ引きになった。班分けの方法を決めるだけに、なんでこんなに時間をかけるんだろ。早く帰りたいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ