22、リリカに聞いてみよう(2)
「……」
リリカは一通り話した後、「はぁ」とため息をついた。
「――そういうことだったのか……」
玄関前で待っていてもらっていたはずのカルト君が、しみじみと頷く。
……いつのまに部屋に入ってきたのと突っ込みたかったけれども、私は空気を読んで我慢した。
「そういうことだったのです……」
「そっか……」
そう言って見つめ合うふたり。
……な、なんだか二人とも、ちょっと良い雰囲気になってない?
私は内心焦るものの、さっきの話を聞いた直後だけに、どうにも口出しがしづらい。
だけど、けど、む、む、む……。
「――ところでさ」
カルト君はにこりと笑って話題を変える。
それは笑顔なんだけれどどこか壁を感じる表情で、所謂営業スマイル的というか、彼は意識的に真面目な狩人モードに気持ちを切り替えたのだろうと見受けられた。
……確かに私も、今はヤキモチなんて妬いてる場合じゃなかったと彼に習って気持ちを切り替える。
さっきの私の俗な質問とは違って、これからカルト君はリリカに重要な話をするつもりなのだ。
「……っカルト……様……?」
リリカもそれに気づいたのか、普通に悲しそうな顔をしていて、なんだか私まで胸が締め付けられるくらい。
「もしかしてリリカさん以外にも昔から意識を持っている人はいたのかな? 」
「私以外にも……? 」
カルト君の質問は遠回しで慎重だった。
それはそうよね。もし絵から出てきている人は君以外にいるか?なーんてストレートに聞いたら勘のいいリリカじゃなくたって自分の他に絵から浮き上がっている何者かがいると気づかれてしまうだろうから。慎重すぎるに越したことはないわ。
――もっともそれはリリカが何も知らないと仮定しての話だけれど……。
……実際どうなのかしら。私は黙って様子を伺うことにする。
「――さあ? わかりませんわ。何しろたとえ意識があっても、会話ができないわけですから……。
せっかくカルト様が聞いてくださっていたのに、申し訳ないのですけれど……」
リリカは叱られた子供のようにしょんぼりとして答えた。
……うん。リリカは間違いなく嘘は言っていない風だった。だってリリカが彼を目の前にして嘘をつくとは思えないから。
カルト君は「そっか」と苦笑気味に答える。
……ともあれこの答えでリリカは、少なくともこの件について全く何も知らないのだと確定したわけね。何となく私は胸を撫で下ろす。
「……うーん」
リリカの答えを聞いて、カルト君はすっかり考えこんでしまった。
カルト君は、何も知らないリリカにどこまでの事実を伝えるかを迷っているみたいだった。
優しいカルト君がどういう風に悩んでいるか、私には手にとるようにわかる。
それはもうリリカは魔法も凄いし強いから、話せばきっと動きは取りやすくなるだろう。
だけどリリカだって女の子だ。自分も命を狙われているかもしれないとなったら怖いに決まっている。
……あ・の・事実はリリカにとっては私以上にショックだろうし。それにリリカの場合は自分以外の絵がカルト君を困らせていると知ってしまったら責任を感じて、その高い魔力で何か悪いことをしかねないかもしれない。
「…………? 」
リリカは急に考え込んだカルト君をみて、完全に訳がわからないといった風に目をぱちくりさせている。うーん、それはそうよねぇ……。
このままだといつまでも沈黙が続いてしまいそうだった。
……どうしよう。これ以上は割と勘の良いリリカが何か気付いてしまうかもしれない。
それになによりパパのお風呂掃除が終わってしまう。
考える。今私がするべき、ベストな行動は……? それは――
…………。
「――リリカ! 」
「な、なんです? 突然」
「トリィちゃん……? 」
……それがベストかはいまいちわからなかったが、私は話を反らすのもかねて、ある提案をすることにした。
「うん、リリカ。明日から――貴方も学校に通わない? 」




