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ドラテン  作者: 夏目彩生
20/21

20ひとまず学校へ


 ――そしてそのまま腰を抜かし、カルト君に抱き抱えられるように支えられていた。


「――大丈夫? 」

「……ご、ごめんなさい」


 カルト君はそっと私を床に座らせてくれた。


「い、いや、僕の方こそごめん。なるべくこういうのはキッパリと話した方が良いのかなって思っての事だったんだけど……、その、あまりにも怖がらせ過ぎたみたいだっ……」


 しどろもどろでカルト君はまくし立てる。全てを話し終わってカルト君は肩の荷が降りたのか、それとも私が腰を抜かしたことにあまりにも驚いたのか、いつもの彼に戻ってくれていた。私は少しだけホッとする。


「うぅん、私の方こそ、責めるようなことを言ってごめんなさい。

 ああいう風に言ってくれなかったら、多分私カルト君の話しを信じないでまた夜中に外にでちゃってたかもしれないし。

 それに……()が私達を狙っている以上、いずれカルト君が私の目の前で、そういうことをせざるを得ない状況になってただろうから……。きっとこの形が結果的に一番ショックが少なかった。カルト君もそう思ってくれていたんでしょう?

 わかるの……カルト君がどんなに私に気を使って、考えてくれていたか」

「──っ」

 ……。どうやらカルト君は照れているみたいで、おもいっきり目を反らしている。

 ……良かった。どうやら本当にいつものカルト君に戻ったみたいで。


「……。そ、そっか、それなら良かった。

 こんな風にもしかしたらまた君を怖がらせてしまうかもしれないけど……どうか信じて欲しい。

 僕は……絶対に君を守ると──誓うよ」


 言いながら、カルト君はようやく視線を私に戻し、手を掴んでグッと引き上げて立ち上がらせようとしてくれ――

 どて。


 ……私は思いっきり、()ける。

 

「――え!? 嘘! ごめっ……」

「……もうちょっと経たないと立てそうにないです……」


 私は地べたでヒクヒクしながら答えた。

 うぅ、どんくさい……。もう、どうして私はこんなに気が小さいのかなぁ……?



 その後暫く休んでいて、そろそろ学校に行く時間になった。カルト君は今日は休むかと聞いてくれたが、流石にもう立てるしそんな訳にもいかないと言い、私達は学校に足を運んだ。



 ────。


「……カルト君」

「ん? 」


 学校への道中、ふと私はある疑問が浮かび、カルト君に尋ねてみる。


「三日前に私達を撃った犯人も、あれはリリカが出てくるより先にいたわけだけども、その人も私の絵だってこと? 」


 そう、三日前私達を撃った犯人。……もしその犯人も私の魔法で出来たモノだったとしたら、拳銃まで使うのだからかなり笑えない。それに村の人達にまで危害を加えてしまったらと考えると、恐ろしい。

 ……恐ろしいけど私だって製造責任というものがあると思うので、何もしないわけにはいかないと思う。

 逆にもし犯人が密猟者なのだとしたら、なんとか私の正体を誤魔化しつつ、警官などに相談するのが一番なんじゃないかなぁ、と考えたんだけど……。


「……」


 カルト君は答えない。いくら彼でもまだ見当がついていなかったのかもしれない。


「……カルト君? 」

「――ちょっと考えたんだけど、さっきトリィちゃんには言うべき事は全て話したし、あとは僕に任しておいて欲しいんだ」

「えっ? 」

「それに、わざわざ呼んでおいてなんだけど……、僕は別にトリィちゃんに何かして欲しい訳じゃないんだよ。君は何も心配しないで、とにかく今は外出だけ控えてくれたら良いから」

「――! 」


 そう言ってまたカルト君は朝のように頑なな態度をする。……鈍感な私でも、それで気がついたけども――

 カルト君は私に魔法の制御が出来ないことがわかった以上、たった一人で全てを、それも内密に解決するつもりなんだ……!


 ……それは多分、モンスターとのハーフである私の立場を気にしてのことだろう。


「……」


 好きな人が自分のために、ここまでしようとしてくれている。……一人の女として、それが嬉しくないはずなんてない。


 だけど、それ以上に──


「……」


 ……私は彼に話さなければならないことが、ある。……それは、話すにはとても覚悟がいることだけども。


「……カルト君っ――」

 

 私が意を決して声をあげると――


「よ。二人ともっ! どしたん、今日は一段と顔が沈んでんじゃーん? 」

「――――!! 」


 ――底抜けに明るい声が後ろから聞こえてきて、思わずそちらに意識をむけてしまう。


「と、トト……」


 声の主は親友のトト。今日もまた寝坊したのか、ルームウェアのままだ。……相変わらず大物なんだから、トトは。 


「あぁ、こんにちは……」

「おはよ! カルト君……だっけ? 転入そうそうトリィと一緒に登校するなんて、やるじゃん! 」


 言ってウィンクし、カルト君を指さすトト。……カルト君は明らかに戸惑っている。


「カルト君びっくりしてるから、トト……」

「ふーん」


 言うだけ言ってどうでもよさそうな返事をするトト。

 ……トトがああなのはまぁいつもの事として、そういえばこの二人は会話もほとんどしてなかったはず……。

 私はあらためて二人を紹介しあうことにした。


「カルト君、この子はトト・オルポートって言うの。私の小学生の時からの親友よ」

「どうも」

「うん。よろしくね」


 握手する二人。


「――で、こちらはカルト・ベルノルト君。トト、彼は私の幼なじみよ」

「おぉっ!? 」


 トトはちょっと驚いた様子を見せる。


「って事はあれか、あの話しは本当だったんだねー」

「だったの」


 ……何故だかトトのセリフが棒読みっぽく聞こえたが、私は気にせずにこやかに答える。

 カルト君もちょっと居心地は悪そうだけど嬉しそうにしてくれている。いつものはにかみ顔だった。


 そんな私達をトトはじぃっと見つめる。


「――けどだからって、一緒に登校してこんなにぴったり歩いちゃってさ。

 ……昨日の間に何かあったの? 」


 ……珍しく、本当に珍しく、トトが言いづらそうに聞いた。


「うっ……」

「ははっ……」 


 確かにトトの疑問はもっともかもしれなかったけれど、その、色々な意味で話せない事ばかりで、どうにも困ってしまう。

 ……と言うかそんなにぴったりだった!?

 私とカルト君は、慌ててそっぽを向いてバヒュっと距離をおく。

 トトは「んー」と少し考えた後、


「――学生なんだから清い交際をね。特にトリィはさ……。

 ……ま、あの人奥手そうだから心配いらなそだけど」


 と私に耳打ちしてきた。


「わっわかったってば! 」


 ……とても三日前のことなんてトトには話せないな……。


「…………」


 ……カルト君は耳が良いのか、真っ赤になって黙りこんでいた。

ちょっと書き留めや、これまでの話に書き足し、改変などをしたいので暫く更新ストップします。

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