20 降りたくない人達
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「どうして降りなきゃいけないんだ! ずっとここで暮らせばいいじゃないか!」
「そうだ! 私達は家や財産、仕事や未来まで奪われたんだぞ! 補填するのが当たり前じゃないか!」
「小さい子供もいるんです! 船を降りたらどうやって暮らせばいいの!」
喧喧囂囂誰に向かって言ってるのかと思ったら乗船登録をした機械に向かってだった。
どうしてリストバンドのヘルプから問い合わせないでこんなところで騒いでいるのだろう?
『資格者以外の質問は受け付けません』
機械はその言葉を繰り返している。
「あの人達はいわゆる"手荷物"の人達だな」
塩田がそう言った。
間の悪いときに来ちゃったかと戻ろうとしたときに端の方で疲れたように座り込んでいる御園さんを見つけた。
「ねえ、塩田。御園さんだよ、なんか大丈夫かな」
「ちょっと話を聞いてくるか、スイはまた嫌な思いするかもしんないから慶さん達のところに行ってろ。ムラ着いてきてくれ」
塩田と村崎君が御園さんの所に行くのをみてわたしはお兄ちゃん達のいるカフェテリアに戻った。
「どうした瑞?」
「機械のあるロビーで降りたくないって人達がいたの」
「そういう人達も出ると思った」
「そうだね、ここまるでホテルみたいだもんね」
残り少ない船の滞在でお茶を楽しんでいる女性陣が苦笑いをする。
「本音を言えばわたしだって出ていきたくはないわよ」
ですよね~と女性達は賛同する。
「やっぱり不便だと思うのよ、生活基盤が出来るまでは」
お風呂でしょ、トイレでしょ、あと病気になったりとか。これから結婚できるのかとか、出産とか。リスク高いよね。
「でもさ、最初は大変かもしんないけど自給自足のスローライフだと思えばまぁいいっかなぁ~ なんて思ってもみたりしちゃう訳ですよ」
「不便な事はほとんど魔法で解決出来そうだしね」
「就活に悩まされること無くなったし」
「ダネダネ(笑)」
「条件の良い人達は下船に前向きになれるけどそうじゃない人は大変だし、降りたくない気持ちも解らなくはないかな」
「たださ、船に残りたいって言ってもリストバンドの無い人は保護者がいなけりゃこの船の恩恵は受けられないんでしょ。どうするんだろ」
御園さんどうなっちゃうんだろう。叩かれたしキツイ事言われたし、多分御園さんはわたしの事好きじゃないんだろう。わたしに心配なんかされるのってイヤなんだろうな。




