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14水の魔法3・召喚

「へえ、水魔法か・・・」

 キサラギがカーニャを取り囲んだ水の輪を見て、危機感も無くそうポツリと呟いた。




 カーニャも、もとより危機など感じてはいなかったのだが、・・・それでもやはり・・・、マオの行動はいつも突然なのである。

 (マオ様が私に攻撃するわけないしね)

 などと考えながらも、


 「とっ・・・、攻撃用の魔法じゃないみたいだよね」

 一応、自分に害を与える魔法ものでないとカーニャは再確認し、改めて自分を囲むその水の輪を見回した。



 カーニャを中心に輪を描き流れる水。

 ウエーブのかかった金色の髪がキラキラと輝き、

 そのカーニャの輝きに同調するかのように、回る水も窓から差し込む光をキラキラと反射させる。



「わぁ〜、キレイ〜。(まるで母様のウロコのようにキラキラ〜)」



 ことんっ


 持っていた水差しをカーニャは床に置き、「母様と同じ『水の魔法』♪」 と、まるで母親がすぐそこにいるような感覚に、


 きゃっきゃっきゃっ


 と、カーニャは嬉しそうに声を弾ませた。




 そのカーニャの爛漫にはしゃぐ様子を目にし、

「うん、この『水魔法』は、じっと座っていたこの子へのプレゼント、なのかも知れないな・・・」


 と、キサラギはその優しげな空気感に思わず表情を緩め、ちらりとマオを見た。





―――事実、カーニャもキサラギも、この目の前の水の回遊は『水魔法』だと思い込んでいるのだが、正確に言うとマオの使った魔法は水魔法ではないようだ。


 通常、水や火の魔法といえば、『魔力で水や火をつくる』(もっと精密に語れば、己の魔力を水や炎の属性に酷似させる)といった作業になるのだが、

 

 ・・・どうやら、

 マオは自分の魔力を水にしたわけでは無いらしい。(ちなみに、カーニャが口から ぼーっ と出した火炎もカーニャ自身の魔力を炎にした、『火魔法』に分類される)


 つまり、マオは『水を作った』のではなく、『呼び寄せた』、つまり『召喚』したようだ。



【召喚とは―――、

 聖獣や霊神を呼び出す魔法であり、

『契約』が成されて初めて成立する】


 これが(魔族を含めた)『召喚魔法』の原理である。



 ・・・つまり、


 呼び出す相手との『契約』・・・、「あのさ、僕が呼んだら来てくれる?」+「OKOK!いいよ、いつでも呼んでよ!」が成立して初めて使える魔法であり、一般に(というか絶対に)相手に最低限の知能「会話ぐらいは、できますから私!」が無ければ成り立たない。


 そう、つまり、


 ・・・『水』などの知能の無い自然物質(精霊はまた全くの別物)はその範疇におさまらない、はず・・・、なのだが・・・。マオはそのまごうことなき、ふつ〜うの水を召喚魔法という方法で、呼び出したようだ・・・。


 実際、カーニャやキサラギの指す『水魔法』とは、根本的に違う原理であり、その魔術原理から見れば、かなり重大な事象・・・、



 なのだが、


 ・・・マオは説明するつもりなど、さらさら無いようだ。




 それよりも、カーニャの喜ぶ姿をその漆黒の瞳に映し出す以外に興味は無いらしい。

 「さて、」

 と言わんばかりに目を細めだし、更なるのカーニャの表情を見逃すまいと、さらに凝視した。 ・・・なにやらその重大な事象による結果のふつ〜の水に何か仕掛けをしているようだ。





 ぴちょんっ。


(・・・・・・?)


 水の輪から跳ね出しては流れに戻る『何か』がカーニャの右頬に当たり、

(水がはねたのかな?)

 と、そのあたった頬に手を添えるが、やはり何もない。



 ぴちょんっ。

 ぴちょんっ。


 それから数度となく、カーニャの頬にその『何か』があたる。水がはねてあたるというよりも、そのくるくる回る水の輪から『何か』形


のある物が、跳ね出していることにカーニャは気付いた。


「?何だろう・・・?」

 目を凝らしてじーっと見ると、それはどうやら『魚の形』をしているようだ。

 ―――カーニャの小指の爪ほどの小さい小さい魚の群れ。



「わ〜。可愛い〜」

 手を差し伸べて、それをすくう。


 ぴちぴち。


「へー。透明な水の魚か・・・」

 キサラギは何て細かい水魔法だろうか、とカチャリとメガネを鳴らした。



 ぴちぴち、ぴぴぴちち。

 

 カーニャの手上でその小さな魚の群れは跳ね慌て、・・・そしてカーニャの手の温度で溶ける雪のように、形を失い―――、水に戻る。


「!!わぁー、面白い」


 マオの作り出したその魚の群れは、上手にカーニャの興味を引いたようだ。

 5、6度同じ動作をカーニャは無邪気に繰り返す。

 マオは、きゃっきゃっとはしゃぐカーニャの姿を見つめ、満足気に口元だけで微笑んだ。


 その水と戯れるカーニャの何と愛らしいことだろう。

 カーニャが水で遊んでいるのか、はたまた、水がカーニャを遊ばせているのか・・・。

 それでも、キラキラと光を反射するそのカーニャの金色の髪と水の群れの輝きが、とても幻想的な空間を作っていた。 


「まるで、『水の精霊』みたいだ(・・・精霊に形があるなら、こんな感じだろうな。水と戯れ遊ぶ、幼い水の精霊、か・・・)」

 キサラギはその幻想的な風景にしばし心奪われているようだ。




「ふむ」


 マオは何かを確認するように、ちらりと窓の先を見て、すぐさま、視線をカーニャに戻した。


「さて、そろそろ仕舞にするか・・・。魔女の訪れるにふさわしい時間帯になる頃だ・・・」

 そうマオが呟くと、くるくるとカーニャの周りで流れていた水たちがせわしなく騒ぎ始めた。

 ぴちょんぴちょんとせかすように跳ねる回数が多くなる。

 どうやら、この足元の水差しに納まる水なのだと、カーニャは理解し、慌てて空の水差しを掲げた。

 ―――掲げたというよりも、頭の上に乗せたといった方が正しいかもしれない。



 その入り口向けて、水の輪から飛び出す魚の群れ。飛び出し飛び出し、飛び出しきったところで、カーニャを囲って流れていた水の輪が消えた。



 ちゃぷん。



 水差しがいっぱいになったのだ。



●水魔法や火、雷、光魔法などは「元素魔法」と呼ばれる魔法に分類され、普通、魔法といえばこの元素魔法の事になります。

前回、魔法を使う方法(発動方法)を出したので、2話続けて魔法の説明もね・・・

ということで、魔法の種類はそのうち、物語に出てくる予定です。


●ちなみに、水魔法で出した水は魔力が消えると無くなりますが、

マオの水は普通の水なので、魔力関係なく使わない限り有り続けます



●もひとつちなみに、魔法の種類は

・元素魔法(火水光闇土風)

・精霊魔法

・召喚魔法

・物質再変換/生成魔法(錬金術/キメラ)

・古代魔法(時魔法や失われた旧世界の魔法)

です(予定)。

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狐の森
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「魔王が勇者育てました(仮)」経営ゲーム作成中です

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