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10魔女の時間・キメラ

すみません、本当はカーニャも出てくる予定でしたが、次回と分割します。

「ギャッ−−ギ、ギャギャ」

 薄暗い部屋にこだまする奇怪な声。


 長い廊下のような奥行きの有る造りの部屋。

 石の無機質な冷たさを感じるぬくもりの消えたような部屋だ。



 全体が薄暗くその部屋の詳細を確認することはできそうに無い。

 

 それでも、ちらちらと、部屋にともるわずかな明かりに助けられ、かろうじて、柱のような物体は確認することができる。

 長い廊下のような部屋の、その両壁にそびえ立つ無数の『柱』…。



 コツコツコツ…


 その部屋を真っ直ぐと奥に向かい誰かが歩いているようだ。

 …おそらく男性…。部屋の薄明かりの中、かろうじてそのシルエットは確認できる。

 

 その歩みは…、訓練された騎士…、を思わせる。



 その向かう先、長い長い部屋の奥には…、女性が立っているようだ。





 コツコツコツ…



「ギャッ−−ギ、ギャギャ」

 男が歩みを深めるたびに、


「ギャッ−−ギ、ギャギャ」

 『柱』が奇怪な声を上げる。 




 …ここは尋常じんじょうでない空間のようだ。



 『柱』のうめきは壁に反射し一層けたたましく響く。

 ほのの騎士の侵入を警戒して、ではなく、…それはまるで、君主の帰りに歓喜するような叫びに聞こえる。




「うふふふ…」


 女は、しゃなり と長い服のすそを鳴らし、騎士のいる方向にゆっりと向き直った。

 両壁にともる光が永遠と続き、無限回廊を思わせる。

 この永遠に長く続くような部屋で、ほのの騎士が歩み寄る姿を女の目が捉えた。



「ああ、可愛いわたくしの子供たち。わたくしの騎士が来たことを告げていたのね。…なんて愛らしい…」






 ちらちらと灯火ともしびが揺らめく。



 しかし、そのともる光は、壁に付けられたランプではなく、『柱』自体の発光だった。

 その不確かな光を頼りに確認さえ出来れば、『ソレ』が単なる柱でない事に気付く事ができる。


 …どうやら、ソレは何かを『閉じ込めるため』に設置された魔方陣らしい。

 石床から天井までを繋ぐ、円柱の魔方陣だ。




「ギャ、グエグエ」

 異形の生物が声を上げる。訳も分からぬ姿に混ざり合った、通常でない生命体。



 ―――ここは『キメラ(混合生物)』の研究所…、のようだ。


 奇妙な角度に飛び出した手足を有する、子犬ほどの何か。

 腹から尾を出し、背には潰れたかけた目のような気管…を有する、頭部のない巨生物。

 …中には、単なる肉片となって脈打つ気配のない物体、までもある。

 


 左右の壁全ての『柱』が、同様のおりならば、その数はゆうに百を越す。 

 部屋こそ薄暗いが、魔方陣にさえ近づけば、全てのキメラは容易に観察する事は出来るだろう。


 

 ただ…、

 覗き込もうとする、勇気さえ…あれば、の話だが。



 



 コツコツコツ




 騎士は、その不様なキメラに目を向けることも無く、部屋の奥へ奥へ踏み入り、女にたどり着いた。

 女は魔女の笑みをたたえ、騎士を迎える。騎士は、かしずく様に一礼し、そしてぼそぼそと、耳元で何かを告げた。



「そう…。魔王が、都の城に滞在を…


 うふふ、この日を待っていたわ。待ち焦がれたわ…。うふふふ、参りましょう…」




 女の魅惑的な黄金の瞳が揺らめき、


 狂気じみた笑みを浮べた―――。





ちなみに、時間的には、マオが火事を吸い込み終わった時あたりです。

今後、この騎士と女は主要人物になりますが、さて、敵か味方か!?

感を残して次回へ続く…


ほの

この文字が好きで、実際は、「ぼんやりと見える騎士っぽい人影」と書くべきところを

ほのの騎士」と表現。好きな言葉を使えたので、個人的には満足です。ありがとうございます

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狐の森
作者のゲーム作成サイト
「魔王が勇者育てました(仮)」経営ゲーム作成中です

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