第31話:嘘でしょう…
「お嬢様、どこに出掛けられるのですか?」
「どこって、レアの家よ。私は昨日、役目を果たしたのよ。もう私がお妃候補に選ばれる事もないだろうし、別にレアの家に行っても問題ないでしょう?」
「いけません。まだ正式に王家から連絡が来ていないのです。今日中には旦那様の方にご連絡入るでしょうから、どうかお屋敷で大人しくしていてください!」
「どうしてよ!私はもう昨日、王宮に出向くという面倒な役目を終えたのよ。それなのに、どうしてレアの家に行ってはいけないのよ!」
「それが決まりなのです。とにかく大人しくしていてください」
何が決まりよ。決まり決まりって、うるさいわね。まあいいわ、今日我慢すれば、レアの家に行けるのよね。早く美味しいお菓子やスイーツを食べたいわ。
それにレアと対決をしないといけないし。そうよ、こうしてはいられないわ。せっかくだから、武術の練習をしないと。
「お嬢様、どこに出掛けられるのですか?」
「どこって、見ればわかるでしょう?稽古場に行くのよ」
「そうでしたか。申し訳ございません。お嬢様はサフィーロン公爵家に行かれるときも、同じ格好をしていらっしゃるので。稽古でしたら問題ありません。では、参りましょう」
マリアンったら、今日はやけに口うるさいわね。もしかして公爵家ではあまり私に意見できないから、ここぞとばかりに口うるさく言っているのかしら?
あぁ…
早く公爵家に行きたいわ。
そんな思いで、今日も稽古に励んだ。
「お…お嬢様…つよすぎます…」
相変わらず我が家の騎士たちは、弱いわね。相手にならなさすぎて、嫌になるわ。
ただ…
なぜだろう、騎士たちを相手にしただけなのに、息切れを起こしてしまった。それに頭がくらくらするし。私ったら、いつからこんなに軟弱になってしまったのかしら?
とにかく少し休もう。
湯あみを済ませ、ベッドに横になった。
「お嬢様!昼間からベッドに横になってゴロゴロするだなんて…て、お嬢様?大丈夫ですか?顔色があまり良くない様ですが」
あら?珍しい、マリアンが心配してくれるだなんて。ただ、物凄く疲れた。
「ちょっと疲れてしまったみたいなの。少し休むわ」
少し休めば、きっと体調も良くなるだろう。そう思い、ゆっくりと瞼を閉じたのだった。
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「レイリス、起きろ。レイリス!」
うるさいわね、誰よ、私の睡眠を邪魔する不届き者は!
パチリと目を覚まし、声の方をギロリと睨む。
「お父様、私の眠りを妨害するとはどういう了見ですか!そもそもレディの部屋に勝手に入るだなんて。さすがに無礼ですよ」
「何が無礼だ。お前がいくら呼んでも来ないからだろう。それよりも大変な事になったぞ」
「大変な事ですって?私の眠りを妨げられる事よりも大変な事が、今存在するとでも思っていらっしゃるのですか?」
「何を訳の分からん事を言っているのだ!お前の眠りの妨害なんてどうでもいい。それよりも、レイリスが王太子殿下のお妃候補に選ばれてしまったんだ。なんて事だ…これで我が家もお終いだ…」
お父様がその場で頭を抱えて座り込んでしまった。この人、何を言っているの?私が王太子のお妃候補ですって?
「お父様、寝言は寝てから言ってください。しがない伯爵令嬢の私が、選ばれる訳がないでしょう。それに私は昨日、殿下とは話もしておりません」
本当にお父様ったら、ついにボケたのかしら?まだ頭がボーっとするし、もうひと眠りしよう。そう思い、再び瞼を閉じた。
「嘘じゃない。とにかく今から王宮に来て欲しいとの事だ。レイリス、どうか我が家の為に、王宮に行ってくれ。頼む」
「嫌です。私は王宮になんて行きませんし、王太子の婚約者候補にもなりませんから!」
プイっとあちらの方向を向いた。
その時だった。
「失礼いたします。レイリス・モーレンス伯爵令嬢をお迎えに参りました。王宮に参りましょう」
急に男たちが入って来たのだ。
「あなた達、何なの?レディの部屋に勝手に入るだなんて!とにかく出て行ってちょうだい」
この無礼者たちをさっさと追い払おう。そう思ったのだが、なんだかめまいがして思う様に体が動かない。その間に、何やら腕にリングをはめられたのだ。
何なの?このリングは。体に力が入らない。
その場に座り込んだ私を抱きかかえた男たち。
「レイリス嬢、申し訳ございません。あなた様に普通に挑んだら負けてしまうので。それでは参りましょう」
この男、何を言っているの?こんな事が許されると思っているの?
そう叫びたいが、口が動かない。それどころから、体に全く力が入らないのだ。一体どうなっているの?
その上、頭がくらくらしてきた。
混乱する中、私はそのまま意識を飛ばしたのだった。




