第13話:イリにどんどん惹かれていく~アドレア視点~
「お前、顔が赤いぞ。さてはイリ様に惚れたのか?でも諦めろ、ちび助。イリ様はお前が好きになっていい相手ではない。イリ様は本当にお優しくて素敵な女性なんだぞ」
「俺たちだって、好きで悪い事をしていた訳ではない。俺たちの様な人間は、働き口がないのだよ。そんな中、俺たちはイリ様に出会った。彼女は俺たちに仕事を与えてくれのだよ。“あなた達、力が有り余っている様だから、しっかり働くべきよ”そうって仕事を与えて下さった」
「仕事だけではないぞ。住む家も与えて下さったのだよ。どうやらイリ様は、どこかの貴族の様なんだ。俺たちはイリ様のお陰で今、まともな仕事をしている。まあ、見た目は変わらないがな」
ガハガハと笑う男たち。
「お前たちも明日には、イリ様が仕事を与えて下さるだろう。人さらいだなんてバカな事は辞めて、しっかり働く事だな」
さっきイリにボコボコにされた男たちに向かって話しかけている、イリの手下たち。
魔力を持っているとはいえ、こんな男たちを手名付け、彼らの為に仕事と住まいを与えてあげるだなんて…なんて優しい子なのだろう。
ふとイリの笑顔が脳裏に浮かんだ。一気に鼓動が早くなるのを感じる。
この日から僕は、毎日ボロボロの服を着て、王都の裏路地へと通った。
「イリ、おはよう。今日はどこの荒くれ者たちを手下にするつもりだい?」
「レア、今日も飽きずに来たのね。今日はね、東の外れに行こうと思っているの。でも、今日の相手は手ごわいみたいだから、レアは帰った方がいいのではなくって?」
ニヤリと笑ったイリ。
「またそんな事を言って。僕だって、少しは戦力に…」
ならないか。それでも同じ魔力持ちのイリに出会った事で、少しずつだが魔力の使い方が分かって来た。イリが無意識にお手本を見せてくれるから。
イリはいつも自信満々で、それでいていつも笑顔でいる。イリを見ていると、僕もつい笑顔になるのだ。
「それじゃあちょっと行ってくるから、レアはここでいい子に待っていてね」
僕の頭を撫でるイリ。
「すぐに子ども扱いするのだから。僕とイリは同じ歳だろう」
プイっとあちらの方を向いた。そんな僕にイリは
「ごめんね、それじゃあ、行ってくるわ」
クスクスと笑いながら、あっと言う間に男たちを手名付けてしまった。イリは本当にすごいな。あんな男たちを、簡単に手名付けてしまうのだから…
それに僕の凍り付いた心も、あっという間に溶かしてしまうのだから…
イリと過ごすようになってから僕は、毎日が楽しくてたまらない。
もっとイリと一緒にいたい、もっとイリに近づきたい。そんな思いから、僕は今まで以上に稽古や勉学に励む様になっていった。
父上からも
「街に出るようになってから、アドレアはいい意味で変わったな。魔力も少しづつだが、使いこなせるようになってきているし」
そう言ってもらえる様になった。
それもこれも、全部イリのお陰だ。イリがいてくれるだけで僕は、なんだかやる気がみなぎる。もしイリがずっと傍にいてくれたら、僕はもう何もいらない。そう思うほど、イリが大好きになっていった。
その気持ちは、日に日に増していく。
イリに少しでも僕の方を見て欲しい。そんな思いで、僕はイリの好きだと言っていたお菓子を準備する事にした。
料理長に作ってもらうのではなく、自分の足で準備したい。そんな思いから、使用人に教えてもらった王都で人気のお菓子を買うべく、朝早くから並んだ。
そしてゲットしたお菓子をもって、いつもの様にイリの元に向かう。
「おはよう、イリ」
「おはよう、レア。今日も元気ね。あら?その匂いは」
僕が持っているお菓子に気が付いたのか、こっちに寄って来たのだ。
「実はね、レアの為にお菓子を持ってきたんだ。喜んでくれるかな?」
「お菓子ですって?嬉しいわ、ありがとう」
目を輝かせて寄って来たイリ。その顔がまた可愛くてたまらない。早速2人並んでお菓子を食べた。あまりにもイリが美味しそうにお菓子を食べるものだから、つい見とれてしまう。
イリは本当に感情豊かで、自分を隠さない。そして嫌な事は嫌と、はっきり言える強さを持っている。
僕もイリみたいに生きられたら…




