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30.何故か現役の騎士団長が登場して斬り込んでくれて、学園のちゃちな剣では支えきれずに折れてしまいました

「もう、イレーネ、何いつまでも気絶しているのよ。許さないんだから!」

 俺の後のアンジェが煩い……

 ずっとこの調子だ……


 暖かいイレーネの顔が俺の首筋にくっついていて、若い女の子にそんな事されたことのない俺はちょっと赤くなっていた。


「まあまあ、アンジェ、いつやられてもおかしいイレーネがラフィー様の背中にいるんだから、これほど安全なところはないわ」

 ヒルデが俺の援護をしてくれた。


「じゃあ、ヒルデが背負いなさいよ」

「はああああ! イレーネなんて重いの背負えるわけないでしょ」

「あなたより軽いでしょ」

「そんなわけないわよ。絶対に私より重いわよ」

 ヒルデはそう主張した

 体重の話は危険だ。男はそういう時は黙っていた方が良い。俺の前任者の経験則がそう告げていた。


「そうかな?」

 なのに、そこにニコが口を滑らせた。


「ニコ、何か言いたいの?」

 ぎろりとヒルデがニコを睨み付けた。

「いや、確かにイレーネは胸はでかいけれど……腰は細いから軽いんじゃないかと」

 よせば良いのに、ニコが更に余計な言い訳した。


「ニコ、あなた、童顔のくせに変なところ見ているのね」

「本当ね。人の胸とか腰とか本当に嫌らしいわ」

 アンジェとヒルデに睨まれた。


「いや、そんなことはないよ。アンジェもヒルデもないようであるし」


 パシーン!

「ギャッ」

 次の瞬間、ニコはアンジェに張り倒されていた。

「なくて悪かったわね」

 鬼の形相のアンジェがいた。


「ギャッ!」

 その倒れたニコの上をヒルデが踏みつけていた。

 ニコは本当に馬鹿だ。

 胸の話はアンジェには禁句なのに!


「ちょっと、ラフィー、何にやけているのよ!」

 アンジェが俺を睨み付けてきた。


 やばい。とばっちりが飛んできた。


「にやけてなんかしていないぞ」

 俺は慌てて首を振る。


「嘘! イレーネの胸押しつけられて喜んでいる!」

「いや、だから、そんなことないって!」

「信じられない!」

「ギャッ!」

 いつの間にかアンジェもニコの上に乗っていて、二人に踏み潰されて、ニコは死にそうになっていた。


 その時だ。

 何かが飛んで来たのを感じた。


「来たぞ! 散れ!」

 俺の叫び声とともに、女2人は離れた。


 声と同時に飛んで来た短刀を俺は剣で弾き飛ばした。


「何奴だ!」

 俺は周りを見た。


「「「イーーーー!」」」

 その時だ。全身黒づくめの男達が物陰から飛び出してきたのだ。


 10名以上いる。


 昔の仮面ライダーの悪役を思い出した俺は悪くないと思う。


「イーーーー」とか「キィーーーー」

 とか叫んでいたと思う。違うのは全員剣を抜いてい所だ。

 確かショッカーは短剣みたいなのを持っていたような気がした。


「貴様が元剣聖か?」

 大きな男は俺を知っているようだ。

 こいつは上級生ではない。

 俺みたいな年寄りは他にいなかったはずだ。


 現役の騎士か?


「俺の名はカール・フェリングだ」

 相手が名乗ってくれた。


「おいおい、現役の近衞騎士団長が出てくるってどうなっているんだ? こんな年寄り相手に出て来て良い相手では無いだろう」

 俺は呆れて声を出した。


「ほおおおお、俺の名前がフランク王国にもとどろいているのか?」

 カールは喜んだ。


「一応頭には入れたんだよ。テストで出るかもしれないからな」

 それまでは高々帝国の騎士団長に名前なんて知る機会はないんだよ!

 そう言うと怒りそうだから黙っていたが、果たして俺はこの体でこいつに勝てるのか?

 近衞騎士団長という事はこいつはおそらく今の帝国の最強騎士だ。


 俺はとても心配になってきた。


「ふんっ、テストで覚えただと! まあ良い。今日でその剣聖の名称は下ろしてもらおうか」

 男は不敵に笑ってくれた。


「おいおい、俺は剣聖と名乗ったことはないぞ」

 そうだ。魔王を倒した後に勝手にバルト達が名付けてくれただけだ。

 その前からそう言われていたこともあるが、俺自身は剣聖などと大それたものではないと前任者も名のっていないはずだ。


 おそらく、前任者ならば勝てたと思うが、俺はまだ発展途上だ。勝てる気はしなかった。


「背中に背負ったままではまずいだろう。下ろしても良いぜ」

 カールはそう申し出てくれた。


 しかし、これはオリエンテーションの競技中だ。

 俺がイレーネを守ると決めたのだ。勝手に下ろすのはまずかろう。


「アンジェ、こいつらは現役の騎士だ。手加減の必要はない。リミッターを外しても良いぞ」

「えっ、良いの?」

 喜々としてアンジェは両腕に嵌めていた腕輪を外した。


「えっ、アンジェ、今まで手加減していたの?」

 驚いてヒルデが聞いていた。

「だってラフィーが死人が出たらまずいって言うから」

 アンジェは俺を見た。


「剣聖、他人を気にするなど余裕だな。しかし、それもこれまでだ」

 無造作に剣を構えるとカールがいきなり斬り込んできた。


 ガキン!

 俺は相手の剣を受けた。大きな衝撃が腕に響く。


 俺はぞっとした。なんて力だ。

 背中に背負って戦うのはまずかったかもしれない……


「ほお、少しはやるのか?」

 カールは嬉しそうに笑うと、飛び退ってくれた。


 俺は剣を構えなおす。


「喰らえ!」

「ギャーーーー!」

「どりゃー!」

「ギャーーーー!」

 アンジェ達が暴れている声がする。あれなら任せておいていいだろう。

 雷撃させたら騎士達に対しては無敵のはずだ。


 俺はこの男に集中だ。


「ふんっ、いくぞ」

 男はそう叫ぶと怒濤の斬り込みをかけてくれた。


 ガキン!


 ガキン!


 ガキン!


 一回一回が凄まじい力で斬り込んでくる。


 俺は受けるのに精一杯になった。


「まだまだ!」

 更にカールが斬り込んでくる。


 その瞬間だ。


 バキ!

 デカイ音が鳴って俺の剣が折れてしまったのだ。

 学園のちゃちな剣ではカールの剣を受けきれなかった。

 しまった。宝剣を持ってくれば良かった。


 やばい!

 俺は蒼白になった。


「もらった!」

 カールは喜々として思いっきり撃ち込んでくれた。


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このお話の前の話


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