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19.男爵令息を剣で吹っ飛ばして真実の愛をささやき合う皇子と聖女に直撃させました

すみません

投稿順番間違えました

 全員のチーム分けが終わって、今日がお開きになったときだ。


「おい、じじい! よくもさっきは俺に喧嘩をふっかけてきたな」

 オスカーがいきなり俺に喧嘩をふっかけてきた。


「何を言っているかよく判らんな。俺の足の前にお前が足を突き出してきたからそのまま踏んでやっただけだろうが!」

 俺は平然と主張した。

 俺の前に足を出す奴が悪いのだ。

「何を言いやがる。お貴族様の俺に喧嘩を売ってただで済むと思っているのか?」

「はああああ?」

 俺はうんざりした。

 喧嘩を売ってきたのはこいつだ。

 本当にこういうどうしようもない奴はどこにでもいる。

 今までお山の大将で花よ蝶よと育てられたから、世間の常識を知らないのだ。


 こういう奴は世間の荒波にもまれて何回もその高いプライドをへし折られて大人になっていくんだ。


 その教育を何故俺がやってやらないといけない?

 そんなのは男爵に金をもらってもやりたくない。


 相手するのも面倒なんだが……

 俺がどうやって躱そうかと考え出したときだ。


「あなた、馬鹿なの? ラフィーに喧嘩売って、ただで済むと思っているの?」

 アンジェが心底馬鹿にしたように言ってくれた。


「何だと、貴様悪役令嬢の分際で口を挟んでくるな」

「そうだ。そうだ」

「ミーナ様には到底適わないくせに!」

 取り巻き含めて俺のアンジェを馬鹿にしてくれた。


「やむを得ん。仕方が無いからガキ共の相手をしてやるよ」

 アンジェを馬鹿にされて切れた俺は仕方なしに立ち上った。


「ふんっ、昔は剣聖だったかなんだか知らんが、所詮は今は年取った老害だ。俺様が成敗してくれるぜ」

 オスカーは口だけは達者だった。



 俺達は皆で訓練場に向かった。


「剣聖様、まさかこんなに早く剣聖様の剣が見られるなんて思ってもいませんでした」

 ヒルデが俺にくっつきそうな位迫ってくれた。

「ちょっと、あなた、近すぎるわよ」

 間にアンジェが強引に入ってくるんだが……

「ヒルデ、剣聖っ呼ぶのはやめてくれ」

 俺がそう頼むと、


「しかし、剣聖様は剣聖様ですし……」

「いや、剣聖なんて呼ばれたのは20年くらい前の事だからな。俺のことはラフィーと呼んでくれ」

 俺がそう話すと、

「ラフィー! どういうこと? ラフィーって呼んで良いのは私だけなのよ!」

 横から何故かアンジェが怒ってくるんだが、俺はクラスメートに剣聖と呼ばれたくはなかった。


「解りました。じゃあ、ラフィー様で」

「ちょっと、どう言うことよ、ヒルデ! 私はまだ許していないわよ」

「いいじゃない! 別にあなたの許しをえる必要はないし、ラフィー様って、ちゃんと様をつけているんだから」

「それはそうだけど……」

 アンジェが、下唇を噛んで悔しそうにしていた。


 俺は様もつけてもらいたくないんだが、それを言うとまたアンジェが怒りそうだから、黙っていることにした。


「ラフィー様ですね」

 俺の横を歩いていたニコラウスがニコッと笑ってくれた。

「ちょっと、ラフィー様と呼んで良いのは私だけよ」

 横からヒルデがニコラウスに文句を言い出したが、

「いいじゃない。ラフィー様で」

 ニコニコ笑いながら、何故かついてきたイレーネまでそう呼び出した。


「本当にもう、仕方ないわね」

「あなたね。そう言うのは私の台詞よ!」

 ヒルデの横でアンジェが怒っていた。


 訓練場には多くの人が集まっていた。


「おいおい、一体何事だ?」

「決闘だってよ」

「えっ、決闘なの?」

「何でも、あの男爵家の男が悪役令嬢の護衛に喧嘩を売ったそうだぜ」

「やるな、男爵家の小僧は」

「その勇気があるのならば、剣術部に入れてやっても良いかもしれない」

 話しているのは剣術部の貴族連中だろう。


 しかし、貴族連中にも結構アンジェが悪役令嬢だという噂は広まっているみたいだった。

 こいつら全員に判らせるには、さすがの俺も体力が続かないかもしれない。

 俺がそう心配しだしたときだ。

 集まっていた皆がさっと場所を空けるように退きだした。


「うん、何だ?」

 俺がそちらを見るとピンクの頭が見えた。


「聖女ミーナ様とエーベルハルト様よ」

「いつ見ても仲睦まじい様子ね」

「本当にで眼福だわ」

 女達がキャーキャー言い出した。

 エーベルとミーナが入ってくるのが見えた。

 そして二人をよく見ると、ミーナは大きな胸をエーベルの腕に押し付けていた。


「おいおい、いつから帝国では婚約者のいる男が平然と他の女を連れ歩くように風紀が乱れだしたんだ?」

 俺はイレーネ達に尋ねていた。


「いや、そういうわけではないですよ」

「あの二人が異常なだけで」

「しかし、皆の規範にならないといけない皇族と聖女様があんなことしては良くはないだろう」

 俺が二人を睨み付けた。


「まあ、フランク王国の人間は人の心が無いのね」

「エーベルハルト様とミーナ様は真実の愛で結ばれたのよ」

「二人の仲を邪魔しないであげて」

「本当にフランク王国の人間は無粋ね」

 女達がぎゃあぎゃあ言ってくれるが、俺は甚だあきれてしまった。


 そんな変な理由が通用するのはゲームの中の話だけだ。

 そもそもアンジェとエーベルの婚約の話は二人が生まれたときに国同士の話し合いの中で決定したことだ。真実の愛なんていい加減な言葉が入る隙はないはずだ!


「おい、ジジイ! よそ見をするな! 今のお前の相手は俺だぞ!」

「本当だぞ。認知症が入ったのか?」


「あなた達、ラフィーにジジイって何よ! 今度言ったら全員雷撃で吹っ飛ばすわよ!」

 アンジェが、目を怒らせて警告していた。

 実際に手がピカピカ光り出している、

 アンジェはキレたら本当にやりかねない。

 やむを得ない。

 俺はさっさとやることにした。

 俺が立ち上がると、


「ちょっと、待って、ラフィー」

 アンジェが、自分の髪を結んでいる青いリボンを解いた。

 髪がバサリと垂れて、皆、息を飲んでアンジェを見る。

 髪をおろしたアンジェは保護者の俺が言うのもなんだがとても美人だった。

 そして、その青いリボンを俺の右手に巻いてくれた。


「ラフィー、絶対に叩きのめしてね!」

 アンジェが、そう言うと、そのリボンにキスしてくれた。


「「「キャー!」」」

 女の子達から黄色い声が上がる。


「な、なんて破廉恥な女なの!」

「婚約者の前で他の男にリボンを託してキスするなんて!」


「ふんっ、その婚約者は関係のない女に胸を押しつけられて鼻の下を伸ばしているじゃない」

 アンジェが指摘したとおりだが、相手がやるからって同じようなことをやるのは良くないだろう。

 まあ、俺はアンジェの保護者枠だから問題ないと言えばないが……


「くっそう、イチャイチャしやがって、絶対に許さん!」

「お前も両手にリボンを結んでいるだろうが」

 そうだ。オスカーはなんと贅沢にも左右両方に女からリボンを結んでもらっていたのだ。


「俺も平民でなくて、王女様に結んでもらいたいわ」

 何かオスカーがふざけた事を言ってくれた。

 こいつは二人の平民の女を二股にかけているらしい。

 何という奴だ。

 こういう男の敵は許せなかった。

 前世の女にモテなかった俺が怒り狂っていた。


 俺も愛した女の娘からではなくて俺を好きな子からリボンを結んでもらいたい!

 そう叫んだら、絶対にアンジェが不機嫌になるのに違いないので言わないが、気分的に俺は切れていた。


「エーベル様。あの恐ろしい悪役令嬢に私は虐められて殺されるのです」

 胸を押しつけつつ、ピンク頭が叫んでいるのが聞こえた。


「ラフィー、そんな奴一撃でやっつけるのよ!」

 言われたアンジェはエーベル達を全く無視して見ていないのだが……あのピンク頭、言うにかこつけて俺の可愛いアンジェをまだ悪役令嬢というか!

 何が虐められて殺されるだよ。

 貴様のその鋼鉄の心臓なら虐められてもびくともしないだろうが!

 虐め返して叫んでいる様子が目に浮かぶ。


 そんな鋼鉄の心臓をもつ馬鹿に

「ミーナ。君のことは絶対に俺が守ってやる」

 とか言う頭のネジが少しおかしい皇子も同罪だ。


 俺は一瞬で軌道を計算した。


「行くぞ」

 オスカーが俺に斬りかかってきた。


 よし、今だ!

 オスカーが俺の打点に入った。


「喰らえ!」

 俺はその剣を躱しつつ、模擬剣を真横に振り抜いたのだ。


 ダン!

「ギャッ!」

 俺の横殴りに払った剣はオスカーの腹を直撃して吹っ飛ばしていた。


 そして、吹っ飛ばされたオスカーは一直線で飛んで行き、イチャイチャしている皇子と聖女を直撃したのだ。


 二人の前には防御用のフェンスが張られていたが、俺の一撃を食らったオスカーがフェンスを吹っ飛ばしていた。


「「ギャッ!」」

 そのままフェンスを巻き込んだオスカーの体が皇子と聖女を巻き込んで押し倒していた。


「やったー、ラフィー! やったわー!」

「その剣さばき神業です!」

「凄いです。ラフィー様、最高!」

 俺は歓喜するアンジェ達に迎えられてた。


「本当にラフィー様は容赦がありませんね」

 汚物をまき散らしたオスカーの下敷きになった皇子と聖女を見てイレーネが呆れていた。


 アンジェを貶す奴らを俺は許さない。


 まあ、取りあえず、今回はこれで許しておいてやろう。


 俺は珍しく寛大な気持ちでここまでで許してやったのだった……

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