13.フランク王国の手配した家が廃墟になっているのを見て唖然としていたら、存在を忘れていた自分の屋敷に案内されました
その後学園長から学園の説明と制服の採寸があった。
「あのう、ラファエル様、本当に学園に通われるという事で宜しいのですか?」
「そうですぞ。ラファエル様。今更何もその年齢で学園に通われなくても……」
学園長とグスタフが止めようとしてくれたが、
「いえいえ、少年老いやすく学なり難しという有名な諺が東洋の国にあるのです。
私も心はまだまだ10代のつもりですが、何分頭は大分固くなって参りました。今せっかく世界最高峰の呼び名も高い学園に学べる機会を頂いたのです。是非ともその機会を大切にしたいと思います」
俺がそう反論すると、
「東洋にそのような諺がございましたか?」
疑い深そうに学園長は俺を見てくれたが、前世の世界にあったのだからこの世界でもあるはずだ。
なくても、東洋のことなら誤魔化せると俺は踏んでいた。
俺は何としてもアンジェと第一皇子の仲を取り持って、アンジェの幸せを守らないといけないのだ。
「アンジェリーナさんはラファエル様が学園に通うとおっしゃっていますが、宜しいのですか?」
学園長がわざわざ聞かなくても良いのにアンジェに聞いてくれた。
アンジェは俺が心は10代と言ったときに軽く笑ってはいたが嫌そうな顔はしていなかった。
でも、心の底では嫌だと思っているのではなかろうかと俺は危惧したのだが……
「大丈夫です」
アンジェは学園長の言葉に一言で答えていた。
「でも、保護者のような方が学園内にいらっしゃったら、せっかくの学園生活を楽しめないのではありませんか?」
学園長の言葉に俺はむっとした。
俺としてもあまりアンジェに干渉したくはないが、第一皇子との間を邪魔する聖女達が出てくるのだ。上手くやらないとアンジェは断罪の上修道院送りになってしまう。俺としてはなんとしてもそれを防ぎたかった。
「別にそのようなことはないですよ。ラフィーと一緒にいるだけで楽しいですから」
そう言うとアンジェはニコリと天使の笑みをしてくれた。
その笑顔の輝いていること……そう言ってくれたらここまで育てた甲斐があったと前任者も墓の中で泣いているだろう!
「それにラフィーは本当に私の事を良く考えてくれるのです。一緒にいても気を使わなくてすみますし……それに私も帝国は初めてですのでいろいろと不安なこともあるのですが、ラフィーが傍にいてくれたらこれほど心強いことはありません」
アンジェは俺と一緒の方が良いとはっきりと言ってくれたので俺はほっとした。
その言葉を聞いて学園長はがっかりしていたが、別に学園の運営を邪魔しようとはするつもりはないのだ。そこまで嫌そうにしてほしくはなかった。
「うーん、アンジェリーナさんが学園に行っている昼間ならラファエル様が空くと思い、手合わせなど色々したいと思っておりましたのに……」
グスタフは最後まで残念そうだった。
手合わせはここに来るまで散々付き合ったし、帝都にいればまたその機会もあるだろう。
俺がその旨を話すと、
「さようでございますな。確か学園には剣術部もありようですし……」
何かグスタフが碌でもないことを考えついたような気がしたが、取りあえず俺は黙っていた。
そのまま辺境伯の馬車で、前もって王国が手配してくれた宿舎に移動した。
「「「えっ?」」」
俺達はその建物を見て唖然とした。
築100年は過ぎているだろう。
まあ、この世界では築100年は普通かもしれないが、俺達が目を見張ったのはそこではない。
その建物の前の庭は雑草に覆われ、窓という窓は割られ、壁もヒビか至る所に入っている廃墟だった。
これを王女の住まいにするか?
俺はあきれを通り越して、開いた口が塞がらなかった。
「ラファエル様。これは酷いですな」
さすがのグスタフも唖然としていた。
「まあ、何かの手違いでしょう。今日のところは帝都の我が家にいらっしゃってはいかがですか?」
グスタフはそう申し出てくれた。
さすがに今からホテルを探すのも面倒だなと俺が思ったときだ。
「ラファエル様!」
俺の前に立派な馬車が泊まりその中から、執事の格好をした男が降りてきたのだ。
どこの誰だろう?
俺は昔の記憶を繰った。
「お久しぶりです。皇宮でお別れして以来ですな。お忘れですか? セバスチャンです」
男が自己紹介をしてくれた。
「セバスチャンってバルトの執事か」
俺が思い出して言うと
「それは10年も前の話です。今は私は陛下から命じられてあなた様のお屋敷の管理をしております」
「えっ、俺の屋敷って何だ?」
俺には何のことか判らなかった。
「17年前に前陛下があなた様の功績を称えて子爵位を叙爵された時にあなた様に下賜された屋敷です」
「えっ、あれはいらないと断ったはずだが」
俺は驚いてセバスチャンを見たが、
「現陛下があって困るものではなかろうとおっしゃって、そのままになっていまして。今は私の退職後の屋敷になっておりますが、元々はサンティーニ子爵様のものでございます」
セバスチャンが教えてくれた。
「いや、しかし、俺はあの時に確かに断ったぞ」
「まあ、良いではありませんか? そちらのお嬢様もいらっしゃるのでしょう。今から宿を探すのも大変ですし」
「そうだ。ラファエル殿。もらうものはもらっておいて損はなかろう」
セバスチャンの言葉にグスタフまでがそう言ってくれた。
「では、セバスチャン。ラファエル様の事はそちに任せたぞ」
「私めのご主人様でございますから、お任せ下さい」
俺は疲れていたのもあってそのままセバスチャンに連れられて自分の館に向かったのだ。
でも、そこでは更に驚くべきことが待ち構えていた。




