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MyGround―不完全な生命の詩  作者: 螺結
第一章 高貴なる故郷よ
16/19

エピローグ:内

霧の中で、蒼銀の騎士は光っていた。

それは、帝都の地下で見てきたどんな装置よりも、

どんな祈りよりも、静かな光だった。

(――きれい)

カリーナは、そう思ってしまった自分に少しだけ戸惑った。

蒼銀のアミュレットが放つ光は、

彼女の白い腕に残る泥の痕跡を、否定も修正もせず、

ただ「そこにあるもの」として照らしている。

痛みは、もうなかった。

それでも、その場所が「自分である」ことだけは、はっきりと分かった。

「……不完全なままの命の美しさ」

シトリンの言葉は、

刃のようでもあり、毛布のようでもあった。

(不完全……)

それは、宗派が忌み嫌った言葉。

治さなければならない、と言われ続けた状態。

それなのに、

今はそれを「守る」と言われている。

カリーナは、うなずく代わりに、

ほんの一瞬だけ、足元の霧を見た。

そこには、何もない。

けれど、なぜか――

何かが、ついてきているような気がした。

理由は分からない。

人形だった頃の演算では、説明できない。

ただ、心臓の奥が、微かに冷えた。

「……行こう」

父の声に、カリーナは顔を上げた。

そこには、確かな温度がある。

触れれば、ちゃんと生きていると分かる腕がある。

だから、彼女は歩き出した。

霧の向こう、岩顔料の国へ。

不完全な命を受け入れるという場所へ。

(きっと、大丈夫)

そう思いたかった。

蒼銀の盾は、確かにそこにある。

仲間もいる。

自由も、ある。

――それでも。

カリーナは知らない。

自分の歩幅が、

誰かの描いた地図と、

ぴたりと重なっていることを。

そして世界のどこかで、

事実を見ることを拒む抑止力が、

今日も静かに、

何もしていないふりをしていることを。

それでも彼女は歩く。

それが、

人形ではない、

不完全な人間として選んだ、

最初の行為だったから。

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