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あいつは俺の仇!  作者: 方結奈矢
第三部 六年生編
55/58

決断


 「えっ私もですか?」


 「私も?それはどういうことかしら」


 「あっすみませんでした・・・あのぉ~すみませんでした」


 「謝らなくてもいいのよ、何が()()なのか教えてちょうだい篠崎さん」


 私は、オキョンの一日後、1月24日の土曜日に超難関校であるところのノートルダム清泉女学院中学校の受験にチャンレンジしました。


 翌25日の日曜日には合格発表が行われ、ネット上でも確認できるのにわざわざ学校にまで両親共々足を運び自分の受験番号が掲示板にあるのを、「合格だ!合格したよ」「「おめでとう、よくやったわね」」確認しました。

 

 そして翌26日の月曜日には、お母さんと一緒に入学手続きをしに再び訪れた清泉中で校長室に呼び出され、


 「篠崎華怜さんには入学式では新入生代表として挨拶をお願いしたいのですがよろしいですか」

 そう校長代理の教頭先生に要請され、「私もですか」なんて言ってしまったったんです。


 私は、ここで修道服を身にまとう教頭先生に事情説明をする事になりました。


 「私と一緒に受験勉強をしていた友達の長谷部さんが、昨日マリア中で新入生代表をするように言われたそうです。それで・・・“私も”なんて言ってしまいました。すみませんでした」


 そう、そうなのよ、オキョンったらどうやらマリ中をトップで合格したみたいなの。その証が新入生代表挨拶なんだって、知らなかったわ~。でも、まさか私までとは思いもよらなかったのよ。


 「篠崎さんのお友達がマリア中の新入生代表挨拶をするの?その長谷部さんは同じ小学校なの?」


 「はい、同じ安古市第二小学校です」


 「そうなの、凄いわね。二人とも同じ小学校なんて・・・でも篠崎さんはさっきの話では塾にも行っていないし、家庭教師もいなかったそうじゃない。その長谷部さんはどこの塾に通ってらっしゃったの?」


 「いいえ、長谷部さんも塾には行っていませんでしたし家庭教師もいませんでした。私と二人で同級生の男子に課題を出してもらって勉強をしていました」


 「同級生の男子に課題?その同級生に勉強を教えてもらっていたということなの」


 「はい、そうです。ここを受験するのに傾向と対策問題とかいろいろ作ってもらったり教えてもらっていたんです」


 「お母様、その話は本当ですか?華怜さんとそのお友達の二人はいわば独学でマリア中と当校に合格したことになりますが、いいえ、独学が珍しいと言っているのではありません。独学で首席合格というのが稀というか初めてかもしれないので・・・」


 (えっ~初めてって・・・それナニ?)


 教頭先生はここで脇に立っていた別の先生の顔を見上げて、「ねぇ松崎先生」確認までとるんだよね。それに頷き返すのは、とても厳しそうな先生でした。


 お母さんもその頷く姿を確認して、教頭先生に聞かれた事を正直に答えました。


 「はい、うちの娘も長谷部さんも間違いなく同級生の加羅翔介君と言うんですが、彼に勉強を見てもらっていました。それだけしか受験対策はしておりません」


 「そうなんですね・・・なんて凄い子なんでしょうね、とても優れた教師ということになりますよ、その加羅翔介君は。えっ加羅、加羅さんといえば当校にも・・・」


 「はい、翔介君のお姉さん二人はこの学校にいます」


 私はここで嬉しくなって、大きな声でそう答えてしまいました。


 私がこの学校を選んだのは制服の素敵さよりも、翔介君のお姉さん二人がいる事だもんね。だって将来の義姉さんだもん~キャッー言っちゃった!!


 「高等部に上がった加羅寛美さんと中等部二年の博子さんね。二人とも優秀な生徒さんよ。そういえば加羅さんには優秀な弟さんがいるのは聞いていたわ ――― 松崎先生たしか・・・」


 「はい、教頭先生、加羅寛美さんと博子さんの弟さんは勤勉社の全国統一模試で小学校生部門の全国一位だった子です」


 「ああ、やっぱり・・・その加羅君に篠崎さんは勉強を教えてもらっていたというのね。にしても二人とも首席合格なんて ――― ねぇ篠崎さん、あなたがた二人以外にも加羅君に受験勉強を見てもらっていた方はいるの?」


 「いいえ、私達だけです。私たち二人だけに課題を作ってくれて休憩時間や放課後とかに勉強を見てもらっていました。毎日です」


 「そうなのね、ねぇ学校が始まってからでいいからその課題帳を見せてもらってもいいかしら」


 「わかりました」


 「にしても、加羅君は凄く優秀なのね、私も会ってみたくなったわ。ねぇ篠崎さん秋の文化祭の時にはその加羅君を連れて私に紹介してくださるかしら」


 「えっ教頭先生にですか・・・」


 「ええそうよ、どうかしたの?」


 「あ、はい、わかりました」


 「篠崎さんどうかしたの」


 「いいえなんでもありません。文化祭の時には翔介、加羅君を連れてきます」


 私の緊張の時間は終わりました。


 にしても絶対に翔介君をあの先生に会わせてやるもんか。なんといってもあの教頭先生は翔介君好みの年増美人だもん。


 (あれは危険すぎる)


 なんて思ってしまったのよね。


 ◆


 今夜は私の合格祝いのパーティーなの。


 博多からお婆ちゃんも駆けつけてくれて、翔介君を紹介するとその頭を見て、


 「なんとも神々しかぁ~」

 

 手を合わせて拝むんだよ、笑っちゃった。


 翔介君はそんなお婆ちゃんに戸惑う様子もなく平然と、


 「おめでとうございます、お孫さんはよくやりましたね」


 大人の会話をするんだよ。


 この日、翔介君は私の両親の招待を受けて我が家にやってきました。


 食事が始まる前に私の部屋で二人で過ごしたかったのにリビングでお婆ちゃんと洋裁談義が始まるともう止まらないの。


 「ハイピングはどうしても裏側が先に進んでしまって、上になる側が手前に押されてしまってぐちゃぐちゃになるんです。どうやったらこんなにきれいに出来上がるんですか?」


 なんてお婆ちゃんお手製の私へのお祝いのブルゾンを見て言っているの。


 (翔介君は経験者?どこまで凄いの)


 その質問の内容にまた思ってしまいました。


 だって、先日も私は翔介君の事で衝撃の真実を知ってしまったんです。


 合格発表のあった翌日の日曜日に入学手続きの為にマリア中を訪れると、私とママはすぐに校長室に招かれて、


 「長谷部響華さんには新入生代表として入学式の時には全校生徒の前で挨拶をしていただきます」

 どこか命令調でシスター支倉敦子校長先生にそう言われたの。


 断れる雰囲気じゃなかったんだ。


 その後よ、職員室の応接間にも呼ばれて、私とママは先生方に囲まれて質問されたの。


 「どうやって受験勉強をされたのですか?」


 なんでも想定以上の点数を私は取れたらしく、

 

 「えっ、私が首席合格なんですか?」


 首席合格者が新入生代表をする理由である事もここで教えてもらったの。


 私とママは、そこで更に驚く事を聞かされました。

 

 「塾にも行かず家庭教師にも付かずに首席合格するなんて前代未聞なんです。長谷部さんは実に優秀でいらっしゃるということですわ」


 教頭の磯島薫先生に言われ、翔介君の事をママが詳しく話しました。


 「ありえない!小学生が課題を出して受験勉強を教えるなんて、それも首席合格者を指導するなんて、絶対にあり得ることではないわ」

 

 教頭先生以外の先生方も同じように頷いていました。


 そして翔介君が私の為に作ってくれた課題帳を郵送して欲しいとまで言われ、「加羅君が承諾したなら」頷くママでした。


 どうやら翔介君の学力は私やママが考えていた以上に高いという事が判明した出来事だったの。


 翔介君は私の合格祝いにとても素敵なカバンを贈ってくれました。


 そしてギューと皆の前だったけどしてくれたの。


 「将来は加羅君に響華は持っていかれるのか」


 お父さんは悲しそうな笑みを冗談ぽく浮かべて皆を笑わせました。


 「いいえ響華パパさん、お嬢さんはどんな男性でもひれ伏すような才能と美貌に恵まれて僕なんか相手にはしてくれなくなりますよ」


 今度は翔介君が私の前に跪いて皆を笑わせるの。


 お婆ちゃんはパーティーが終わって翔介君が帰っていくと、


 「あの子は本当に凄かね。将来がほんなこつ楽しみ ――― よかこと響華さん、あん加羅君ば絶対に取り逃がしたらつまらんよ。それには加羅君以上に響華さんは頑張って、あの子が思い描く以上ん裁縫師になってごらんなしゃい。きっと、あんた、あの加羅君から認めらるばい」


 私が漠然としか考えていなかった“どうやったら翔介君に私の事を認めてもらえるか”について明確な答えをお婆ちゃんは語ってくれました。


 「そうだね、私もそんなことを考えていたのお婆ちゃん。ありがとう、私、頑張るよ、やってみせるね」


 お婆ちゃんだけでなく自分にも誓ったんだ。


 ◆


 「私は誓ったのよ、将来、翔介君の奥さんになることを」


 私は、お昼休みにちょっと肌寒い屋上でそう声を大にして切り出した。

 

 もちろん目の前にいるリクやオキョンと対立するためじゃないよ。


 ただ、私は翔介君の偉大さを新入生代表になったことで改めて思い知り、そう口にしないといられない衝動があったのよね。


 「そんなこと、私はずいぶん前に決めてたよ」


 オキョンは、こんな私の挑発的な発言にのってくるような子じゃないのに、何かを思ったのかそんな事を言ってきました。

 

 (私の本気度が伝わったのかしら・・・)


 その目には、敵意とは違うけれどあからさまにライバル心を燃やすギラッとしたものがありました。


 (くるぞくるぞくるぞ)


 この流れだとここでリクが私達の想いを受けて上から目線でガッンと余裕を示した発言がありそうなもの。なのにリクは、自信ない弱々しい声で、


 「本当に華怜ちゃんもオキョンちゃんも新入生代表挨拶をするの?」


 そう問いかけてきたんです。


 「「ええそうよ」」


 「そうか・・・本当に二人は凄いね」


 「凄いのは私達を指導した翔介君なのよ」


 私の笑顔にリクは顔を向けてこずに、遠くを見つめるばかり・・・


 (どうしたんだろう?暗いぞリク)


 「マリ中の先生方がね、あり得ないなんて言ってたんだよ翔介君のことを」


 オキョンの弾んだ笑顔もリクには眩しく映るのだろうか?顔を向けようとはしなかった。


 私達二人の優秀な出来事は、合否を待ちわびてくれていたリクに、約束もあってすぐに電話で知らせ喜んではくれたけど、こうやって直に顔を見てみれば(もしかして喜んでない)なんて思ってしまうほど暗いもの。


 (いったい何があったんだろう)


 笑顔を重ねる私とオキョンとはいっまでも対照的なリクでした。


 ◆


 私は、華怜ちゃんとオキョンちゃんがトップで合格したと知らされてからは、パパと特にママから毎日パリ行を説得されるようになったの。


 「パリへ行ってエミールさんの話を聞いてみましょう」


 とね。


 そんな私の悩みを知らない華怜ちゃんとオキョンちゃんはそれを単純に私が受験合格を羨んでるとでも思ったみたいで、「リクもどちらかを受験すればよかったのに」なんて言ってくる。


 実は華怜ちゃんとオキョンちゃん、一度も口にした事はないけど、普段から私だけが、「翔介」と呼び捨てにできるのを本当に羨ましがっていたの。


 だけど、普段の成績から受験できる権利が一番あるはずの私が、受験をしなかったので合格の栄誉それもトップ合格なんて栄えある事が二人だけが手に入れた事で今度は私が逆に羨んでるとでも思ってるみたい。


 “羨み”が私の冴えない表情の原因だなんて思ってるのよね。


 (でも違うよ二人とも)


 誤解をしたままの二人は私の前でさらに激しい翔介を巡るバトルを始めたの。


 「「中学生になったら私が必ず翔介君のカノジョになるんだから」」

 とよ。


 (ありえない!!)


 「いいこと、リクちゃん翔介君と同じ安古市中に行けるから私たちより優位に立てるなんて思わないでよ、私は絶対に負けないんだから」


 「そうよ、一人でぬけがけをしようとしてもダメなんだからね。そうだスズちゃんを見張りにしとかないと」


 オキョンちゃんはこんなとこがいい。


 スズちゃんを監視役として指名した事で、この話を友情関係にヒビを入れる様なものではない“冗談である”を私にアピールしてきたのよね。


 華怜ちゃんもそんな空気は簡単によめる。


 「私は早百合ちゃんに頼むわ」


 こうして二人は笑いあい、いつものバトルを終えたのです。


 ◆


 (何かしら?この得体の知れない不安感は・・・)


 リクちゃんのどこまでも冴えない表情から、私だけでなく華怜ちゃんも自分たちが知らない事情がリクちゃんにあるのを察したの。


 それがきっと翔介君がらみで、私たちがクリアしたばかりの受験合格なんかより大きなものがリクちゃんにあるのを予感させたの。


 「リクちゃん何をそうも悩むの」


 もう声のトーンを友人モードに直した華怜ちゃんからの問いに、何かを語りだそうとした矢先にチャイムが鳴っちゃった。


 ここでお開きになったこの続きの会話は行われる事なかったの。


 だってリクちゃんは翌日、三学期中だというのに突然登校してこなくなったの。


 「翔介君、リクちゃん体調を崩したの」


 私の問いに答えた翔介君から驚きを聞かされる。


 「リクはお母さんとイザベラとパリに行ったよ。向こうの有名なカマラマンからモデルとしてスカウトされたんだ。その話を詰めに行くためにね」


 なんとも嬉しそうな顔をする翔介君に私とたぶん華怜ちゃんも、これは翔介君が私達の受験のように策略したものだと気が付いたの。


 以前にリクちゃんの将来についてそんな予感めいたことを、翔介君が口にしていたのを思い出したからよ。


 初めてギューをしてもらった神社の境内での事を・・・


 華怜ちゃんは華怜ちゃんで何か思いついたような表情をしているけど、私は、リクちゃんの将来がモデル、それもパリと聞かされて雑誌で見るファッションウィークでのランウェイでのスーパーモデルの姿を思い浮かべてしまい凄い差が生じるかもしれないのを実感したの。


 (マリア中どころの騒ぎじゃないじゃない)


 急に自分の功績が霞んで見えてきちゃった。


 そして私はリクちゃんが大きな敵に化ける可能性があることに気がついて悩み始めたの。


 ((絶対に翔介君は誰にも渡さない))


 当面の敵同士と思っていた華怜ちゃんだけど、ここは対リクちゃんで共同戦線をはる事を頷きあっただけで約束したの。


 ◆


 私がパリに行くと決めたのは、パパとママが翔介と賭けをしていたからじゃないの。


 華怜ちゃんとオキョンちゃんが清泉中とマリ中にそれぞれが進学を決めた事で差がつくことがイヤだったからよ。


 それも二人ともあの難関中をトップ合格だなんて凄いと思った。


 でも私がパリに行っている間に翔介があの二人のどちらかに取られてしまうのではないかと思うと、


 (やっぱりやめとこ)


 なんて考えてしまうと、それがすぐにばれてしまい、


 「リクおまえはバカなのか、僕の好みはこれだぞ」


 翔介は私の不安を、スケッチブックで大人な私ページを開いて払ってくれる。


 「あんな小便臭いガキ女に俺がコロッとやられるわけはないだろう」


 本当に驚くような表現で私を安心させてくれた翔介。


 でも私は、ページの裏にはあの木村佐和子がさらに大人でいるのも知っていた・・・


 「わかった、パリに行って話を聞いてくる」


 翔介は本当に私の決断を喜んでくれギューとしてくれた。


 「いいか、パリから帰ってきたらおまえの決断を僕に聞かせてくれ。モデルになってこんなリクになる決断をするのか、それとも俺と同じ中学に行ってション臭い連中に混ざるのかを」


 そんな言い方されたら選択肢がないような気もしたけど、私は翔介からスケッチブックを取り上げてその胸に飛び込んでキスしてもらった。


 私は華怜ちゃんにもオキョンちゃんにも負けない。絶対に!


 私がモデルになったら翔介が喜んでくれる。そして大人な私に翔介は恋してくれるはずだ。


 その為にもパリに行ってエミールさんの話を聞いてみる気になる私でした。


 ◆


 二人の受験生が合格するのは予定通り。首席合格も同様だ。


 あとは、リクがパリに行って、


 「スーパーモデルになる」

 

 決断さえしてくれれば俺の小学校生活は無事に終わる事になる。リクへの復讐の序章が次の幕へ向けてうまく終わるという事だ。


 俺の決断はこの小学校生活の中で変化を遂げたが、最後までリクへの復讐心だけはぶれなかった。


 「リクをスーパーモデルにしてクイーンの座にまで引き上げてやる」


 ここまでは生前ワールドでリクをイジメた俺からの詫び行動だ。


 その後にリクから俺はプロポーズを受けて承諾もするも30歳を前に死んでやる事で悲しみのどん底に落としてやるのが当初の復讐方針だった。


 だが、俺は加羅家の後継者として父さんから期待されている事を知ると、両親の為に子供を残しておく事を決めた。


 そこでリクからプロポーズを受けるが、ふってやる事に予定変更し、そして別の女と結婚して子供を作るのをリクへの復讐と決めたのだ。


 ここまでがこの小学校生活で決めた事であり、リクが最終的にパリ行を決めれば、あとは俺が将来、結婚相手としてリクから認められるようなスキルを身に付ける事に専念すればいいわけだ。


 再会するその時までに・・・


 ▲ 心内会議 ▼


 《さてさて俺ヨ、ここまでは予定通りだが、問題はいつをあいつとの再会時期に設定するかだな》


 (気が早いなぁ~リクはやっとパリに行ってエミールさんに会うのを決めただけだぞ)


 《バカな話だ。生前ライフでの既定路線は崩れんよ。あいつはパリに行くまでもなくモデルになるのを決めているさ》


 (そうとも言えんぞ。生前ライフでのリクはイジメによる心傷からパリ行を決断したんだ。この走馬灯ワールドではそんなイジメはなかったんだからな)


 《おい俺ヨ、本気でそんなことを言っているのか。俺がなんのためにカレンとオキョンの二人を私立の名門校にトップで入れたと思ってるんだ。あいつにあの二人との差を意識させる為だろうが》


 (リクがそんなことぐらいで差を感じるか?俺と同じ中学に行ける満足感が勝るような気がするぞ)


 《俺ヨ、本当にスィラブマスターなのか?あいつの今の心内はあの二人への羨みの炎でメラメラだぞ。ライバル二人に先を越されたような劣等感に苛まれているはずだ。その証拠に、》


 (あの最近の冴えない顔か)


 《そうだ、あの二人が首席合格で、それが俺のお陰であると絶賛されていることで尚更あいつに焦りが生じているはずだ。ここで俺の予定通りにあいつが考えるのが、》


 (逆転の一手だな)


 《そうだ、あいつはパリに行ってあの二人には絶対に手の届かない高みに自分を立たせることで俺争奪戦を有利に進めることを考えるはずだ。たとえ離れ離れになってもな》


 (なるほどな~わかったよ。ということはもっとリクを煽るように華怜と響華の二人を称えるか)


 《それは効果的だが、あいつがパリにとりあえず行くと決めたならまずは不安を払拭してやらんとな、あいつ不在の間に俺が取られはしないか不安になるのは必定だからな》


 (ああわかってるさ、そこは任せとけ)


 《ということは俺が悩むべきは、あいつとの別れの日に定めるべきルールだな》


 (そうだな再会するためのルール決めだな)


 《いっそクイーンになったらにするか》


 (どうだろう、それは厳しすぎるぞ)


 《ならデビューしたらにするか?》


 (それではハードルが低いな、まぁ少し考えてみるさリクがパリから帰ってくるまでに)


 《そうだな、まずはあいつにパリ行を決めさせないとな》


 ▽


 俺はリクの最大の懸念事項を、「小便臭い」とオキョンと華怜の事を言ってリクに決断させたのだった。


 


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