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あいつは俺の仇!  作者: 方結奈矢
第二部 五年生編
22/58

姉妹


 やるじゃない、私の華怜ちゃん。これで12勝13敗の初めての負け越しよ。まさか、この私が予定外で負けるなんて驚きだわ。


 どうやら私は、翔介の事を、彼の言う通り見誤っていたようね。まさかあれほどの逸材が小五にいようとは・・・


 私の(しもべ)の木下君はガリ中の特待生よ。そんな彼をあの年齢でバカ呼ばわりできるなんて驚きだわ。


 松木君だってピアノの名手で通っていたのに翔介にかかれば下手呼ばわり。本当に凄い、凄すぎるわ、あの子。華怜ちゃんにはもったいない子よ。


 そうだ!


 あの子、私の物にしようっと。

 それがいいわ、そうしようっと。


 どうせ名古屋チャットで調べ出したんだろうけど、ファンシー塚本の件を引っ張り出してくるなんて、翔介なかなか見どころあるし、あの綺麗な髪、私が毎晩すいてあげたいわ。


 それにあの可愛いお顔、将来イケメン間違いなしじゃない。


 ねぇ、翔介、あなた私の弱みを握ったなんて思っているでしょうけど、残念ね、私は、弱みなんて誰にも作らない主義よ。


 だって私、万引きなんてした事ないもの。


 ファンシー塚本事件は私、濡れ衣を着せられただけなのよ。


 忘れもしない、山川晃、二つ上の六年生の男子だったわ。

 あいつ、私にふられた腹いせに自分で万引きした商品を私に押し付けて逃げたのよ。


 それを、塚本の(ババア)に見つかって、「違います」って事情を話そうとしても聞いてもらえなかったの。


 それで、当時の私は浅はかにも脱げ出してしまったのよ。

 その時に、あの婆が勝手に躓いてこけて怪我したくせに、私に突き飛ばされたなんてウソを言ったのよ。


 それだけじゃない。

 それ以前の万引きまで私のせいにして、「常習犯」呼ばわり。


 あの件、最初こそ本当に恨んだけど、もう復讐は済ませたし、なんとも今は思ってないわ。


 山川晃には、彼がとても可愛がっていた愛犬がいたの。ポメラニアンだったけど、気の毒にも行方不明になっちゃったんだって。


 ずいぶん探したようね。泣きべそかいていたのを笑ってやったわ。


 「返せよ」

 なんて私を誘拐犯にしたのは正解だったけど、証拠がないんじゃね。ザマ〜みろよ。


 でも、心配しないでね。あのポメちゃん、あんなガサツな汚い家よりも、お庭も広い衛生的なご家庭で今も元気にしているから。


 子供も生まれたんだよ~♪


 あんなボロ家じゃポメちゃんがかわいそうだったから私は救ってあげたのよ。


 塚本の婆への復讐も済ませたわ。


 あの婆、この私が万引きなんてするはずもないのに、それまでの二回の万引をも私のせいにして、常習犯呼ばわりまでしてママに弁償させたのよ。


 えっ、どんな復讐をしたかですって。そんなの簡単よ、ファンシー塚本を潰してやったのよ。


 夜中に、あの店のシャッターにたくさんの張り紙をしてね。


 『金返せ!塚本組』

 てね。


 50枚ぐらいだったかしら、Vシネマで研究してそれっぽくプリントアウトしたものをベタベタ張りまくったわ。


 もちろん防犯カメラは事前に調べたわ。警察に行って、あの店の前で置き引きにあった事にしたの。


 「防犯カメラで調べてください」

 ってね。カメラなかったわ。


 あのお店、ヤクザ関係店を匂わせただけで、悪評判は瞬く間に広まり潰れたわ。


 せっかく私のお気に入りの店で評判もよかったのに、朝の通勤客が多く通る場所だったのが災いだったわね。

 

 一カ月よ、一カ月、私を万引犯にしたててから一カ月弱で潰れたわ。オープン間もなかったのに、ザマ~みろよ。


 私は、将来、女優になるの。

 

 まずはグラビアアイドルかな。もう事務所とは話ができているし、高校生になったら両親に会いにくるそうよ。


 デビューしたら、あの忌まわしい事件を笑い話として逆手にとるの。


 「私は、前科持ちなんです」

 てね。


 インパクトある話題ふりからの展開で、濡れ衣を着せられた経緯を涙ながらしっかり話すのよ。


 それで私の無実は証明されたも同じ。もし世論が騒ぐなら、山川晃の実名だしてまで争ってやるの。


 にしても困ったわね・・・二学期からの入寮は、私に逆らう一派の駆逐の為に決めていたけど、あんな約束、「もう二度と華怜の前に姿を見せるな」ですって、そんな約束を守っていたら週末に家に帰れないじゃない。


 地元には私を必要とする一派があるのよ。睨みをきかすためにも週一は帰宅させてもらうわ。


 まぁいいわ、夏休みは始まったばかり、なんとでもできるわね。


 それよりもマジであれは欲しいわね・・・加羅翔介。華怜ちゃんには本当にもったいない逸材よ。


 あの年頃なら、年上女子にメロメロになるはずなのに、私に(なび)かなかったのは立派よ。


 だからといって華怜に夢中にも見えなかったし、何があの子を動かしたのかしら、謎ね。そこを明確にする必要があるわね。


 今度、翔介に会う時はもっと本気で向き合わないとね。なんなら私のヴァージンをあげてもいいかも。


 あの子、間違いなく将来大物だし、今のうちにキープしとくのも悪くないわ。そうなればもう木下君と松木君なんか必要ないわね。


 早く翔介に会いたいわね。本当に楽しみだわ。


 ◆


 今年の誕生日に、私は勝ってはいけない戦いに翔介君のおかげで勝ってしまった。


 そうなんだ、本当に嫌で嫌でたまらないんだけど私の誕生日は、偶然にも美弥子と同じ7月20日なの。


 毎年、美弥子のバース―デーパーティは盛大に行われるけど、私のお祝いはママとパパからプレゼントをもらうだけのものでパーティーなんて美弥子が来てからはしてもらってないんだ。


 でも、今年はママが翔介君に、「華怜はバラが好きなの」とか言ってくれていて私のバース―デープレゼントなんて知らずに贈ってくれたんだ。


 (本当に嬉しかったなぁ~)


 それでも、やっぱり自分の呪われた誕生日の事は翔介君にさえも伝えられなかったよ。


 でも、今年は最高のバース―デープレゼントがもう一つあったんだ。翔介君とのファーストキスよ。


 自分からしたキスだったけど、ギューしてもらえたのも嬉しかったし、リクやオキョンにだいぶ差をつけられたから追いかけて抜かしてやるつもりよ。


 浮かれてばかりいられない事もあるのよ。実はこれまで私は美弥子に勝ち越した事なんてないのに勝ち越してしまったの。


 という事で、あの美弥子の仕返しが必ず夏休み中に倍で返ってくるのは間違いなくて、警戒しないといけないんだ。


 (どうしよう・・・)


 美弥子が広島にやってきてすぐに始まった、ピアノにするかエレクトーンにするかの戦いに私は負けてしまった。


 もう注文までしていたのに、  


 「エレクトーンより白いピアノがいいわ」

 あとからなのに私は負けてしまった。


 いつだって大事な勝負は美弥子が勝つんだ。


 ディズニーランドの時だって、「私は行ったことあるしUSJの方がいい」とか言い出して、ユニバーサルスタジオに変わってしまったんだ。


 自転車だって、「赤なんて幼稚よ、白い自転車なんておしゃれじゃない」美弥子好みでお揃いになったし・・・

 

 学習机だって、「キャラデスク?バカじゃない」美弥子好みを押し付けてきたんだ。私の欲しい物まで、どれもこれも美弥子が勝手に決めてしまうんだ。


 私が勝てるのはどうでもいいものばかり。晩のメニューとか居間に飾る花の種類とか。


 それでも美弥子は連敗しないし、勝ちたい時には勝って私にプレーッシャーをかけてくるんだよ。


 今日の戦いだって美弥子は勝つもりだったはずよ。それなのに私が勝ってしまったんだ。


 このまま勝ち越したままを美弥子が許すはずもないのよ。


 翔介君が考えてくれた、美弥子を寮に追い出す作戦はうまくいったけど、美弥子にかかればすぐに逆転なんてできるはずよ。


 どんな手を打ってくるのかとにかく怖いなぁ。


 翔介君とは仲直りでき、誤解も解けて前より仲良しになれたのはいいけど、それでも美弥子の復讐は怖いよ。


 (どうしよう・・・)


 また翔介君に相談してようかな・・・ママを通して。


 私は気がついたんだ。翔介君が他の男子なら必ずメロメロになる美弥子の味方にならなかった理由を・・・


 翔介君はうちのママが好きなのよ。私はそこに気が付いてしまったの。


 ママを見上げる時のあの嬉しそうな顔は、絶対に私には見せてくれなかったし、もちろんリクやオキョンにだって見せやしないものよ。


 だから私はママにお願いして翔介君を味方に引き入れたんだ。美弥子が狙うなら次は私のボーイフレンドだって目途をつけていたからよ。


 うんうん違う違う、壁に翔介君との写真を飾って美弥子を誘ったのはママの考えだったんだ。そろばん教室情報もお母さんとの会話でわざと聞こえるように教えてあげたのよ。


 そしてママの思ったように予定通りになって、これも予定通り翔介君はママのお願いを聞いてくれたのよ。


 そして予定外に勝ってしまったのよ。


 私もママも翔介君に事前に美弥子の悪巧みを教えてあげて、私のように傷つかないようにしようとしただけなのに、本当にあれは凄かったなぁ・・・


 中三の算数や英語ができるなんて。ピアノがうまいのは知っていたけどあんなに上手だなんて・・・


 次も何かあればママを通してまた翔介君に頼もうっと。


 私が本気で好きになったファーストキスの相手だもん、また助けてくれるに決まっている。


 翔介君も言ってくれたし、「助けてやる」って。そう思うと、なんだかとても気分が楽になって夏休みが楽しみになってきたな。


 そうだ!


 三五君を誘って翔介君と海にでも行こうかな・・・


 私の水着姿可愛んだから!見せつけてやろうっと、翔介君に!



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