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ダンジョンDAYS 召喚師テイマー奮闘記  作者: ディスク
売買
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盗んだナイフで暴れだす

 とりあえずの商談が終わったので、先の交渉の中で出た犬用の品々を見定めるため、店舗スペースの方に連れだって歩く。

 ここにまた戻るのも面倒なので、先に代金を払いフリーザーは聖人の腰袋に納めさせてもらった。


「いやぁ、やはり商家の出だけあって手強いですなぁ」


「いやいや、すっかり手玉に取られてしまいました。鍋を買いにきたつもりがこんな大物を買ってしまうとは……」


「ですが、これは良い品です。それに聖人の腰袋と確かな腕さえあれば、金貨の10枚20枚は簡単に稼げてしまうのでしょう?」


「まぁ、猪狩りだけでもかなりの益が出ますが、その分命懸けなんですよ」


「分かっております。うちの商会も冒険者様の獲物と購買力に支えられておりますので」


 口ぶりから察するに、他の冒険者達は結構どんぶり勘定で物を買っていくんだろう。値切るのは女々しいという文化でもあるのかもしれない。


 恐らく手強いというのも冒険者と比べてという意味なんだろう。実家の父や兄ならば、相場や時期を絡めて更に値を落とそうとするか、次回以降に繋がるような交渉でもするんじゃないだろうか?


 ともあれ、そこからは難しい交渉をするでもなく条件にあった目的の鍋やブラシや皿を選んでいった。


「事前に決めたものはこちらで全部ですね。他に何か御入り用の物はありますか?」


「いえ、とりあえずはこれで大丈夫です。目当ての容器も良いものが手に入りましたし」


 そういう俺の手には、蓋付の平べったい容器が握られていた。サイズ感や形状から前世の工場で使っていたオイルパンを思い出す代物で、両サイドの取っ手がそのままロック機構になる。重ねることが前提の設計になっているので、フリーザーの空間を余すこと無く活用できる。

 流石にタッパーのように液漏れ防止のような機能はないが、フリーザーの幅にぴったりでそのまま重ねて入れられるのが選んだ理由だ。


 奥にある会計用のカウンターまで持っていこうとすると、そのまま聖人の腰袋に入れて持ち帰って良いと言われたので、ありがたくそうさせてもらう。

 前世で物流業務に携わっており、現世でも商会の息子として生を受けた身としては、棚卸や員数管理はどうしているのかとても気になるが、この方式で店が回っている以上問題はないのだろう。


 ともあれこれでリクとカイに必要なものはすべて揃ったので、店を後にする。

 店先まで出ると俺が来たのに気付いたのか、伏せていた2頭が体をもたげて立ち上がった。


「待たせて悪かったな、とりあえず首輪を付けてもいいか?」


「ウォフ」


 2頭をひとしきり撫でるとそう話しかける。言葉ははっきりとは通じていないが、首輪を見せるジェスチャーでなんとなくやりたいことは分かったのか素直に頭を下げてくれる。


 地味な茶色の革製首輪だがこれがあるだけで一気に野良感は無くなり、飼い犬というか飼い狼に見える。まだ慣れないのか、それとも痒いのか頻りに後ろ足で首輪の辺りを掻いているが、まぁこれには慣れてもらうしかない。


 首輪の下が痒いらしいカイの首輪に指をかけ、擦るように掻いてやると、気持ちいいらしく目を細めた。

 そんな姿に和んでいたが、流石にここで屯しているのも迷惑かと立ち上がると、店の奥から喧騒が聞こえてきた。


 値段交渉が白熱しているのかと視線を向けてみると、どうやら思ったより不味い状況のようで、だんだんとその声が剣呑なものになり悲鳴も聞こえてきた。


 まさか白昼堂々押し込み強盗でもおっ始めたのかと身構えていると、棚から商品を派手にぶち撒けながらボロボロの革鎧姿の男が飛び出してきた。


「チクショウ!どいつもこいつも馬鹿にしやがって‥‥なに見てんだテメェ! ぶっ殺すぞ!」


 何事かと男の方を見ていたのが悪かったのか、視線がバッチリと合ってしまった。さらに、相当虫の居所が悪いのか、たったそれだけで此方が敵認定されてしまったようだ。


 恐らくは店から盗み出したものだろうかなり長めのナイフを振り回しながらこちらに向かってきた。

 その動きはお世辞にも荒事に慣れたようなものではなく、子供がそのへんの木の枝を拾って振り回しているような考えなしの無茶苦茶なものだ。


 とはいえ刃物は刃物だし、当たれば怪我はまぬがれない。

 残念なことに今日は1度宿に戻る予定があるため、鎧を着込まずに出てきてしまった。メイスも盾も聖人の腰袋の中だ。

 

 そもそも今日は午前中の内は、街の中の買い物の予定で行動していたため、武装をするという発想自体が出てこなかった。

 武器になる物といえば、腰の後ろに忍ばせた解体用のナイフくらいだが、正直相手の持っているナイフと大して変わらない。


 だがこのままでは、恐らく殺されはしないまでも何かしらの怪我は負わされそうなので、なんとか抵抗してみよう。

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