祝福であり誓約
ここで8歳までのグラム君は、何処に行ったのかを説明しておこう。
答えとしてグラム君として生きた8年間は、俺のなかにちゃんと生きている。
感覚的には前世で死んでから8歳までは、記憶喪失で体感約は一瞬だったが、記憶と感情は残ったと言う不思議な感じである。
まぁ転生に常識等ない。
つまり俺の中には23歳の俺と、10歳の僕の二つの感覚がある。
一人称が安定しないのはそのためである。
つまり今の俺が怖くて泣きそうなのは、10歳のグラム君の感覚に引っ張られているだけで、本当は大丈夫なのだ……やっぱり怖い。
教会についてまず案内されたのは、礼拝堂ではなく教会の地下に続く薄暗い階段だった。
さらにそこから長い地下の廊下が続いている。
下を覗くと、奥の方からは仄かな明かりを感じる。
足元も暗いので、慎重すぎるくらいのペースで階段を降りていくと、すぐに階段を降りきった。地下は通路のようになっていて、少しずつカーブしているようだ。
壁には苦悶の表情の石像がびっしりと……あまりまじまじと見るのは辞めておこう。
「あの、司祭様?」
「はい? 何ですかグラン君?」
「ここはいったい何なんですか?」
あまり視界に入れないようにしているが、着ている襤褸の皺まで彫り込まれているようだ。
まるでそこにいた人を蝋で固めたかのように瞬間が切り取られている。
「ここは罪科の回廊と呼ばれています」
「罪科の回廊?」
「女神を悲しませた愚かな先人達が堕ちる地獄を表現しています」
「それって戦争の?」
女神がキレる原因となった数多くの戦争。
その首謀者、いわゆる暴君や敵対感情を煽った武器商人たちは、地獄で永遠とも呼べる責め苦を味わっているという。
前世なら、そう言う考えもあるよねと流していただろうが、転生をしてしっかりと女神の加護を受けに来ている現状からすれば、眉唾な話と笑い飛ばすには現実感がありすぎる。
「これがその黒幕達です。財貨のために戦火を広げた愚者と、その末路を見てこれから加護によって力を得る子どもたちに『間違った使い方をするとこうなる』と、教えるためのものですよ」
「えぇ……」
教育にしても、力業が過ぎるように感じるんですが。
「これを見て泣かない子はあまりいません、それは転生者も同じくです、魂は肉体に引かれますからね。グラム君は強い子なんですね」
「正直限界です」
「うん、正直なのは良いことです」
石像とはいえ、あんなひどい情景のなかで和やかに笑う司祭様に、どん引きしながら回廊を歩ききった。
後から聞いた話だがあの石像は、実際に地獄から型どられた物の複製らしい。ファンタジーというのは何でもありだと改めて感じた。
多分その場で教えられたらジョバッてたかもしれない。
前のイベントがあまりのインパクトで、祝福の儀式はあっという間に終わってしまった。
司祭が神に祈り、光が降り注ぐ綺麗な儀式だったが、地下への階段が近いせいであまり集中出来なかった。
ともあれ無事に俺は祝福を得たのである。
脳裏に浮かんだその内容は、
召喚魔法
風魔法
使役術
内臓強化
といったものだった。
召喚魔法と使役術で俺の夢である、魔獣たちとの冒険にかなり近づいたようだ。
与えられるスキルによって、その者の適性が測れるという経験則から来る定説があるが、これは魔法使いとかの後衛職の適性と見ていいんだろうか。
だが風魔法はいいとして、内臓強化とはなんぞや?




