昼の森
そんな優秀な彼女なら、前の冒険者パーティーでも抜けるのを引き留められたのではと思ったが、パーティー自体が解散となったようだ。
原因はメンバーの高齢化。
構成は主要メンバーの7人とその子供世代2人の合計9人構成だった。
探索も順調だったが、前衛職の3人がこれ以上は後ろに通さない自信がないと言い出し、他のメンバーも特に高尚な目的もなく、純粋に職業としての冒険者だったので、主要メンバー7人が全員廃業と相成ったようだ。
幸い長年の冒険者稼業で貯金も多く、各々悠々自適なセカンドライフが開始されたようである。
ちなみにソフィアさんのお父さん、あのおっさんはそのまま故郷の村で、家と畑を手に入れて農家になるつもりのようだがその奥さん、つまりはソフィアさんのお母さんは、王都で豪遊してからおっさんと合流する予定のようだ。
価値観の違いとか、大丈夫かと心配になる。
その後も今までの経験を饒舌に語ってくれるソフィアさんをヨイショしつつ、これからの冒険者生活に役立ちそうな情報を聞き出していると、城門を抜けしばらく歩いたところで、森が見えてきた。
森は3つある城門の内の1つ、南側の門を抜けると見えてくる。
来たときには新しい街に夢中で、そこまで意識が回らなかったが、それなりに深い森のようだ。
とはいえ、街の人でも浅いところならキノコ狩りが出来る程度には、魔物の影が薄い。
ダンジョン外の魔物は、特に人間を目の敵にしているわけではないので、積極的に殺しに来たりはしない。もちろん、彼らの縄張りを犯せばその限りではないが。
なので、頻繁に人が訪れる森の浅層はほとんど人間の領域と言ってよい。
今回の目的である狼も、森の中ほどが主な生息地である。小川も奥なので、結局浅層よりは奥に進まなければいけない。
それほど目撃証言は無いが、熊もいるので注意である。徳に、今の時期は冬眠明けで気が立っている個体も多いだろう。
「じゃあ、とりあえずは小川を目指して歩いて良いわね?」
「はい、おねがいします」
「任せなさいな」
彼女は滞在中、何度か森の奥まで入っているようで小川の場所も知っていた。先導をお願いする。
「今回は、魔物狩りが目的じゃないのよね?それなら話しながら行きましょうか」
「そうですね。魔物避けにもなりますし」
熊避けの鈴のように音を出しながら歩けば、弱い魔物は寄ってこない。
来るとしたら、強い獣か魔物ということになってしまうが、どちらにせよ強い生き物は感知範囲も広いので、黙ってようがどっちにしろ来る。
少なくとも狼は寄ってくるので今回の目的とも合致する。
弱い魔物だけでも遠ざけようと音を出すのが、冒険者の森でのセオリーとなっているのだ。
「それにしても、使役術に召喚魔法ね。本当に魔物が好きなのね」
「はい、前世からの夢ですから」
「そういうピュアなところもポイント高いわ」
「やめてくださいよ……」
会話の中で謎のポイント制度が導入された。キュンと来たら高得点らしい。
気恥ずかしいからやめてほしい。そうゆうのって胸の奥に秘めておくものじゃないんですかね。
「言わなきゃ伝わらないじゃない」
「ごもっともです。やめてください」
「嫌よ、そのリアクションも楽しんでるんだから」
「降参です」
「素直なのも高得点よ」
ニヤニヤしながら弄らないでほしい。
からかわれるのは本当に心臓に悪い。フレンドリーに接するソフィアさんの距離感が分からなくて勘違いしてしまいそうだ。
恐らく彼女もプロなので探索中である以上、この会話にも何かしら意味があるんだとは思うが、もし緊張を解すためにやっているなら方法を変えてほしい。
そんなどぎまぎとした俺の心情なんて伝わるはずもなく、話題は仕事のものに移った。
「ほら、あそこがこの森の水場。依頼にあった小川ってこれのことだと思うわ」
そこには確かに小川が流れていた。川の側はゴツゴツとした岩がごろごろと転がっている。




