道すがら
先ほど依頼を受けにいった窓口に向かって、仮パーティーの申請をし、あっという間に登録が終わった。
パーティー申請といっても仮なので、ギルド側でその旨を書き留めてもらうだけだ。
しっかりとパーティーを組むのなら、簡単な書類を書いたりするらしい。
ソフィアさんと連れだって歩く。彼女はさっきからフロイトに掛かり切りだ。
例によって空気と化していたフロイトだが、彼女とパーティーを組むのは賛成のようだ。質問責めにあっていて困っているようだけど。
質問は多岐に渡り、使っている武器や立回り方、得意な距離などの戦闘に関するものから、好きな食べ物などの個人の嗜好にまで及んだ。
「あの、その辺にしといてあげてください」
「あら、ごめんなさいね。つい興味が先走っちゃって」
「イエ、オキズカイナク」
「それにしてもフロイトくんは結構流暢に喋れるのね」
「他にも見たことがあるんですか?」
未だにテイムされた他のゴブリンは見たことがない。
テイムモンスターとしての人気はあるはずだが、如何せんテイマーの人口自体が少なすぎる。
「前にチラッと見かけたテイムされたゴブリンは、殆ど単語だけだったわ」
「やっぱり個人差が大きいのかな。人の言葉が理解できるようになったのは、テイムされてからだよな?」
「ハイ、サンカニクワワッテカラデス」
スキルには謎が多い。
発現から300年経った今でも日々新しい発見がなされている。
例えば、水泳スキルを極限まで鍛えると、水中呼吸が可能になることが分かったのは3年前の話だ。
取得者が多いほどスキルの検証は進んでいて、極致にまで至ったと言われているスキルもある。
子供でも知っている英雄譚『鉄剣のジルベルク』は、剣技を極め剣術スキルの極致に至り、終生の相棒であった名も無き鉄剣で山を割ったという。
その鉄剣は国宝とされ、今も異国の宝物庫に眠っているはずだ。
フロイトの知性がそれまでと比べて跳ね上がっているのなら、使役術のスキルが関わっているはずである。
「ねぇ、次はあなたのことが知りたいわ」
「ひょえ」
考え事をしながら歩いていると、いつの間にか寄ってきていたソフィアさんが耳元で囁いた。
「やっぱり反応も可愛いわねぇ、あざといわぁ」
「……耳元で喋らないでください」
「ごめんなさい、つい隙だらけだったから」
まったく、俺の何処がかわいいんだか。
確かに背は15歳の平均より少し高いくらいで、周りに比べたら小さいかもしれないが、ガタイは良いはずだ。
顔だって決して不細工とは自称しないが、全体的に印象が薄い。目も細いので、アイドル顔とは正反対だ。
総見すると、俺はガッチリとした小柄のモブ顔ということになる。どこがかわいいんだ?
「むくれないでよ、ちょっと魔が差しただけだったの」
「それは良いんですが、かわいいを連呼されるとちょっと‥‥」
「その反応がかわいいんだけどなぁ」
こりゃダメだ。完全にこっちをからかって遊んでいるだけのようだ。
ご要望通り俺の出自や戦闘スタイル、泊まっている宿の情報まで全てを教えた。
所々で入る質問は、的を射たものばかりで話しやすかった。
逆にソフィアさんのことも教えてもらった。
彼女は物心着いた頃には、冒険者である両親とその仲間であるパーティーと共に冒険者稼業に励んでいた。
子供の時分はもちろん戦闘には加わらず、雑事を引き受けてサポートしたり、解体や武術を習ったりしていたそうだ。
10歳のスキル選定を経て、無事に戦闘中心のスキル構成になった彼女は、まず森での狩りを覚えた。
その後は15からダンジョンに入り始め、今は19歳で中級冒険者という、冒険者のエリートコースに乗っているようである。
武器は大小ある双剣を使い、メインは近接戦闘。武芸百般ではないが、ある程度器用に様々な武器を使いこなせるそうだ。
魔法技能は身体強化魔法のみで、完全な物理型と言えよう。それでも魔法が使えるだけで、かなり優秀だ。




