仮パーティー
「というわけで、仲間になってくれる人を探してたのよね」
「な、何で俺なんですか?」
正直、俺はこの冒険者ギルドでも下から数えた方が早い冒険者だ。
実家が裕福なので多少のアドバンテージがあったが、まだまだ駆け出しで経験不足だ。
俺なんかを仲間にするよりも、もっと他に強そうな冒険者はここに溢れている。
「まず1つ目は目つきね」
「目つき?」
「なんというか、嫌な奴の目つきってねっとりしてるの。体のラインを舐めるように見られるとそれだけで鳥肌が立っちゃうのよねぇ」
「そ、そうなんですか」
俺はそんなにじろじろ見てないよ?一瞬ドキリとしたが。
どうしても顔胸腰に視線が集まってしまうのは男の性なのです。
「ふふっ、そんなに不安がらなくても、嫌な思いはしていないわ。気まずそうに視線を逸らすのが可愛かったくらいだから」
「あはは……はは」
バレてるぅー。顔から火が出そうだ。
しゃーないねん。体は15歳やねん。興味があるお年頃やねん。
「2つ目はね、その装備よ」
そう言って俺の鎧に指を這わす。明らかにからかわれているのは分かっているが、体は硬直してしまった。
「手入れのしてある革鎧に、聖人の腰袋。配下のゴブリンくんもしっかり完全武装だし、資金力と生存への意識の高さが窺えるわ」
「ど、どうも」
「どうしても、初心者の内は安全はおざなりで無茶な冒険しがちだけど、君になら背中を預けられるって思ったのよ」
「ありがとうございます」
にへら、と笑ってしまった。
臆病なほどの下準備は、勇気がないとバカにされるかと思っていたので、評価されて素直に嬉しい。
「そして最後に、1番大事な理由」
「はい」
「顔が好み」
「へ?」
今の俺の顔は、まさに鳩が豆鉄砲を食らったように惚けていただろう。
「昨日見たときは、小柄な冒険者だと思っただけだったんだけど、朝見かけた顔がキリッとしてて、何だかキュンと来ちゃったのよ」
「いや、のよって」
「しょうがないじゃない?キュンと来ちゃったんだから」
「あまりに明け透けではないでしょうか」
「まどろっこしいのは嫌いよ。こっちは物心ついた時から冒険者稼業にどっぷりなんだから。即断即決が勝利の鍵よ」
「えぇ‥‥」
最初は優しげなお姉さんだと思っていたが、段々と被っていた猫が剥げてきていた。この人たぶん脳筋だ。
「とにかく、顔が好みで将来性があって、ゲスな思考がだだ漏れじゃなかったから誘ってみたのよ」
「ばっさりと言いきりましたね」
「事実だもの。それでどうする?とりあえず同行は許してくれると嬉しいんだけど」
うーん、どうしよう。確かにモンスターの仲間以外にも、パーティーメンバーは必要だと思っていたけど、まさか向こうから誘われるとは思っていなかった。
俺の中のチェリーな部分が狂喜乱舞しながら、受け入れるべきだと主張し、冷静な部分が美人局かもしれないけど、メリットも大きいから受け入れるべきだと主張している。
あれ?脳内会議だと全会一致でパーティーを組むべきだと結論づけてしまった。
こうなれば、少しでもリスクマネジメントだ。
「分かりました。同行はしてください。でも提案があります」
「ありがとう、条件はなにかしら」
「いや、提案なんですけど。1度仮パーティーを組んでみませんか、ギルドにも登録して」
「あら、そんなこと?もちろん良いわよ」
ギルドに申請して仮パーティーとなれば、万が一俺が未帰還となっても、ソフィアさんに聴取が入るだろう。
そこで俺を嵌めたことが明るみに出なくても、同じことはもう出来なくなる。
要はギルドに関係性を把握してもらって、手を出しにくいように抑止力に使おうという算段だ。




