気高き戦士 フロイト(ゴブリン)
おもむろに立ち上がったゴブリンだが、何時でも止めをさせる体制のまま止まっている俺と、後ろに控えるシルトを見て、目を瞑り膝を折った。
その瞬間、俺とゴブリンの間にしっかりと魔力のパスが繋がった。
「マイリマシタ、アルジドノ、オツカエシマス」
「お、おう」
無事にテイム出来たようだが、なんか思っていたよりゴブリンの口調が渋い。
それに語彙が多い。賢そうだ。
何故かゴブリンってお調子者のイメージがあったが、このイメージは何処から来たんだろう?
「おう、ゴブリンをテイムしたのか」
「あ、カイルさん。お疲れ様です」
「そっちのソイルゴーレム君は強いのねぇ」
「あはは、頼りすぎですかね?ネリアさんもお疲れ様です」
決着後、手早くゴブリンの魔石を抜き取り終わり、武装と周囲をチェックし終えた二人に話しかけられた。
腹をかっ捌かれたゴブリンが転がる光景は、ゾッとしないものだが、冒険者を続けるなら慣れるしかない。
「いやお前さん、メインの戦力が召喚獣の魔物使いなんだから問題ねぇよ」
カイルさんはそう言うと、ゴブリンの方を見て話しかけ始めた。
「お仲間は死んじまったぞ、生き残った気分はどうだ?」
「ハイシャハシニ、キョウシャガノコル。アタリマエダ」
「そうかよ、仲間を見捨てた卑怯者がずいぶん立派な口をきくなぁ」
「ドウトデモイエ、オレハアルジドノニシタガウ」
「なるほど、理解した。先の発言は撤回する、悪かったな」
突然ゴブリンを罵倒しだしたカイルさんを、呆然と眺めていると会話が終わった。
「あの、カイルさん?今のは何なのでしょう?」
「おっと、置いてきぼりにしたな。今のは使役の深さを測っていたんだ」
「深さですか?」
確かに、使役術は掛けたばかりだと、ふとした拍子に外れて暴れだすことがあるとは、知っているがさっきの罵倒と一体何の関係があるんだろう?
「使役をかけたばかりだとふとした拍子に周りを襲うことがあるからな、その確認だ」
「なるほど」
そのための罵倒だったのか。
確かに先の発言を受けても激昂しないのなら、こちらの制御が効いていると判断できるが、それにしても吃驚した。
「まぁテイムされた直後の魔物がこれ程の忠誠を示すのも珍しいがな」
「理由はなんとなく解りますけどね」
「ほう、と言うと?」
「ソイルも含めて俺が独力で勝ったからだと思います。彼らはそういうのを重んじますから」
蛮族的な趣向を持つ彼らにとって、違う群れに負けて従うのは当然の摂理なはずだ。
あるいは、生殺与奪すらも勝者の手中にあると信じて疑わないのだろう。それとも、流石に殺されそうになったら抵抗するのだろうか。
「なるほどねぇ、戦士の矜持か」
「多分ですけどね」
「んで、名前は決めてんのか?それとも元の名前をそのままか?」
「それは本人に聞きましょうか、どうしたい?」
そこで控えていたゴブリンが短く呟く。
「ナヲタマワリタク」
いくらなんでも今語録がスキル経由で注がれたにしては、言葉が流暢過ぎる気もするが、スキルが万能ということで呑み込んだ。
「お前の名前はフロイトだ。俺の剣と盾、そして友になってくれ」
こうして、1体というか一人目のテイムモンスターが仲間に加わったのである。




