モーニングゴブリンセット
夏季用の薄手のテントを飛び出すと既にそこで戦闘が始まっていた。
敵は大人の胸ほどの背丈、小さな角と淡い緑の肌で、ほぼ木の根っこのままの棍棒を装備した人型の魔物が5体。
雑魚モンスターの筆頭、ゴブリンさんである。
この世界のゴブリンは2つのパターンがある。
1つ目のパターンのゴブリンは原始的な道具と武器を手にして狩猟生活をおくっている。
そのまんま原始時代かよくて石器時代である。
事実、ゴブリン等の社会性と知性がある魔物は、一部分のみだが人類文明と共存している。
その多くは山林の中に自治区的な村落を作り、人間社会との交流は限定的だが、目があった瞬間殺しに来るような関係性ではない。
独自の文化が存在するが、普通に雌雄が存在するので、いわゆるちょっとエッチな現代ファンタジーのように、性的な意味でも実力的な意味でも人を襲うメリットがない。
前々から思っていたが、あの他生物の体内で子供を作るのは、種族としてどうなのだろう?寄生生物でもなければ到底無理に思えるのだが。
よって、この世界のオークやゴブリンに姫騎士特効は付いていない。いないのだ。
元々は、お互いに見つけた瞬間に殺し合いに発展していたが、何百年か前から共存共栄の方向にシフトして来ているらしい。
今回のゴブリンはもうもう1つのパターンのようだ。
つまりは共存を望まない蛮族スタイルである。
今回の集団は、流れ者のゴブリンのようだ。近くに彼らの集落があるとすれば、もう少し装備が整うはずである。
このタイプのゴブリンは力と仲間こそが全てであり、自らよりも強いものには従うが、勝てる敵と判断すれば全力で殺しにくる。
力こそパワー。部族単位で脳筋なのである。
とはいえこの道10年超のベテラン相手ではいくらなんでも分が悪い。
棍棒で殴りかかる側から切り捨てられ、魔法がぶち当たっていく。あっという間に4体のゴブリンが沈んだ。
残りの1体がこちらに来る。カイルさん達は動かず見守るようだ。
まともな実戦は初だ、シルトを呼び出す。
さぁ掛かってこい!
「シルト、迎撃するよ」
そう声を出した直後、ゴブリンがぶっ飛んでいる、なんか既視感がある。
まるでシルトとの初組手の再現のようにゴブリン君が吹っ飛ばされた。
ゴブリンは痛みで起き上がれないようだ。
すかさず間合いを詰め、メイスを振り上げて叫ぶ。
「俺に従うか、死ぬか選べ!」
人語を理解するゴブリンは少なく、恐らく通じないだろうが行動で意思は伝わるだろう。
使役術によって魔力のパスを繋げ、こちらの意思を伝達する。
殺すのを躊躇った訳ではない。
この世界に生まれて15年、殺せないやつは殺される世界だと学んだつもりだ。そんな話は山ほど聞いてきた。
降伏の意思表示、完全な戦闘不能、一定の信頼のどれかが使役術の発動キーなのだ。
ゴブリンは初心者がテイムするのに適している。
テイムされた魔物は使役術スキルによって人語を理解し、命令を聞くようになるがゴブリンはさらに会話が可能になる。まぁいきなり流暢にとはいかないが。
さらに、ゴブリン等の人型魔物は、装備によって戦力が変わるため、ある程度の資金があれば強化がしやすい。
それにもう1つ理由が有るがここではスルーしよう。
さて、ゴブリンの返答や如何に?
テイムの仕様変更がありました。
テイム完了後に魔力と意思のパスが繋がるのではなく、テイムを試みた段階で相手に魔力パスを繋ぎ、言葉を介さない降伏と服従の説得が出来るように変更されました。




