12「神々の諧謔」その3
第3回 全体会議。
今回は食堂で、全員カップラーメンをすすりながらの進行。
俺が前回ここで注文したカップ焼きそばのコトを聞かれたので、あれこれ説明したら、
みんながカップ麺に興味を持ったからだ。
正直、俺はご飯物が食いたかったのだが、みんなにインスタント食わせて俺だけ別のというのも何だしな。
カップ焼きそばの連投じゃ無いだけ良しとするか…。
「凄いですね。本当に3分…いえ、3分位で出来てしまいました…。」
この世界じゃ3分計る方法が無いからな。だから、俺の長年の勘でやった。
「本当に湯を注ぐだけで出来るとはのう。」
「感動しちゃったわ。アタシ、この戦いが終わったら、これを製品化するわ。」
「それ、フラグだからヤメとけ。」(汗)
パトルは既に醤油味、シーフード、カレーを制覇。今は肉具材の沢山入ったヤツに手を付けている。
「このにく、おいしーっすけど、なんのにくっすかねー?なぞっすねー。」
「うん。パトル、それ、限り無く正解だぞ。」
さて、本題だ。
どうすれば、あの消し神にギャフンと言わせられるのか。
無茶苦茶に難しい問題だ。
「兎に角、こっちの攻撃は何1つ届かない。そして向こうは何でもアリだ。」
「悔しいのう。ケンカにすらならぬわ。」
「エメスを鹵獲されたのも痛いのです。」
「オイラ、もっとつよくなるっす。」
「気持ちは分かるけど、それが消し神の前では意味を持たないのよ。」
ワイズィの言う通りだ。
パトルとマーシャの同時攻撃に対し、消し神は2人を離れた場所へ転移させて無効化した。
もうこれだけで、俺達は永遠に勝てないのだ。
何度突っ込んで行っても、その度に世界の果てまで飛ばされる。
ぶっちゃけ、何年、何十年。俺達の寿命が尽きるまで、繰り返し繰り返し。
消し神は自分から攻撃しなくても、ただチョイと俺達を飛ばすだけで、いともたやすく勝ててしまうのだから。
「それは、寿命の前に心が折れそうなのです…。」
「…精神攻撃は基本。」
「つまり、消し神に対向するには、武器でも魔法でも駄目だというコトですよね。」
「癪だけど、ソコは決定事項だろうな。」
「また我々のニセモノを作られて、同士討ちとかも可能であろうしのう。」
「魔眼以外じゃ見分け付かないからなぁ…。持ってるモノまで全部同じだったもんな。プリスが持ってる100円玉とか。」
「あ、そうでしたね…。」
プリスが俺にもらった100円玉を出す。微笑むプリスたん。見つめる俺。
―ん?何?この横から押し寄せて来る様な、妙な圧迫感のある空気…。
「かねがね思っておったのじゃが…、プリスだけズルいのでは無いかのう?」
「そうっすよねー。オイラもほしいっす。」
「ケイン殿。私達は同志なのです。」
「ハーレムへの愛情は、平等であるべきよねー。」
「…ずるい。」
5人はテーブルを叩いて猛アピールし出した。
「「「「「ずーるーいー!ずーるーいー!」」」」」
ええい!お前ら子供か!!大人気無いぞ!!
―子供だったな…。(汗)
こうなると、もう俺が折れるしか選択肢が無いのがツライ。
プリスたんも顔を真赤にして俯いてしまってるし。
俺は内ポケットから小袋を取り出す。
転移した世界じゃ使えない『昭和』の年号の硬貨。捨てるワケにもいかず別けておいたのだ。
人数分あったかな…。
パトルには1円玉。デヴィルラには5円玉。マーシャには10円玉。
アスミスには50円玉。そしてワイズィには500円玉だ。
「念のため言っとくけど、コレはお金として使えない以上、金額での上下関係は無いからな。」
「分かっておる、分かっておる。」
「ダーリン、500円玉って銀色だったかしら?」
「俺の世界の昔の500円玉だ。今、みんなが知ってる金色のヤツは改訂版だ。」
「そうなの。―あ、厚みの部分に数字が刻まれてるのね。これはコレで良く出来ているわ。」
「これは一生のお守りになるのです。」
「ボスー!ありがとーっす!」
「…この10円玉、ギザギザ…。」
おぉ、マーシャにあげたのは『ギザ十』だったか。(笑)
第4回 全体会議。
前回は『消し神には武器も魔法も通じない』と結論が出たトコロで終わってしまった。
今回は横道にそれるコトなく進めたい。
「ところで、1つ大きな疑問があるのよ。
何故、消し神はあの何でもアリの『神の力』でダーリンを殺さないのかしら?
その方が手っ取り早いハズでしょ?」
ワイズィに言われて、俺もみんなも「あぁ!」と気付いた。
そう言われればその通りだ。
魔導巨人やキマイラ、ケルベロスを仕向けたり、大嵐を見舞ったり、魔王国で俺を指名手配にしたり、
やるコトがいちいち周りくどいんだよな。神なら指を1つ鳴らすだけで、俺なんか簡単に消せるだろうに。
「消し神が、ケインさんとこの世界を全て消すと言った時、
スレイ…ロリ神様が『それは違反行為だ』と指摘されてましたよね…。」
「うむ。しかしながら、消し神は『それには当たらぬ』と言った。
そこで何をしたかと言えば、エメスを使役させたワケじゃな。」
「―つまり、消し神はエメスを使わないとダーリンを殺せなかった、ってコトね。」
そこでプリスがポン!と手を打った。 わぁ、これ見るの久し振りだ。
「分かりました!神々は、自らの手では人間達を殺せない。
―いえ、『故意に殺してはいけない規則になっている』のでは!?」
「それが正解でしょうね。」
賢さ2トップのプリスとワイズィ。たちまち神々の秘密に肉薄してしまった。
そういうコトだったのか。
「成る程です。消し神がイカクラーケンやツインモンスターを出して来たのも、
あくまで『ケイン殿の死ぬ確率が高い状況を作るコトしか出来ない』と考えれば、納得が行くのです。」
「だから、かわりにエメスにたたかわせたっすか?ひきょうっすよ、それ!!」
「…屋上へ行こうぜ。マーシャ、久しぶりに…キレちまったよ…。屋上、行けないけど。」
何でもアリに思えた消し神にも、思わぬアキレス腱があった。
これが奴に一矢報いる…いや、大逆転に繋がるだろうか…?
第5回 全体会議。
「やはり魔剣が鍵となるであろうな。」
「ですよね。神といえどもマナが含まれているハズです。魔剣なら斬るコトも出来るかと。」
「神も斬れる剣…ね。―ね、アスミス。あんな凄い魔剣、どうやって作ったの?」
「あれは…、魔導都市からの行商人から二束三文で買ったガラクタが素材なのです。」
魔導都市!?
「見たコトも無い機械ばかりだったのです。行商人は珍しさから高く売れると意気込んだモノの、
魔道具でも無い、どう使うかも判らない、そもそも動かない、というポンコツばかりで全く売れなかったそうなのです。
私も興味があったので買ってはみましたが、結局分からず仕舞いで、全て鋳潰してしまったのです。」
で、それが魔剣になったと。
「魔導巨人戦のお話を聞かされて、今なら判るのです。アレはケイン殿の元いた世界の物品だったのです。
マナの全く含まれていない物質だからこそ、マナ構成を破断させ、霧散させる効果が生じたのだと思うのです。」
魔導巨人が使った消滅の光。あれの効果が剣に宿った。みたいなモノか。
「その後、ケイン殿に出会えると判っていたなら、幾つか残しておくべきだったのです。
未知の世界にあった機械の説明を受けられるチャンスを逃してしまったです。」
「まぁ、そのお陰で、消し神に対抗出来る唯一の武器が生まれたんだ。感謝してるよ。」
「だ、旦那様に尽くすのは妻の役目であり、最大の幸せ…なのです。」
うん、可愛い。
―ハッ!?他の視線が痛い!?
「勿論、みんなにも感謝してるぞ!!」と、すかさずフォローを入れておいた。(汗)
そうして7人で寝食を共にするコト、早10回目。
時間が判らないので、紙に記した寝起きのチェック数だけが頼りだ。
「えーっと…、」
「はい、ケインさん。」
「お、ありがと。」
食卓で俺が何か言う前に、塩を差し出してくれるプリスたん。そしてその判断は合っている。
「ごちそうさまでした。」
「主よ。どうぞなのじゃ。」
「おう、ありがと。」
何も言わなくても、飲みたいと思った時に飲みたいモノを出してくれる。ドンピシャだ。
「アスミスー。オイラの…、」
「昨日直したので、もう出来ているのです。」
「ありがとっすー!」
「…ワイズィ。」
「スピード上げる訓練法?」
「…うん。」
全員が全員こんな調子で、相互理解がハンパ無く高まっている。
何か、脳のシナプスがみんな繋がってしまったんじゃないか?と、勘違いしそうな程だ。
1人がみんなのコトを考えている。みんなが1人のコトを考えている。
客観的に見たら、ちょっと気味悪いレベルにまでなっているかも知れない。
でも、これが俺達の神屋敷での日常だ。神様効果があるのかもな。
―と、突然、俺の目の前が暗くなる。
果てし無く暗い世界。何も無い、寂しく寒々とした光景。
そして見えた、消し神の姿。
「―ハッ!!」
俺の視界は元に戻る。…神屋敷だ。
「どうしました?ケインさん!?」
みんなが心配して駆け付ける。
今見た光景がどこなのかは判らない。―でも、あれが何だったのかは、今の俺にはハッキリと判る。
「―エメス…、エメスの見ているモノが見えた。」
「え?」
俺は今見たモノをみんなに説明する。
そして、理由は判らないが、あれがエメスが見ていた光景だという確証も。
「―有り得るわね。」
「ワイズィ、何故そう思うです?」
「エメスの眼には、複製したダーリンの眼が入ってるのよ。同じモノがマナを通じて見えたのかも。」
「…だとしたら、暗くて寂しいトコロって…?」
「消し神がエメスを、この神屋敷の様な『神』の空間に確保しておるのやも知れぬな。」
「こっちは、こんなにあかるくてあったかいっすよ?エメスがかわいそーっす。」
あぁ、エメスも絶対、助けてあげないとな。
それから俺は時折、エメスと視覚を共有する時間が出来た。だが、光景はいつも同じだ。
あの虚無な場所から早く出してやりたい。
「では、第15回 全体会議を始めたいと思います。」
神屋敷で寝食を共にして18回目。
会議の回数が一致していないのは、これまで何回か会議をしないレクリェーションの日にしたからだ。
こんな時に呑気な、とか思われそうだが、こんな時だからこそ気分転換も必要だからな。
「ま、大体、煮詰まって来たからのう。もうさほどアレコレ言うコトも無いのじゃが。」
「そうっすねー。」
「後は準備をして、実行あるのみなのです。」
「人事を尽くして天命を待つ、といったトコロね。」
「…いよいよ明日が対決本番ですよ。 むっちゃドキドキしてきた。」
うん、マーシャ、忘れ物無い様にな。(汗)
「みんな、聞いてくれ。」
全員が俺を見る。
「俺は最初から消し神に対して、魔剣を使おうと思う。」
みんなは無言で頷く。
「ご飯食べて、お風呂に入って、シッカリ寝て、起きたら出発だ。」
「はい!」
「りょーかいっす!」
「あい、分かった。」
「…じーあいじー。」
「了解なのです。」
「仰せのままに、ダーリン。」
起きて身支度を整える。
みんな変に緊張した様子は無い。至って自然体だ。
軽く朝食に当たる食事を摂って、いよいよ出発。
「スレイ…ロリ神様。準備は出来ました!」
俺は、手にしたスレイの冒険者登録プレートに向かって言う。
プレートは柔らかい光を放つ。
何も言われないのに、スゥッと頭の中に理解が降りて来る。みんなも同じらしい。
全員で顔を見合わせ頷く。
2階に上がる。ギルド喫茶室を横切って、廊下の突き当り。
―そこには、今まで無かった『屋上へ上がる階段』が出現していた。
「ここだな。」
「いよいよですね。」
「むしゃぶるいしてくるっす!」
「…今日も一日、頑張るぞい。」
俺達は階段を登る。
白い光が俺達を包み、やがてその光が収まると…、
そこは、一面の平原だった。




