04「奴隷船 波高し」その1
※前回のあらすじ
拾ったゴーレムが無事に起動。エメスと名付ける。
ハイテンションの奴隷を買う。スレイと名付ける。
―どうしよう。もう書くコトが無い。(汗)
町を歩く俺への視線が実に微妙だ。
驚愕の視線、感服の視線、疑惑の視線、嫉妬の視線、その他色々。
圧を感じる。何なんだコレ。
「仕方無いのです。引き連れてるその内容が濃過ぎるのです。」
義手の可憐な幼女メイドに、絶世の爆乳美幼女奴隷、そしてマイスター持ちのドワーフ幼女。
ある者はその美しさに驚き、またある者はその巨大なおっぱいを凝視する。
そうかと思えば俺を変態だと決めて掛かる者、そして『リア充爆発しろ!』と呪詛の念を送ってくる者。
スレイに結構良い服を着せたのも、注目度を高める一因になってる。
ボロ布の奴隷服じゃ俺の気がいたたまれないので、薄手だが仕立ての良いモノを着せたのだ。
ちなみに、薄手で肌色成分が多いのは、スレイが頑としてその一線を譲らなかったからだ。
「♥セクシーじゃ無い奴隷なんて、あいでんててーの崩壊ですよぉー!」
―と、脳ミソピンクな主張で、古代ギリシアやローマでよくあったキトン風の一枚布を選んだのだ。
それも布の端は金地で縫い重ねられ、刺繍も入っており、貴族が着けてもおかしくない一品で、
スレイの天然の美しさにとても似合っている。足は編み上げサンダルで、これも定番だ。
かなり良い生地なので高かっただろうと思いきや、アスミス云わく
「それが、精算時にワケも無く店長に半額にされたのです。」
不思議なコトもあるモンだ。実は在庫整理品だったりしたのかな?まぁ、儲かったのは良いコトだ。
ただ、スレイが着けている奴隷の証である首輪がそのままなので、この服装と非常にミスマッチ感が大きい。
「♥首輪を取ったら、奴隷としてのぱーそなりてーが無くなりますぅー!」
―などと意味不明な供述を繰り返しており、外せるのにわざわざそのままを選んだのだ。
つーか、主人の意見ガン無視の奴隷とか、ちょっと意味分かんないですね。
エメスの義手の時と同じ様に、奴隷にこれだけの服を与えているというのが『慈悲』か、はたまた『酔狂』と映るのか、
終始、俺の腕に抱き付いてその爆乳を擦り寄せる姿が『羨望』とか『憎悪』を呼ぶのか、
人間のあらゆる感情が視線となって俺に突き刺さってる、なう。なのだ。
大体キトンは布を巻いただけなので、本来は身体のラインを隠すゆったりした服のハズなのに、
スレイが着ると何故かアニメの様な露骨な、パンパンに膨らんだ『乳袋』が出来てしまっている。
丈も短いのでパンモロしそうなのだが、これも何故か『はいてない』化している。不思議だ。(汗)
いや、コイツのコトだから、本当に履いてないかも知れない。むしろその可能性の方が大きい気がする。
そうしてやってきたのが奴隷船のチケット売り場。
もちろん非合法で、普通の酒場にカモフラージュされた場所だ。
以前はどれだけ町を回っても、こういう奴隷船に関する手掛かりは全く掴めなかったのだが、
スレイを仲間にしてからと言うもの、どういうワケかスイスイと作業的にコトが進んで、
あっという間にこの場所が判ったのだ。
チケットを売る男に尋ねると、男は丁寧口調で返してくる。
「奴隷が1人に、お連れ様が3人ですね。締めて100万エンになります。」
「たっか!!!!」
ちょっとそりゃボッタクリ過ぎないか!?
アスミスも憤慨する。
「人の足元見やがってるのです!100万もあればミスリルの鎧が買えるのです!」
アングラな商売だから、こういう世界じゃ言い値が全てだ。『嫌なら乗るな』で終わってしまう。
俺達の今の所持金じゃ全然足りない。
―と、スレイが俺の服の袖を引っ張る。
「♥ケイン様ぁー!面白そうなモノがありますぅー!」
言われて彼女が指差す方向を見ると、店の片隅に何かワイワイと盛り上がってる1コーナーがある。
何だありゃ?
「アレはクジ引きですよ。お客様も運試しに如何ですかな?」
そこにはデパートの福引きなんかで良く見る、ドラムにハンドルが付いててガラガラ回すヤツがある。
あれから出て来た玉の色で何等賞か判る、ってヤツか。
クジかぁ。俺、クジ運悪いんだよなぁ。ティッシュしかもらったコト無いからなぁ…。
そんな渋る俺の手を牽いて、スレイはクジ引きコーナーに向かって行く。
「さぁさぁ!当たれば豪華な景品が待ってるぜ!」
張り上げる声も景気良く、客寄せしているのは、マッチョで隻眼でハゲの男…って、腕相撲の時のアイツか!!
横を見れば、あのヒョロガリ君も一緒だ。こいつら、こんなトコロでも仕事してたのか。
「―ゲッ!!テメエは!!」
ハゲ男も俺に気付く。
「この野郎!ここで会ったが百年目だ!!」
ハゲ男は福引きを置いた台を乗り越えんばかりの勢いで、身を乗り出して来る。
と、そこにスレイが空気を読まずに割って入る。
「♥あのぉー、クジ引きしたいんですけどぉー。」
「ちょっ、スレイ!お前、この状況分かってんのか?」
「あぁ?何だこのアマ……はうっ!!!♥」
ハゲ男の様子がおかしい。スレイを見て狼狽している。
「お、お嬢ちゃんは、な、何なのかなぁ~?♥」
「♥スレイはぁ、ケイン様の奴隷なのですぅー。」
「な、何だと!?こんな上玉を奴隷にだと!?」
周囲もその声でスレイに注目し、次の瞬間にザワめき出す。
「♥いぇーい!キラッ☆彡」
乳揺れするあざといポーズを取るスレイに、周りから歓声が湧いて来る。
―どうやら爆乳美幼女のスレイを見て、男共の本能が目覚めたらしい。(汗)
ハゲ男は歯ぎしりしながら俺に言う。
「畜生!!この前はドワーフ幼女だけだったのに、今度はメイド幼女と奴隷幼女まで連れてるだと!?
クッソ!ふざけんな!!何でテメェばっかり可愛い幼女に囲まれてんだよ!!不公平だろうが!!」
―純然たる嫉妬でした。
コイツ、もしかして…ロリコンだったのか?ちょっと半ベソ入ってるし。
そこにアスミスが追撃を掛ける。
「ケイン殿と貴方では男の格が違うのです。女という生き物は、良い男に集まるモノなのです。」
「ちっくしょぉおおおおおおおおおおーーーー!!!」
ハゲ男は、完全体になれないセ◯みたいな絶叫をして悔しがる。
そして、尚も全く空気を読まないスレイが呑気に質問する。
「♥コレってぇー、何が当たるんですぅー?」
「ほら、ここに書いてあるだろ?1回1000エンで4等から特賞まで玉の色別に色々あるよ。」
ヒョロガリ君が奥のパネルを指して答える。
―なになに…、
4等賞(赤):ティッシュ ―どこの世界でも末等はティッシュなのか。(汗)
3等賞(緑):薬草セット これは無難だな。1000エンの元が取れるかは微妙だが。
2等賞(黄):エリクサー 俺がコンビニにも置いたヤツだ。10万エン相当だから、これはアタリだな。
1等賞(青):例の筆箱 ん?筆箱…?
「これは我がドワーフ族の村の名産品なのです。王族や貴族向けにオリハルコンで作った
『ゾウエレファントが踏んでも壊れない』と、評判の逸品なのです。
有名な冒険者がコレを懐に入れていたお陰で、暗殺者の矢を防ぐコトが出来たとかで、
それからゲンを担いで、お守り代わりにする者達が増えたらしいのです。」
それで『例の筆箱』なのか。
「モノがオリハルコンなだけに大量生産は出来ませんが、こんな細工が可能なのは我々ドワーフだけというコトで
作れば作っただけ売れてくれる、安定した商品の1つなのです。」
「そうなのか。」
「いざとなればオリハルコンの地金としても売れるので、このクジでは恐らく売却狙いなのです。」
オリハルコンは少量でも良い値するからな。ヘソクリという意味でもお守りになるんだろうな。
―さて、そうなると最後の特賞は何だ?
特賞(金):奴隷船の乗船無料優待券 4名様まで一等客室に宿泊の上、飲食代も一切無料!!
うおっ!?全部タダ!?マジで!?
「先程、乗船代で100万エンと言われましたが、この特賞の内容だと200万エンは下らないと思われるのです。」
「成る程、みんなが躍起になってるワケだ。」
でもまぁ、恐らくこの特賞は『当たらない』。
アタリの玉は抜かれていてハズレばかりというのが、こういうクジの常套手段だ。
夜店のクジを全部買い占めてみて、アタリが1本も引けなかった動画とかあったよな。
「♥ケイン様ぁー、ヤリましょうよぉー。」
「駄目駄目。こういうのは当たらないんだって。」
「♥えー、ヤリたい!ヤリたい!今日は一発で当たる日だと思うんですぅー!ヤリましょー!」
「お前が言うと、すっっっっっごく意味深に聞こえるからヤメろ!!」
俺の腕にしがみついて、胸を押し当てながら身体をくねらせお願いする爆乳美幼女。
見ろ!あの青年なんて可哀想に前屈みになっちゃってるじゃないか。―あ、何人かトイレに駆け込みやがった。
「分かったよ。1回だけな。」
「♥わーい!」
これ以上、ピンクの猥褻物を稼働させておくワケにも行かない。俺は折れるコトにした。
スレイに1000エンを渡すと、ニコニコしてハゲ男のトコロに持っていく。
「♥はい!」
「あ、あぁ、毎度。♥ …だけど、コイツは奴隷に回す権利は無ぇんだ。」
「♥えー!!」
「悪ぃけど、そういう決まりでな。」
「♥ぶーぶー!差別ですぅー!」
「いや、まぁ、奴隷なんだし、差別なんだけどな。…参ったな。」
スレイを見た時から鼻の下を伸ばしてたハゲ男。なかなか彼女を無碍に出来ないでいる様だ。
「♥じゃあじゃあー、ケイン様と一緒に回すならどーですかぁー?」
「いや、だから…ウッ!?♥」
スレイが超あざとく前屈みで鎖骨をアピールしている。
むぎゅっと左右の腕で押さえられた豊かな2つの巨山は、それはそれは見事なY字の谷間を形成し、
更にそこに収まり切れず、腕から溢れてこぼれ落ちん状態で均衡を保っている。
「♥ねー、いいでしょー?」
「わ、分かったよ。仕方無ぇなぁ…デヘヘヘヘ。♥」
とうとう色気でねじ伏せやがったよ、コイツ!!(汗)
分かってやってんのか、天然なのか…。どちらにしても恐ろしいな。
「最早、スレイには呆れるばかりなのです…。」
「―技の情報を取得しましタ。但シ、この技は本体では容量不足によリ、使用不可能と判断しまス。」
いやエメス、こんな色ボケの技とかラーニングしなくても良いから!!むしろ消去しろ!!
つーか、容量不足って乳の容量かよ!?
「♥ホラホラ!ケイン様ぁー!早くぅー!早く来てぇー!」
「だーかーらー!その誤解を招く言い方はヤメろ!!」
俺は小走りでスレイのトコロに行く。放っとくとどうなるか分からん。さっさと回して終わらせよう。
福引き機のハンドルを俺が握ると、一緒にスレイが柔らかい手を重ねてくる。
「♥わぁー、固くて太いですねぇー。」
「黙れ!!」(汗)
ほら、回すぞ。ガラガラガラガラガラガラ……
―コロリ。
玉が1個出て来る。
その瞬間、場の空気が固まる。俺もアスミスも、ハゲ男もヒョロガリ君も、周りの客も全員が全員。
出た玉を、スレイが手に取って高く掲げる。
「♥やったぁーーーー!!!金色ですぅーーーー!!!」
うぉおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーー!!!!!!!
ドッと湧く野次馬達。スレイが俺に抱き付いて来るが、俺はいまだに何が起こったか理解が出来ない。
―え?特賞を当てちゃったの?言ってた通り本当に一発で?マジ???
いや、俺よりも混乱してるヤツがいた。 目の前のハゲ男だ。
「ば、馬鹿な!!何で特賞が出るんだ!?その玉はついさっき抜いたハズだ!!」
あー、やっぱりそうでしたかー。最初からそういう仕込みだったのねー。
ん?じゃあ何故、抜いてあったハズの特賞が当たったんだ!?
ハゲ男は慌ててポケットに手を入れ、何かを取り出す。
―それは末等の赤い玉だった。
目を見開き、驚愕の表情になるハゲ男。
「な、何で…!?金だった玉が赤になってやがる…!?
まさか、入れ間違え?―いや、そんなコトは無ぇ!!何度も確認したじゃねぇか!!」
ヒョロガリ君も声を荒らげて仰天する。
「こんな偶然…いや、奇跡など…!!それは余りに有り得ません!!
現実的ではありません!論理的ではありません!破綻しています!カタストロフです!!」
どうやら何か手違いが起きて、入るハズの無い特賞の玉が偶然に福引き機に入っていたらしい。
そして偶然に偶然が重なり、スレイがそれを1発で引き当ててしまった、というコト…なのか?
一応の説明が付くが、こうして目の前で見てもまだ信じられない。
スレイは更にテンションにブーストを掛けて、周りに触れ散らかす。
「♥みなさーん!これがケイン様の金のタマでぇーす!」
「おぉ!!あの男、本当に金のタマを大勢の見ている前でポロリと出しやがった!!」
「まだ若く見えるのに、何て立派な金のタマを出したんだ!!」
「私もあんな金のタマ見せられたら、胸がキュンキュンしちゃうわ!!」
おい!待てやぁあああ!!何だその全年齢向けギリギリを攻める様なコメント一覧は!?
「わ、私にも見せて欲しいのです!」
「♥どーぞぉー。」
「あぁ、これがケイン殿の金のタマ…。何てズッシリとした感触なのです!!
間違い無く、これは私のターニングポイントになる出来事なのです!!」
おいコラ!アスミス!!お前まで何やってんだよ!!こんなコトで人生変えるな!!ウットリと玉に頬擦りをするな!!
「オーナーの金のタマ。略するト、オナキンタ…」
「エメス!シャラップ!!」
「畏まりましタ。」
い、今のは危なかったぞ!!エメスにこんな学習はさせなくて良い!!
「ケイン殿!ご利益がある様に、このケイン殿の金のタマをずっと握っていたいのです!!」
「♥ケイン様ぁー!金のタマ最高ですぅー!!」
お前ら、万が一これがアニメ化したら、お前達担当の声優さんが可哀想で申し訳無いぞ!?