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【書籍化】ヴェルシュタイン公爵の再誕〜オジサマとか聞いてない。〜【Web版】  作者: 藤 都斗


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 いつの間にか俯いていた顔を上げて、息を呑む。


 「何か知っているのか」


 いつもの癖でか、静かに、それでいて焦りを出さないように気を付けながら問い掛けると、耳元からは何処か馬鹿にしたような苦笑を含んだ声が聞こえた。


 『妾をなんだと思うておる、水を司る精霊の王ぞ。

 水は砂漠でもなければどこにでも存在するもの。

 知らぬ事などほぼ存在せぬわ』


 堂々たる宣言に、なんか地味にイラッとしてしまったけど仕方ないと思う。

 だって、知らない事が無いなら隣国がやってた事を知ってて放置してた事になるやん。


 端的に言っても最低だよ。


 思いっきりツッコミを入れたい衝動に駆られたけど、指摘したら逆ギレしそうなので放置しようと思います。

 こういう人に色々言っても、多分良い事無いだろうし。


 頑張って切り替えながら、静か過ぎる凍り付いた空気の中、声を届ける為にまた魔力を乗せた声を発した。


 「......何が対価だ?」


 すると耳元から聞こえたのは、いたずらの好きな少女のような、どこか含みがあるけど魅力のある、なんとも表現の難しい妖艶な声だった。


 『そうさの、あの国に報復するのなら、妾にも一口噛ませて貰えるか』


 くすくす、という笑い声が聞こえそうな、楽しそうな声での答えに、なんだかげんなりしてしまって溜息が漏れそうだ。


 なんなのこの人。

 あ、人じゃないんだっけ、なら仕方ないのかな。

 考えるの面倒臭いからもういいや。


 「......世界の秩序を担っているのでは?」

 『そうとも、担っておる。

 だがの、精霊の存在を冒涜し、水を穢した奴らを放置など出来ぬわ』


 苛立ちの篭った、それでいてどこか狂気の混じった声は、どう聞いても何故か楽しそうに聞こえた。

 それはきっと、報復を楽しみに思っているからなのだろう。


 そんな彼女の感情に水を差すのは無粋かもしれないが、ひとつ良いかな?


 「放置出来ない、か、...今まで何もしないままでいたのに?」

 『ふん、せっかく忘れていた所を思い出させたのはお主だろう、責任を取るのだな』


 「なるほど」


 冷静な顔で、納得したように軽く頷いておく。


 言っても意味は無いんだろうけどさ、私のせいなのこれ?

 え?私悪くなくない?

 なんで私のせい?、酷くない?

 そういうのって責任転嫁っていうんじゃないっけ。


 私が何したって言うんだよ。


 脳内でひたすらにそんな愚痴を吐きながら、それを押し隠すためにひとつ息を吐く。


 ここは、こんなモンなんだと無理矢理納得しておくべきだろう。


 オーギュストさんの知識でも精霊は気紛れ、ってあるみたいだし、陰謀的なものを知っても、結果として忘れていたから今がある。


 あれかな、何かしようとして、皆で相談してる間に話が脱線して、忘れたとかそういう事かな。

 あの精霊王達ならありそうだ。


 なんか、頭悪そうなイメージしかないから、仕方ないと思う。

 腹立つけど無視しとこうか、頑張れ私。


 「それで、隣国の目的を知っているのか」


 『......ふむ、ちと待ちやれ、今そちらへ行こう』

 「......何故だ?」

 『どこから漏れ、誰が聞いているか分からぬと言えば、お主にも理解出来よう?』


 めっちゃ上から目線だけど、そう言われたら、確かにそうだった。

 盗聴が出来るのか、っていうのは分からないけど、出来るやつが居ないとも限らない。

 聞かれたら困る話なら尚更そういう自衛は必要だ。



 「分かった」


 この部屋に誰かを入れる事に忌避感があったけど、それ以上に知りたい欲のほうが強かったから、仕方ない。

 苦しいけど、それでも、無理矢理に納得して、私はまたひとつ頷いた。

















 ルナミリア王国の最南に位置する港町、サウスゲートには、国教であるルナミリア教の他にも、土着信仰として、精霊を祀った宗教が存在する。

 港町であるがゆえに、水の精霊を中心に全ての精霊を讃え、感謝する為に造られたその信仰は、ルナミリア教の絶対的で盲目的なそれとは異なっていた。

 例えるなら、道端のお地蔵様を祀ったような、素朴なものだ。


 だからこそ、人々の根幹に深く根付き、身近な信仰として認識されている。

 ルナミリア教が地球日本でいう仏教なら、精霊信仰は八百万の神信仰だろうか。

 そして、その精霊信仰の象徴として国のあちこちには教会や礼拝堂がひっそりと存在している。

 その中のひとつとして、サウスゲートにも、小さな教会が建設されていた。


 かつて年老いた老婆が管理していたその教会は、現在、その老婆の孫娘姉妹により運営されている。


 息子夫婦の忘れ形見である姉妹を育てる為に働き続けた老婆は、無理が祟ってか二年程前にとうとう動く事が困難になった。

 故に、姉妹は小さな畑を耕して自給自足の生活をしながら、教会を運営していた。

 運営といっても、せいぜい精霊に感謝の祈りを捧げる程度なので、一般家庭と大差のない暮らしである。


 教会と言うより、石碑が有るだけの集会場のような造りのその場所は、近所の住人の寄合所であり、コミュニケーションの場であった。

 街の中心部からは離れているが、憩いの場であるその教会は、12年前に両親を亡くした姉妹にとって、本当の家と変わりない。


 妹は12才。

 そして姉は17才という歳若さではあるが、貧しいながらも周りの人々に支えられ、妹と二人で必死に教会を運営していた。

 彼女達が生まれ育った暖かいその場所は、彼女達にとっては大切で、そしてかけがえのないものだった。


 赤子であったが故に両親の愛を知らずに育った妹は、祖母と姉の愛を受け、活発に育った。

 姉は大人しく、そして優しい娘に成長した。

 両親の居ない家庭が多々存在するこの国では、比較的、一般的な家庭と言えただろう。


 唯一違うのは、誰も認識出来ない筈の精霊の声を、彼女達は聞く事が出来る、という点だけかもしれない。

 それ以外は、貴族家庭とは違う、健康的な美少女と呼べる程度には見目の良い姉妹、というだけの、至って平凡な家庭である。


 姉の名はアリエッタ、妹の名はベルベット。

 栗毛色の髪に、同色の瞳。

 姉は三つ編みお下げ髪、妹はツインテール。

 瞳を含め、光の加減で緑色にも見えるその不思議な色彩は、整った顔を引き立てているように見えた。


 髪型と年齢、そして性格以外はよく似た姉妹。

 

 彼女達姉妹は仲が良く、そして、その愛くるしさは近所でも評判だ。


 だからこそ彼女達は、悪に目を付けられやすかった。


 「ですから、この街の皆様に当教会への避難を呼び掛けているんです」


 優しそうに、どこか困ったような笑顔を浮かべた神父が、その顔面に見合った万人を落ち着かせるような声音で語っている。

 神父の傍らには、妹と同じ年頃の少年が、どこか不機嫌そうに姉を見つめていた。


 「...そうですか、...お話は分かりました、ですが、此処を空ける訳にはいきません」


 家長であるがゆえに責任感の強い姉は、キッパリと言い放った。


 「何故ですか、貴方達は美しい。

 いつ領主に目を付けられるか分かりませんよ」

 「そうは仰いますが、一体領主様がそこまで言われる程の何をしたというのです?

 昨日だって、何もせずに通り過ぎたと聞きました」


 「貴方は若い、だからこそまだ理解出来ていないかもしれません。

 ですが、あの領主は私達領民を蔑ろにしている。

 奴が圧政を強いているのは、働けど働けど豊かにならない現状と、貧困層に堕ちた者達の死者の数から考えても、火を見るより明らかでしょう」


 切々と語る神父の傍らで、少年が自分を睨み付けるかの如く眉尻を釣り上げているのを目の端に捉えながら、姉は精霊達の声を聞いていた。


 『だめ、この男は、キミを利用する事しか考えてないよ、騙されないで』

 『そうだよ、コイツ、ろくな事考えてないよ』


 耳を通さずに頭の中に直接響く声は、姉にとっては聞き慣れた、少女と少年の声。


 精霊を信仰している家であるがゆえに、姉は彼等精霊が一切の嘘を吐かない事を知っていた。

 そして、声が聞こえるがゆえに、彼女達姉妹は精霊達に好かれている。

 つまり、精霊達の言葉は紛うことなき真実であり、姉にとっても信頼のおける情報であった。


 「確かに、生活は豊かになっていませんし、年々死者の数は増えているとも聞いています」


 「ええ、そうでしょうとも」


 猫なで声にも感じてしまうほどには、どこか大仰に同意する神父を、姉は冷静に見つめる。


 事実、精霊の噂話でもこの街の死者が増えている事は聞いていた。

 貧困層、いわゆるスラム街には、様々な境遇で、その場所に来てしまった人間と、そこで生まれた子供達が居る。

 子供達が、すくすくと健やかに育つ事が出来るような良い環境では無いその場所は、死者が出ない事の方がおかしい。


 さてそれでは、何故死者が増えているのかと問われると、12年前の事件が密接に関わってくる。

 病で働き盛りの大人を亡くした一家が、以前と同じような生活が出来るだろうか。


 答えは、否だ。


 路頭に迷い、貧困層にまで堕ちる家庭が続出した。

 その悲劇から12年が経った現在、歳若く柔軟な子供達は生き残り、なんとか生活出来ているのが現状である。


 では、それなりに豊かな生活に慣れていた老人達がどうだったのか、想像に難くないだろう。

 12年の間に死者が増加しているのはそういった事が原因であり、実際貧困により死んではいるのだが、領主のみの責任かと問われれば、少し首を傾げざるを得ない。


 背景はそのようなものだが、今現在この土地に住んで生活している人間からすれば、たまったものではなかった。

 その鬱憤が自分達の上に立つ者へ向かうのは、もはや必然だろう。


 気持ちは分かるし、そうする事で心の平穏を保っている事は理解出来る。


 だからといって、領主が圧政を強いているとも思えなかったし、一切何もしていない領主を良い人間だとも思う事も出来なかったが、そんな事は姉にとって、どうでもいい事だった。


 「ですが私は、祖母を置いていけません」


 この神父に付いて行けばどうなるのか。


 それは目の前の神父の、姉の身体を見つめる、どこかじっとりとした不快な目で否が応でも理解出来た。

 だからこそ、祖母を連れて妹と共にこの神父の元へ行くなど考えられない事だった。


 「ご一緒に来れば宜しいじゃありませんか、近所の皆も居ます、何を案ずる事があるのですか」

 「だとしても、私達は此処に残ります」


 姉はやはり、キッパリと断言した。


 誰が好き好んで、過激派と呼ばれる大人達の集まる場所へ行きたいと思うだろうか。


 「お前っ!せっかく神父さまが親切に言ってるのに、なんて言い草だ!!」


 唐突に、神父の傍らにいた少年が姉へ向け怒鳴り声を上げた。

 余程の怒りなのか、顔も耳も真っ赤にして、握り締めた拳を震わせる少年は、姉を射殺さんばかりに睨み付けている。


 『コイツ、目の色が気に入られてるから傍に置かれてるだけなのに、何を偉そうに』


 「リチャード君、やめなさい」

 「神父さま!でもこいつら!」


 くすくすと笑う精霊の言葉に、神父に窘められている少年の瞳を見る。

 純粋無垢な、この辺りでは珍しい碧眼だった。


 なるほど、と冷めた思考で納得した姉は、神父の性根が腐っている事を再認識した。


 「......どうぞ、お引き取り下さい。

 私達はこの場所を守る事を精霊様により定められていますので」


 「分かりました。

 ですが、気が変わったらいつでも当教会へおいでなさい。

 神は等しく人々を見守っているのですから」


 「.........お気遣い、感謝します、では」


 姉はそれだけを言うと教会の中へ入り、扉へ鍵をかける。

 少年がまだ何かぎゃあぎゃあと喚いているのが聞こえたが、無視だ。

 がちゃり、という金属同士が擦れる硬質な音が辺りに響く。

 すると、様子を伺っていた妹が姉へと声をかけた。


 「ねえさま、大丈夫?」

 「あぁ、ベル、大丈夫よ、なんとか追い返した」


 少し疲れの見える姉に、妹は心配そうな表情を浮かべながら、姉へと近寄って行く。


 「あいつら、なにしにきたの?」

 「領主様が何か悪さする前に、教会に避難しろって言いに来たみたい」


 姉の言葉に、妹はその綺麗な眉間へと皺を寄せた。


 「......いくら領主さまが悪い人でも、あいつらのいる教会になんて、いやだわ」

 「しっ、ダメよ、ベル、あの人達に聞こえたらどうするの」

 「だってねえさま、精霊さまが嫌うような人達だもの、きっとろくな奴じゃないに決まってるわ」

 「そうだとしても、悪く言ってはダメよ、精霊さまが見ているわ」


 ぷんすかと憤る妹に、姉は困ったように笑いながら、優しい手つきで妹の頭を撫でる。

 さらり、という衣擦れのような音と、ふんわりと香る花のような姉の匂いに、妹は目を細めた。


 『アリーはまじめね、ベルはすなおなだけよ』

 「ですが精霊様、この街では死活問題です」


 『そうだねアリー、ベル、今あいつらはいないからいいけど、それ人前で言っちゃだめだよ』

 「はーい、気をつけます」


 『うん、ベルはいい子』

 「えへへ」


 くすくすと笑い合う姿の見えない精霊と妹の姿に、姉もようやくほっとしたのか、どこか安心した表情を浮かべながら、眩しい物を見た時のように目を細める。


 『そうだ、アリー』

 「はい、なんでしょうか、精霊様」


 ふと聞こえた精霊の声に、何事かとばかりに姉の背筋がピンと伸びた。


 『この街に、賢人が来たよ』

 「えっ、賢人様が、ですか?」


 『うん、きっと助けてくれるよ』

 「そうなんですか、良かった...、これで街も...」


 『そうだね』


 嬉しそうな精霊の声が聞こえた事で、姉の表情もそこでようやく綻んだ。


 姉の名はアリエッタ、妹の名はベルベット。

 姉妹は、この世界の元となったとあるゲームで仲間に出来るキャラクターとして神に定められていた。


 彼女達は精霊の声が聞ける事から、強い魔法を使えるキャラクターとして登場する。

 姉は回復魔法を、妹は攻撃魔法を、それぞれ得意としており、体の不自由な祖母が居る為、どちらか一人を仲間に出来るのが、姉妹のゲームでの設定である。


 領主の圧政により、余りの貧困に陥った街の現状に心を痛めていた彼女達は、聖女、または勇者がこの地に足を踏み入れた事を精霊から聞き、助けを求めるのだ。

 この時、領主の息子である騎士団長を仲間にしているかどうかで、姉と妹、どちらが仲間になるのかが決まる。

 仲間にしていれば回復役として姉、していなければ火力調整として妹をそれぞれ仲間にする事が出来た。


 だが、それは領主が暗愚なまま五年が経過した時の場合。

 領主は賢人となり、そして、この世界の誰よりも神に近い存在となった。

 どうやらその事で運命が変わり、五年後に起きるはずのイベントが前倒しになったようである。


 たった一つのピースを変えるだけでこんなにも面白くなったのか、と驚き、そして、そんな下界を見下ろしながら、神はまた楽しそうにくすくすと笑った。












 あれから、体感で30秒くらいだろうか。

 そんな短い間で、彼女は現れた。


 この前見た時と髪型と衣装の型が違っているけど、パッツンで中華服というのは統一しているらしい。

 来た途端に室内の様子を見て、ばさりと扇を扇いだ彼女は、それで口元を隠しながら眉根を寄せた。


 『む、......なるほど、これがお主の怒りの原因か』


 「......本来であれば、誰にも見せたくは無かったが...」

 『ふん、隠し立てした所で妾達精霊には筒抜けよ』


 堂々と断言されて、プライバシーのプの字も無いな、としみじみ思う。

 だが、それが現実なので何も言えなかった。


 『しかし、よくぞここまで綺麗に保存したものじゃのう、まるで時を感じぬわ...』


 ふと、どこか感心したような声が響いたので、意識を現実へと引き戻す。

 見れば、まじまじとジュリアさんの遺体を見ている水の精霊王さんの姿があった。

 誰にも見えないのが当たり前な彼女には遠慮という物が一切無いのか、その距離はどんどん近くなって行く。


 ......いや、まって、見過ぎじゃない?


 「彼女達は、隣国の呪いの被害者、そして...私の妻だ」


 意識をこちらへ向ける為に、改めて状況を説明する事にしたけど、果たしてこれは正解なんだろうか。

 頭の片隅でそんな事を考えながら、精霊王さんを見ると、ちらりと私を一瞥した後、また視線をジュリアさんの遺体に戻して、それから口を開いた。


 『......達?なるほど......これだけ美しく残すには、余程の執着があったのだろう。

 そういえば、この国の公爵は妻を亡くし心を壊したと聞いたが......』

 「賢人として目覚める以前の私の事だな」

 『なるほどのう。

 なんとも、愚かな事よ』


 腹立つけど、ぐうの音も出ない。


 「......申し開きのしようもないな」

 『ふむ、憤らぬか』


 「怒りを向ける相手が違うからな」


 『出来た()の子よ、妾の眷属が好く一族なだけはあるわ』


 くつくつと笑う彼女は、なんて言うか、妖艶という言葉がぴったりだった。


 そういえばオーギュストさんの家って水とか氷の属性なんだっけか。

 私は別にどうでもいいけど、とも考えながら彼女の言葉を待つ。


 すると、ようやく本題を思い出して貰えたのか、彼女は私を見て、笑った。


 『まぁ良い、それで、隣国の思惑であったかの』

 「あぁ、そうだ」


 美女に微笑まれると地味に困惑するんですけど。

 とかどうでもいい事を考えて逃避しながら、質問に答える。


 『......あの土地に精霊が少ない事は知っておろう?』


 いや、知らんけど。


 知らんけど、まぁ、オーギュストさんの知識にはあるっぽいので頷いておこうと思います。


 無言のままに頷けば、どこか誇らしげな顔で頷き返した彼女は、そのままふんぞり返った。


 『精霊は土地の豊かさを示す指針よ、それが少ないということは、容易に想像がつくであろう?』

 「あの国の土地が貧しい事は、諸外国にも有名な事だ。

 やはり隣国はこの国の土地を狙っているのか」


 『真に狙うておるのはこの国ではない、ちょうど海の向こうにある()(くに)よ』


 その言葉は、私の中に衝撃と、それから一つの納得を(もたら)したのだった。

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