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交渉決裂

それから数日後、異常な回復力で日常生活に支障がない程度にまで回復したレッカは、朝食後、改めて彼を助けた二人の前に座していた。

「……おじいさんと、お姉さん?」

「いやん、聞いた、パパ!お姉さんだって、」

「それより由々しきは、このわしを老体扱いしたことよ!見さらせ!腹筋、大胸筋、腕二頭筋、そしてこの広背筋。」

「きゃーかっこいい!!」

「なんなら下も見せようか、まだまだ現役じゃぞ!」

「きゃー、昼間から下ネタ、やだー、レッカ君困っているじゃない。」

何のリアクションもせず、無表情なレッカの沈黙に、彼は上着を脱ぎ、ズボンを脱ぎ、ふんどし姿で臀部と足の筋肉を見せつける。

「失礼しました筋肉ダルマ」

「うむ、理解してもらえたようじゃな。」

「筋肉ダルマはいいんだ。」

「翁じゃ」

「桜もとい、媼でーす。パパの妻をやってまーす。25歳でーす」

「……犯罪?」

「失礼な、ばあさんが死んで再婚したんじゃ、男の魅力は年齢じゃないわい。よいか天上人の小僧よ、この世界で最も不変な男の魅力は金と、そしてこの筋肉じゃ!」

「さすがパパ!身も蓋もない、でもパパのそう言うところがかっこいい!」

「あの、助けてもらった恩義があり、そちらの価値観に従おうともしましたが、ここ数日で確信しましたが、この星の住民のノリには全くついていけません。」

「なんじゃつまらんの、」

「あ、あとこんなノリウチだけだから心配しないで。ちなみにそのうさ耳もお客様の正装って言ったの、冗談だから、」

「桜よ、うさぎは月じゃろうが、わははは」

レッカは高速で頭に付けられたうさぎの耳飾りを投げ捨てる。

「投げるな!まぁいい。ところで話すにさしあたって。聞くのを忘れとった。お主、名は」

「モモちゃんだよね。」

「は?」

「え、だって桃から出てきたからモモちゃんだよね。」

「え?時々、モモちゃんと言っていたのは、自分の事だったんですか?」

「え、気づかなかったの?」

「すみません、いつもの一人言とかと」

「え、じゃあ名前は?」

「第3銀河星系連合総合治安維持局IFS-13式……いえレッカです。」

「第3銀河星系連合総合治安維持局IFS-13式いえレッカよ。」

「代さんギンガ整形れん、えっとなんだっけ、寿限無くんくらい名前長いから覚えられないよ。代さんでいい?」

「あ、すみません。レッカでお願いします。その前は、所属です。」

「わしは名前を聞いたんじゃい、お主がなにものであろうが関係はない。ではレッカ、まずは体の調子はどうだ?」

「はい、おかげさまで、」

「うむ、じゃろうな、筋肉も喜んどる。そこでな、お主には明日から山を吹き飛ばした罪滅ぼしと、お前さんの治療費分働いてもらう。お主の治療に使った草はな、エリクサーと言ってのう、非常に貴重で高価なものじゃ、わしも長年生きてきて1度しかお目にかかったことのない代物じゃ。それを使ったんじゃ、そうじゃな、軽く見ても10年はわしのもとで働いてもらうぞ。何心配するな衣食住、良質なたんぱく質は保証するぞ」

「10年!」

「ねぇ、パパ、それならうちの子になってもらったほうがいいじゃない?」

「わしは、子供は好かん。それにこんなに愛想がない奴は、なお好かん。」

「馬鹿げている!だいたいその算定基準はなんですか、金額の算定の根拠を、いえ、それ以前にそのような怪しい草の賠償など、お断りします。ミスターオキナ、ミセスオウナ、助けていただいた恩義には感謝をしています。ですが、僕にはやることがある。」

「やること?」

「自分はこの銀河の秩序を守るという重大な使命があります。そのためにも自分は一刻も早く宇宙に戻らなければなりません。それにドクターハルカワ。あの状況では、海賊バルバトスに奪還された可能性だってある。そんなことになれば何万という善良な民間人が彼らの恐怖にさらされることになる。

あなたたちは同言語体系を使い、この惑星から見える星の位置は俺たちの母星に酷似している。にも関わらず、あなたたちは私たちのことを知らない。

さらには、この非文化的、不衛生な生活習慣。ただでさえ、迅速に自らの使命を果たす必要があるのに、この奇天烈な場所から、通信手段もない状況で脱出する必要があります。なのにこれ以上余計な時間をかけてはいられません。自分が帝国軍に戻れば、正式な手続きを踏んで賠償請求を行います。それまでお待ちください。

それはまた追って連絡させていただきます。ミセスオウナ、助けていただいた恩義は形として変えさせていただきます。そしてミスターオキナ、それはあなたも同様ですが、僕のコアユニットを破壊した罪は、知らなかったでは済まされません。あれは軍の機密情報を含み、国家の重要な資産です。それを破壊した罪は、帝国民でなくとも免れません。

罪は罪。僕は恩義などという個人の感情には流されません。それでは失礼します。」

レッカはまとめておいた自分の荷物を手に取り立ち上がる。

もう少し別の言い方もあっただろう、だが、この状況に対しての苛立ちと、不安があった。過去にそう言う経験のないレッカは自分の苛立ちを認識することができずに、自分の言葉の悪意に気づかず、これでも相手に対しての礼儀を尽くしたつもりでいた。

「待たんかい、座れ!話は終わっておらん。」

当然、翁はそんなレッカの物言いに怒りを覚える

「パパ、落ち着いて、暴力はダメだからね。レッカ君も不安で気が立っているだけだから」

「話は終わりました、納得できるできないは、あなたの勝手です。もっとも筋肉ダルマではこちらの言葉は理解できなかったようですね」

「お主の普段からの冷たく見下したような態度をも気にいらんかったが、武人としての礼儀を教える前に、人としての口の聞き方から教える必要があるのう。口で分からない獣には体に教えなくては。それが躾。それはわしの最も得意とするところじゃ。」

「やめておいたほうがいいですよ。あの時、僕は手負いでした。ですがおかげさまで今は違う。それに僕は元々、戦闘用として作られているブーストロイド。さらにここの数倍の重力の星での活動を主としています。あなたがいくら強かろうが、僕がリミットを解除すれば足元にも及ばない、やめておいたほうがいいですよ。もっとも忠告は聞かないですよね。いいでしょう、体に教えるのが得意なら、覚えてもらいましょう体でね」

そう言ってレッカは荷物を置き、上から目線で翁に手招きで挑発した。


次話1月30日17時

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