桃から生まれた血まみれ軍人
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが仲良く暮らしていました。
おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に出かけて行きました。
そして2人は何事もなく仕事を終え、家に帰って仲良く天の川を眺めていると、天の川からどんぶらこどんぶらこ、ヒューと大きな桃色の何かが流れてきてきました。あれはなんだろう?二人で考えていると、そのままドーン!とおじいさんの山を吹き飛ばしてしまいました。それを見たおじいさんの怒りはとどまるところを知らず、一目散へ山へ向かい、山に埋もれた桃色それを掘りおこし、家までもち帰ると、大きな包丁もとい、鬼切包丁と呼ばれる大きな刀で一刀両断。するとどうでしょう、中から見たことのないべべに身を包んだ、血まみれの瀕死の青年がグターっと出てきたではありませんか。
「……」
「あ、起きた?やっほー!パパ!目を覚ましたわよ。」
レッカは全身の痛みを感じながら体を起こし、状況を把握しようとあたりを見回すが、ここがどこか見当のつかない景色が広がっている。木造の建造物、そこはまるでかつて資料で見た宇宙に出る前の古代の文明にでも迷い込んだような気分だ。。
レッカは周りの状況の把握と、自分の混濁する記憶を探っていく。
哨戒任務の途中での敵襲。ジャミングによる通信不良、そして母船である戦艦に内部からの爆発。そしてあの船、映像で正確に照合することはできなかったが、海賊バルバトス、そこまでは間違いない。そして……思い出した。戦闘の最中、突然閃光に飲まれたところで記憶を失っている。が、だからと言ってこの状況にはつながっていない。
それにこの体の損傷、治りが遅い、修復機能が働いていない。
レッカは自身で修復を命令しようとするが、それでも体がそれに反応しない。
自分が着せられている服も、目の前にいる女性の服も見たことがないものだ。
未開の星に不時着し、連れ出されたのか、いや、あの宙域に未開の惑星は存在しない。
そもそも、確認できている限りの宙域に他の知識生命体はいないことは立証されている。そもそも彼らは自分たちに酷似している。
いや、それ以前に同様の言語を使用している時点で、人間のはずだ。ならばここはどこだ。
思考をめぐらせるがやはり、結論を出すのは早計。それこそここがあの世の世界という可能性だってある。ロイドである自分にあの世というものがある可能性は低いが、この訳の分からない状況ではそれも可能性ひとつ。とにかく情報が少なすぎる。まずは体の損傷から判断しても、十分な行動は不可能。戦闘は回避すべき状況。
目の前にいる彼女が自分を助けてくれた事には間違いはないようだ。
だとすれば敵意は少なく、うかつに刺激し、状況を悪くするよりも、まずは相手の出方をうかがいつつ、情報を増やすべき。
「あの、大丈夫?私の言っていることわかる?」
「はい、理解できています。あなたが自分を助けてくれたのでしょうか?」
「手当?それはパパがやったの、パパのほうがうまいから、それより大丈夫?痛くない?」
「修復には時間がかかりますが許容範囲内です。痛覚を遮断するほどでもありません。」
「つまりは?」
「えっと、痛みはありますが、我慢できるという事です。」
「そうよかった。あれ、パパ呼んでも来ないね、少し待っててね。呼んでくるから」
「あの、」
「何?」
「あの、僕はどうしてここにいるのでしょか?ここはいったい」
「昨日の夜、天の川から流れてきたの、ぴゅーっで、ドーン!!それでパパの山が無茶苦茶になって怒ったパパがその光の落ちた場所を見に行ったら、あの中にあなたが入ってたの。大変だったんだから最初はパパ怒って。目を覚まさせてぶち殺すって。」
何を言っているのか理解できないが、レッカが彼女の指差すほうを見るとハート形に変形した脱出ユニットが真っ二つにされている。
よくあそこまで変形して生きていたなと自分の丈夫さに感心するが、それ以上に気になるのがその横にある鉄の塊だ。3メートルはあろうかという刃物というにはあまりに無骨な物体。あれで、あの脱出ユニットを切断したのか、熱疲労を起こしていたにしても、あんな刃物というより、鈍器に近い鈍であの切り口。ありえない。
あれは光学兵器でなければ切断できない素材のはず。素材偽装?それとも、彼女の冗談か。
「そうだ!サクヤ、あの、僕以外には他の誰か同じように不時着したという事はありませんでしたか?もっとずっと大きな、その戦艦なんですが」
「ふじちゃく?せんかん?ごめんなさい。私たちがみた流れ星はあなたの光だけよ。他に天上人が落ちてきたなんて聞いたことないけど、都に行けば、噂くらいはあるかも」
「そうですか、ありがとうございます。」
「そんな顔しないで、何か事情があるみたいだけど、まずは自分の体を治すことを考えて、元気になったら、探してあげるから、大丈夫、きっと天に変える方法だってあるわよ。」
「お気遣い、ありがとうございます。」
彼女はレッカに笑いかけ励ますと、大人しくしているようにと言い残し出て行った。
残されたレッカに、今度はサクヤやみんなの心配が頭をよぎる。
皆無事だろうか、戦艦の戦闘能力は確かなものだが、艦橋近くでの爆発が見えた、あの海賊船に撃墜された可能性だってある。もしかしたらサクヤや皆は、
分からないという焦燥感に後押しされ、自分の脱出ポッドから残された記録を閲覧しようと、這うように近づき、起動を試みる。だが、真っ二つに破損していては、システムは起動しない。断面から見える内部パーツも損傷が激しく、場所によっては燃損している。
外装こそ丈夫だが内部構造はそうではない、ここまで壊れていては修復も絶望的だ。
レッカは柄にもなく、感情に任せ、ポッドを思いっきり殴るが、痛むのは自分の体だけ、
思わぬ衝撃に堪えようとしたが、苦痛の声が漏れだす。
「物にあたるな、若造が、それでもおぬしの命を救ったものではないのか?」
低い声に反応し、入り口を見ると顔は扉よりも大きな身の丈で確認はできないが、恐ろしく大きな何かがいる。人か?優に3mはある
それに高さだけではなく横も、扉から外を覗えぬ程にでかい。
その大きななにかが、のそりと入ってくる。やはり人だ。老齢と思しき白髭と白髪の男だ。
それが眼前に仁王立ちすると、今までにない威圧感が襲ってくる。
レッカは臨戦態勢を取ろうとするが、体が言うことを利かない。が、敵意だけは十分だ。
「まだ動くな、、大人しく寝とれ。」
レッカの頭上に振り上げられた腕は、まるでかかと落としのように襲い掛かる。
レッカは避けきれないと判断し、とっさにガードを試みるがまるで意味をなしていないかのように、その衝撃は突き抜け。再びレッカ眠りに落ちた。




