VS閻家6
双葉はバイクの裾から見慣れぬ銃を取り出す。
それはレッカの自体に使っていた光学兵器
「とっておきさ、私の力を使えば撃つことはできる。でも、おそらくこれが最後。」
見ればすでに銃芯にはひびが入り、とてもまともに撃てるようには見えない。
「それでどうするつもりなんですか?」
「なに、ちょっとね。教えない方がやりやすかったりするわけで。とにかく君は全力をもって、鬼の相手をしてくれてばいい。あとはお姉さんにまかせなさい。」
「分かりました、僕に打つてはないですし、お任せします。」
レッカは彼女の言葉を信じ、フレームに対峙する。
「さてさて時間もないし、これは緊張するね。」
彼女はじっとフレームを注視する。周りの音を消し、背景を消し、ただフレームの動きだけに集中する。相手は機械、行動に人間よりも確かな法則があり動いている。そして彼女の力も、フレームに取り込まれ、彼女の生存本能とフレームの論理的思考、その範囲内で瞬間移動している。限界移動距離、タイミング、各瞬間移動の必要なインターバル。
彼女は言葉と呟き続け、無言になると、バイクに体を固定し、銃を構え何もない宙をめがけて引き金を引く。その反動で銃は砕け、破片が彼女を襲うが、彼女はそれを物ともせずに揺るがず、ただ光の行く先を見定める。
引き金を引いて見えない目標に到達するまでの時間は正しく刹那。レッカも、双葉もフレームを認識した時には既に、フレームの頭部を、彼女の放った光が貫いている。
頭部だけはどう考えても彼女がいる可能性はない。フレームの首はケーブルがむき出し、その内部に彼女の胴体がある可能性もない。だからこそ頭部だけは絶対に安全
「今だ!少年」
レッカは双葉の声に反応しKB弾を、頭部を破壊され、リブートのため一瞬動きの停止した隙にその場で爆発させる。吹き飛んだ頭部の断面からウイルスが入り込んでいく。
「恋歌!」
爆発の衝撃に耐え、フレームの完全停止を確認する前にレッカはフレームの装甲をはがし、恋歌を引きずり出す。意識はもうろうとしているが、恋歌は無事だ、生きている。
「よかった。」
レッカは安堵し、一気に力尽き、地面に寝そべる。
「お疲れ様。少年。」
「ありがとうございます。すごいですね。あんなの俺のいた時代でも見たことないですよ。
どうしてわかったんですか?」
「それは決まっている女の勘さ。」
「勘?勘で撃ったんですか!」
「勘を馬鹿にするもんじゃないよ。勘を信じられないのは二流の証さ。過去の経験が勘を鋭くする。経験則というべきかな」
「年の功というやつですか」
レッカの思いっきり顔面を踏みつけられる。
「大丈夫かいお嬢ちゃん。」
「お、おう、なんとかな」
恋歌の表情は晴れない、体の疲れもそうだが、今日はいろいろなことがありすぎた。
「動くな!」
休む間もなく響く声、レッカたちが町の方に目をやると白装束に身を包んだ男を中心に、数十人の男たちが、こちらに敵意を向けている。
「オボロ兄!生きていたのか!よかった。」
恋歌が疲れ切った体を動かし駆け寄ろうとすると、恋歌の足元に鉛玉が撃ち込まれる。
「な、何をするんだよ。」
「何をする?決まっている統領であるお前に責任を取ってもらう。」
「責任?」
「あぁ、見ればわかるだろう、お前がそいつらを招き入れたせいで、町は壊滅、オヤジも、雷光兄さんも、レンヤも死んだ。それだけじゃない。今もこれを機に閻家の宝を奪おうと皆が暴れまわっている。無茶苦茶だ。閻家は終わりだ、こうなった原因はすべてお前だ。」
「ふざけんなよ。こうなったのはフレームのせいだろうが、お前たちは何をした彼女は皆を守ろうとしていたのに!今まで何をしていた。」
「黙ってろ!疫病神が!」
レッカの頭めがけて銃弾を放つが、レッカは受け止めるよりも早く双葉が銃弾を打ち落す。
双葉はいまだに本気モードで、彼らをにらみつける。
「お、オボロ兄。確かに今回のことは僕がいたらなかったこともあるけど、だからって」
「責任を取る、それが統領の務めだろうが、掟は絶対。お前は俺たちの根城に災いを持ち込んだ。そしてお前の力不足のせいで、こんなことになった。あ!」
「い、いや、だから、その……で、でも、もう鬼は倒したし、」
「知るか、そんなこと、だからなんだってんだ。お前なんか誰も認めてねぇよ!」
「そうよ、あんたのせいでうちの子が!」
「お前のせいで家はめちゃくちゃだ!」
オボロだけではない、皆が口をそろえて恋歌を非難する。
それはオボロが自分に都合のいい者たちだけを見つくろいここぞとばかりに、迅雷、雷光亡き後、権力を手に入れるための浅知恵。だが、彼らの言葉は家族を失い傷ついた恋歌の心には重すぎる言葉だ。
死ね!死ね!縛り首だ!いや、町の中を引きずり回せ!止むことなく激しさを増すバッシング。そしてそれは次第に言葉から、行動に代わっていく。
恋歌にめがけて石が投げられる。
どうしてこんなことに、確かに自分のせいではないとは言いきれない。自分の力不足も認めざるを得ない。だが、自分は皆を守ろうとした。父親の敵を取ろうとした。
恋歌の顔面めがけて石が飛んでくる。それをよけることはできる。だが、それをよけていいのか、そんなくだらないことで迷っている恋歌の前でレッカが石をキャッチし、そのまま握りつぶす。
「双葉さん、止めないでくださいね。」
「止める?馬鹿を言うな。レッカ、加勢の間違いだろ。下種は見慣れたものだと思っていたが、ここまで心の腐りきった連中を見たのは久しぶりだよ。
半端なまねをするなよ。君が殺し損ねれば私が殺すだけだ。」
「あぁ、その心配はいりませんよ。昨日の双葉さんの分含めて、2回ずつ死んでもらいますから、拷問、したことはありませんけど、たくさん見てきましたから」
完全に切れたレッカは殺意をむき出しにする。それはかつてキリングマシーンと恐れられたレッカとは全く別の姿。明確な殺意を彼らに向ける。
そしてそれは双葉も同じだ。普段の双葉からは想像もできないほどの殺意を彼らに向ける。
あまりの迫力に皆たじろぐがここで引くわけにはいかない。だが、誰もが理解していた。勝てるはずがない。目の前にいる二人はかつての迅雷と同じどす黒い殺意を持っている。
「やめてくれ!」
二人が動き出そうとした時、二人の袖を持ったのは恋歌だった。
「お願いだ、やめてくれ!皆を傷つけないでくれ!お願いだ」
泣きながら恋歌は二人を必死に止める
「!!どうして、どうして君は!!」
「みんな、僕の家族で、仲間なんだ。かけがいのない大切なものなんだ。」
過去の思い出が彼女を縛り付ける。彼らにひどいことを言われようと、もう彼女には彼等しか残っていない。だから、失うわけにはいかない。
「どうして!あー!!」
やり場のない怒りを込め、レッカは思いっきり地面を蹴り、双葉は気持ちを落ち着けるために、慣れないタバコに火をつける。
「分かったよ。それじゃ、いい。どうせ彼らは長くはない。行こう。」
そういってレッカは恋歌の手を引き、双葉のバイクに近寄っていく。
「3人乗れる?」
「彼女は小柄だからぎり行けると思うよ。」
「え?あ、ちょっと!」
「悪いけど、君をこんなところに残してなんていけない。彼らを見逃せというなら、僕たちと一緒に来てもらう。もちろん、それが最善じゃない。
でも少なくとも君が安全に暮らせる場所までは一緒に来てもらうよ。」
「ちょっと待て!どういうつもりだ。そいつは、!!」
双葉はオボロの足元に全弾打ち込む。
「それ以上こっちに来てみろ、マジで殺すぞ!あ!」
「俺がなるよ。君の大切な家族の代わりに、役不足かもしれないけど、信じてくれ、僕は君を裏切らない。君を絶対に不幸にしない。だから、」
レッカは一旦、彼女の手を放し彼女に手を差し出す。
恋歌は迷いながらもその手をつかむ。
レッカはそれにこたえるように彼女を引き寄せ、ぎゅっと彼女を抱きしめる。
かつて桜が教えてくれた、こうしていると不安が消えていくんだよと、
3人はバイクにまたがり、橋を渡り、荒野に消えていった。
都を出て11日、彼らの旅はまだまだ続く。




