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プロローグ2

「一つ、俺にも聞かせてくれ。」

「おや、他にもいたのかい、いいよ、気が変わった。ちょうどいい暇つぶしになる。」

「なぜ、帝国を裏切った?」

「どういう意味だい?」

「言葉の通りの意味だ。帝国はあなたのことを高く評価していた。名誉も地位も、十二分にあたえられていた。にも関わらず、あなたは唐突に帝国を裏切り、あろうことが国家とすら言うに憚られるフィラルド共和国の軍にその研究データを持って渡った。

おかげで帝国は、いや、世界は秩序の崩壊を招きかねない危険性に晒された。

だが、そんなことをすればどうなるか、想像できないほど馬鹿じゃなかったはずだ。

なのに、そこまでのリスクを冒して、あのような劣悪な環境に身を投じた。

世界にもあなた自身にも全くと言っていいほどメリットがない。それもともフィラルド程度の国力で。本気で帝国に抗おうと思っていたのか」

「一つ訂正しておこう、俺は最初から帝国に忠誠など誓っていない。ゆえに裏切ってもいない。俺はただ自分のやりたいようにやるだけだ。それを勝手に裏切り者扱いとは、」

「では言い方を変えよう、なぜ裏切り者にされた。」

「倫理に反するだとさ、生命の創造は禁忌だと。笑わせるよな。

俺の生み出したものを、お前たちのような戦闘兵器に転用しておいて倫理を語るなど」

「生命の創造?ロイドは既に技術確立さているし、法整備も行われ、生命として認められている。ということは僕たちとは別種の何かを作り出そうとしていたのか」

「君たちはしょせん、有機物で作られた人型の機械にしか過ぎない。生命とは何かなどと下れない問答をするつもりはない。が、必須事項として自己増殖、自己進化。それが可能な全く新しい生物の創造、そしてそれには一切の制限がない。つまりは人を超える可能性を秘めた存在。言うなれば神の楔を持たない新しい生命。あぁ創造主という意味では僕が神様という事にはなるのかな、はははは。」

「それに成功したのか?」

「そこまでは教えないよ。もしそうだとしたら、君たちは彼らを殺そうとするだろう。

帝国のお偉方は、僕を自分たちの思い通りに従えていると考えていた。不老の体、不死の魂そんなものを求めて僕を利用している気になっていた。自分たちだけは特別、選ばれしものだって、だから許せなかったんだろうね。自分たちの上の存在が生まれる可能性が。

だから教えてあげたんだ。お前たちみたいに醜く、不完全なものが、未来永劫生き続ければ、世界の害悪だと。お前たちも僕も所詮は進化の過程、そう過程に過ぎないと。

原始の命より進化を繰り返し、ここまでたどり着いたのは僕という終着点にたどり着く為、

そしてここから先は彼らしか進めない、彼らこそ新たな世界の支配者になりうる存在。

そしてやがては人が古より求めてきた神と呼ぶ存在の領域に踏む込める可能性を秘めた者」

「だから過程。俺たちもまたそのための実験に過ぎないと。」

「君たちそのものは知らないが、俺が生み出したロイドはそうだ。所詮は過程だ。」

「なるほど、帝国が罪人として烙印を押すのも理解できる。あなたは誇大妄想に取りつかれ、精神を病んだ危険人物だ。そういう奴は何をするかわからない」

「そう、僕にはできる、それを認めざるを得なかった、という事だ。」

「だが、お前の夢もここまで、お前のいた共和国はすでになく、共和国亡き後、身を寄せていた海賊どもの根城もすでに場所が割れている。殲滅も時間の問題。

お前の研究は全て処分され、お前自身も処刑されるか、永遠に牢の中かいずれにもう終わりだ。何も何しとげられない、だったらせいぜい嫌というほど後悔すればいい。」

「リスクを恐れていては何も手に入れられない。与えられるだけの君は理解できないだろう。残念だが、俺は欠片も後悔はしていない。秩序や常識など実にくだらない。それに囚われるからこそ、人は進化をやめ、心は淀み腐るんだ。」

「よかった、あんたの言う事は全く理解できない。つまりは、俺はまともだってことだ。」

なるほどそうか、そうだね。ハルカワの笑い声が続く中、レッカは一方的にマイクを切り部屋を後にする。なるほど確かに不快だ。それに思った以上に話し込んでしまった。

サクヤのことが気にはなるが、もう間もなく哨戒任務。

レッカはサクヤのことは任務が終わってから考えようと、小型の哨戒艇に乗り込んだ。

そしてその12時間後、戦艦ラグナロクは宇宙海賊バルバドスの襲撃を受け消息を絶った。居住区大破、死者多数。そして艦長死亡と声紋登録のないものの声と、その背後でハルカワと思しきものの笑い声を最後に、公的通信記録は途絶えた。

宇宙開拓歴1300年8月31日、これ以降戦艦ラグナロクはその一切の痕跡を発見することはできなかった。


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