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1.敵国で目覚めて。







 ――ミクが王国を出て、間もなくのこと。

 彼女との契約による加護が切れたことによって、王国には異変が起こり始めていた。降り始めた雨は次第に強さを増し、街の河川は氾濫。

 人々は対応に追われ、勇者は国王に呼び出されていた。



「なに……? 精霊族の姫を追い出した、と」

「あ、あぁ……そうだけど?」



 勇者の間抜けな発言に、国王は厳しい表情のまま頭を抱えた。

 精霊族の加護は、この王国を繁栄に導く。ミクと勇者の婚姻はその証であり、この馬鹿もそのことは理解していたはずなのだが、いったい何を考えているのか。

 いいや、考えていないのだろう。

 考えていないからこそ、このように軽率な行動を取れるのだ。



「念の為だ。勇者よ、お前の事情を聴いておこう」

「だって、俺はアイシャに真実の愛を――」



 そう思っていたが、彼の口から語られたのは言い訳ばかり。

 遠回しな表現をしていたが、要約すると『アイシャと浮気をし、彼女に惚れ込んだ。そうなってくるとミクは邪魔なので、勝手に追い出した』ということであった。

 そのことを把握した国王は、いよいよ我慢の限界に至る。

 何故なら、そもそもミクとの婚姻を望んだのは――。



「――ええい、男の風上にも置けない奴め! そもそも精霊族の姫との婚姻を望み、生涯をかけて愛すると誓ったのは貴様ではないか!!」



 そう、勇者だったのだ。

 そのことを反故にしておいて、いけしゃあしゃあと美辞麗句で誤魔化そうとする。そこに誠実さなど欠片もない。そう判断した国王は、即座に処罰を下すのだった。



「貴様は本日付けで、国家反逆罪により国外追放とする!!」

「え、えええええええええええええええええ!?」



 誰もが呆れる勇者の悲鳴は、王城全体に響き渡っていた。








「こ、ここは……?」



 ミクが目を覚ますと、そこには知らない天井があった。

 ふかふかのベッドに身を横たえていたので、おもむろに起き上がると周囲には豪華な調度品の並んでいる。広い一室の只中で、少女は眠りに落ちる前の記憶を手繰っていた。

 すると、それよりも先にドアがノックされる。

 少女が短く返事をすると、中に入ってきたのはあの青年だった。



「やあ、目が覚めたかい?」

「はい。あの……ここは、どこですか?」



 彼はベッドの横にある椅子に腰かけると、優しくミクの手を握る。

 それに少しだけ安心感を抱いた彼女は、状況を知るためにそう訊ねた。すると青年は静かに首を左右に振って、こう言う。



「その前に、自己紹介しないかい?」



 そういえば、互いに名乗っていなかったことを思い出した。

 ミクはそれはいけないと思い、しっかり向き直って名を口にする。



「私はミク――精霊族の長、ガイアの娘、です」

「……驚いた。まさか、精霊族の姫君だった、とはね」



 しかし青年は、また小さく首を左右に振ってこう続けた。



「いいや、関係ないか。僕は身分や生まれ、関係なくキミに惹かれたんだから」

「私に、惹かれた……?」

「あぁ、そうだよ。さて、改めて名乗ろうか」



 そして、そのように一度言葉を切ってから。

 彼は恭しく礼をしながら、こう名乗るのだった。



「僕の名前は、ミハエル・リュクス・ルクレツィア。このルクレツィア皇国の第一皇子。そして――」




 優しく、ミクの手を撫でながら言うのだ。




「キミに恋し、心の底から愛したいと願う者だよ」――と。



 


ここまで短編と同じ内容。

オープニング終了して、次回から新規です。


https://ncode.syosetu.com/n7122kx/

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国外追放って、加護が無くなって大雨とか降って大変になる国から出すことになるから、逆に助けているのでは?
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