14日目 服屋の入り口には結界が張ってある。間違いなくある。
現在の所持品
冒険者カード 1枚
パジャマ 1セット
銀貨21枚 銅貨19枚
水の入った水筒 1つ
癒しの神の杖 1本
「それじゃあエヴァ君。僕と一緒に冒険にそうか。」
もう勇者君も断られる前提だよね。確認だけ取ると、すぐに消えていった。
「いいんですか?断っちゃって。」
「まぁ、そういう約束だしね。エヴァの気が向いたらってことで。」
そうね、気が向いたらね。
「果たしてその日が来るのでしょうか・・・?」
「来ないんじゃない?まぁ非常時には緊急で呼び出されるかもしれないから、その時は諦めてね。」
チーム安全第一が、ギルドマスターに命令されてた時みたいなことかな?まぁ大概のことは勇者君一人で片付いちゃいそうだから、呼ばれることもないでしょ。
「それじゃあ、私たちはパジャマでも買いに行きますか。」
え。あれ本気なの・・・。
「「パジャマなんて何でもよくない?」って考えてます!」
「まぁパジャマは最悪いいけど、だいぶ寒くなってきてるし、そろそろ上着欲しくない?」
・・・それはちょっと欲しい。外に出なければ気にならないけど、お米もなくなったし、これから一回も出ないわけには行かないだろうからなぁ。
「大丈夫ですよ。私が良いお店知ってますし、店員さんの相手は私がしますから。」
「店員さんがモンスターでいきなり襲ってきても、勇者君をすぐ呼ぶから安心して。」
「そんなお店紹介しませんよ!?」
店員さんの相手をしてくれるのは嬉しいなぁ・・・。服屋も知らないし。
「シーラも、エーヴァちゃんの気持ちは漏らさず伝えて見せますよ!!」
たしかに、このメンバーに囲まれて行けば、安心かもしれない。いずれは行かなきゃ困るし、今行くのも手かなぁ。
あ、でもうさ耳つけたシーラは、知り合いだと思われない程度の距離を開けて付いてきてね。
「あぁ、エーヴァちゃんが「お前みたいな気持ち悪いやつと、知り合いだと思われたくねぇから。50キロは離れて付いてこい!」って考えてます!ごめんなさい!半径100キロメートル以内には近づかないようについて行くので、許してください!!」
それもう付いてきてるって言えなくない?
急に不安になってきた・・・。
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「さぁ、着きました。こちらが私おすすめの『ブティック・リアクイーン』です。」
案内されたお店は、いかにも高そうというか、自信に満ちているというか。お客さんも店員さんもみんなきらきらしていた。よし、帰ろう。
「ちょっと!一着も見ずに帰ろうとしないでくださいよ!!」
「いやぁ、これはサリーのチョイスが悪いと思うなぁ。」
「本当にいい店なんですって!!」
いやいや、あんなとこ入っていったら溶けるって。なんで服の隣に貴金属置いてるの?そのネックレスと隣にあるクマのぬいぐるみも売り物なの?ジャンル分けすればいいのに。あとおいてる服が少ない、あれだよ、サイズ違いが欲しかったら店員さんに言わなきゃいけない奴だよ。うわ、あの服ショーケースに入ってる。うわうわ、帰ろ帰ろ。
「店員さんは私が相手しますから!一目でいいので見てくださいよ!見れば分かりますって!」
帰る意思を貫き通しているのだが、サリーさんは一向に引き下がらない。よほどお気に入りの店なのだろうか?
「よし、じゃあこうしよう。僕がお店に乱入して店員さんを引き付ける。その隙にどんな服があるのかを見るんだ。」
「それじゃあ、シーラは炎のダンスで盛り上げます!!」
「いやいや、火事場泥棒じゃないんですから!普通に入ってくださいよ、普通に!」
このままだと、うさ耳少女と喋るウサギの大サーカスが始まってしまいそうだ。仕方ない、諦めてちょっと見るだけ見て見るか。うん、ちょっとだけ。頑張って・・・。
(―――――――。)
キュイーン
「おぉ!さすがエーヴァちゃん!誰も気づかぬ早業で、自分に防御バフを掛けました!!」
「何やってるんですか!?誰も襲ってきませんって!!」
「誰にも気づかれないどころか、杖持ったまま発現したもんだから、約30人の見知らぬ人たちに強力な防御バフが入ったね。」
「何やってるんですか!!?」
30倍の効果が30倍の範囲に、改めてすごい効果だね。有効に使えた試しがないけどね。
サリーさんが周りの人たちに謝り倒し回ると、有無も言わせぬ表情で戻ってきてこう言った。
「・・・服。見たいですよね?」
うんうんうんうん。
サリーさんだけは怒らせないように気を付けよう。そう思った。