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4日目 初めての冒険、ヒーラーは結構暇。


 現在の所持品

 How to healer 1冊

 祈りの言葉の小冊子 1冊

 冒険者カード 1枚

 パジャマ 1セット

 銀貨3枚

 紅茶の半分入った水筒 1つ

 ロボットサンドイッチ下 1つ


 「改めてよろしく!俺はチーム安全第一のリーダー、アイティ。相手の攻撃を引き受けるのがおもな仕事だ。」


 組みたくもなかったチームを組んで、クエストに向かう途中。自己紹介が始まった。アイティは大きな盾と剣を持った、筋肉質な若者だ。


 「俺は安全第一のアタッカー、ヴァティ。よろしくな、お嬢ちゃん。」


 ヴァティは大きめな剣を二本持った男だ。背はアイティよりちょっと低いくらいで、にっこりとした顔が特徴の好青年って感じだ。


 「私は安全第一の魔法使い、トューサ。女の子が増えるのは大歓迎よ。今回だけと言わずうちに入らない?」


 トゥーサは三角帽子に黒いローブをまとった魔法使いっぽい恰好をした女性。何やら光る石のついた杖まで持っている。


 三人の自己紹介が終わると歩きながらも、こちらをチラチラ見てくる。・・・そりゃそうだよね。順番的に私だよね。ていうかこの3人にとっては私の自己紹介以外どうでもいいよね。


 しかし当然自己紹介なんて高度な事私にはできない。せっかく作ってもらった冒険者カードを有効利用しよう。名刺のようにアイティに渡す。


 「あー。えーっと、この子は俺が冒険者ギルドで協力をお願いした、エヴァちゃん、だね。ヒーラーだ。みんな仲良くするように。」


 アイティが代わりに紹介してくれる。いい人だ。頭だけでも下げておこう。他の二人はなんとも微妙そうな表情をしていた。そんなこんなで街の外がわまで来た。


 「えー、まぁ。もともと数少ないヒーラーに、この町で出会えただけでも奇跡なんだ。安全性が増したことを喜び、俺たちはいつも通りやろう。」


 アイティのお話が終わると町の外に繰り出した。



―――――――――――――――――――――――


 「前方!ゴブリン3!」


 前方を行くアイティが叫ぶ。この世界に来て初めて会った緑色の方が3人集まって出てきた。ゴブリンっていうのか。


 初めてのモンスターとの戦闘だ。と言っても私のやることはほとんどない。巧なチームワークを見せる安全第一に、暇があれば強化(バフ)をかけて、怪我をしたら回復(ヒール)をかける。と言っても、めったに怪我の一つもしないのでヒールの出番は少ない。たまに攻撃がかすって擦り傷が出来るくらいだ。まぁ治すけど。


 特に問題も起きずどんどん突き進んでいく。最前線で敵を見つけ攻撃を引き受けるアイティ。そのアイティとまるで打ち合わせ通りに動いているかのような息の合った動きで敵を切り倒すヴァティ。遠距離から見たからこそ分かる情報を前衛に伝えながら、的確なタイミングで攻撃魔法を放つトューサ。そしてその横でぶつぶつ祝言唱えてる私。いらないよね?これ、私いらないよね?さっきから結構モンスターと遭遇してるのにまともな怪我一つしやがらねぇ。


 歩いている最中も、私を除いた3人で何やら会話している。まぁそれはいいんだけどね。こういう状況下で一番嫌なのは、変に正義感が強いやつがいて、話に加われないやつを話も合わないのに強引に話に入れようとすることだ。○○ちゃんはどう思う?とか言ってくるけどうまく答えられなくて変な空気になることだ。


 そうならないだけ、まだましかもしれない。あとは私が奇跡を発現させるたびにこっち向くのやめてほしい。ありがとうなのか、良いぞなのか、知らないが、ちょっといい顔でこっち見るたびビクッってなる。悪いところがあった時だけ、言ってくれればいいのに・・・。変に気を使われるのが嫌なんだけど。


 「止まって。今回の標的が見えたぞ。」


 アイティがそう言って指さした先には、大きなオオカミがいた。さっきアイティがウルフって読んでたやつだ。しかし今回見つけた奴は、さっき群れで出てきたのより二回りほど大きく、色が黄色い。


 「突然変異種のウルフだ。どういう能力を持っているかは分かっていない。不確定要素がある以上、安全第一では受けたくなかったんだがなぁ。

  俺らとしては、いつも通り堅実にやるだけだ。油断も必要以上の怯えもいらない。あ、エヴァさんはそのままよろしくお願いします。」


 完全に三人プラス一人だ。しかもなんか指示がふわっとしてる。初冒険の身としては的確な指示がほしいんですけど・・・。いや、私が自分の能力もろくに話せないのが悪いんだけどね?


 「各自何かあるか?・・・よしっ行くぞ!」


 こうして巨大イエローウルフとの戦いの火ぶたが切って落とされた。



―――――――――――――――――――――――


 まぁ、勝ったんだけど。


 本当に宣言通り、ほかのモンスターとなんら変わらぬ堅実な戦い方で綺麗に勝利してましたね。私が治した怪我は切り傷程度、あと異常状態の対処くらいかな?何度も言うけど私いる?


 特に何事もなく、ギルドに戻る。


 「はい、変異種のウルフ討伐おめでとうございます。ギルドからの報酬は、エヴァさんの分で銀貨15枚ですねぇ。」


 そう言って受付のお姉さんが銀貨をくれる。え?あれで銀貨15枚?4分の1でってことでしょ?冒険者って儲かるんだなぁ。


 ここで問題が一つある。そう、私ほとんど何もしてない。しかし頼まれて行った上に正式に渡された報酬だ、受け取らないだの、向こうを多めにしてほしいだの、言うとそれはそれで面倒なことになる気がする。

 かと言って堂々としてても、あの子何もしてないのに私たちと同じだけもらうのー?とか言う不満が出るんだ。いや、そんな悪い人達ではなさそうだけど・・・。人間内に何を秘めているか分からない。そうだ。もう依頼は終わったんだし、逃げよう。嫌味を聞く前に逃げてしまおう。


 安全第一の方にお辞儀だけすると、ギルドから逃げ出した。


 クッティの無人販売所で昨日と同じセットを頼み、教会に逃げ帰る。あとはいつも通り、暇な時間を祝言の練習にあて、夜になれば妖精の止まり木で眠るだけだ。今日もふかふかにセットしてくれたベッドの中で考える。


 まともに挨拶もせずに逃げちゃったけど大丈夫かなぁ、もう会うこともないだろうしいっか。

 それにしても4分の1で銀貨15枚かぁ。人じゃなくて、モンスター相手の相手すればいいんだもんなぁ、いいなぁ冒険者。


 私が一人で戦えたら、良かったのになぁ。


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