【4日目】アイティ視点 異常な力を持つヒーラー
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↓―言語の修正を行います。―↓
俺の名はアイティ。
チーム安全第一のリーダーをやっている。一応トナリノ町を拠点にしている冒険者の中では、最強のチームと言われている。まぁ王国のほうに行けば俺たちより強いチームなんて珍しくもないんだろうが。
そんな俺たちのモットーは名の通り、安全第一。ダメそうなら逃げる!いつも通りの戦い方を崩さない!少しでも危険だと思うようなクエストは絶対に受けない!
しかし、そんな俺たちが受けないようなクエストを、ギルド長から直々に受けるよう命令が出てしまった。
こればっかりは仕方ない。いくら市民を守るためとはいえ、命を落とすような無謀な命令はできない。しかし、今回は俺たちなら全然可能な範囲だからだ。
しかし危険があるのは間違いない。ターゲットの情報がなさすぎる。頭を悩ませる俺に、癒しの女神がほほ笑んだ。目に入ったのは椅子にちょこんと座っている、長い黒髪に、白い服を身にまとった少女。頭に乗っているベレー帽と、肩に掛けているショルダーバッグには十字が施されている。ヒーラーの証だ。
この町で冒険者をやりだして結構になるが、ヒーラーの冒険者なんて初めて見た。ヒーラーなら邪魔になることはない、早速声をかけに行く。
名前はエヴァちゃんと言うそうだ。協力を依頼すると嫌がっていたが、残念ながら緊急事態だ。諦めて手伝ってもらおう。
少しでも仲良くなっておきたい、とりあえず自己紹介からだ。エヴァちゃんの番になると・・・カードを渡された。だいぶ無口な子のようだ。
「ちょっとリーダー、あの子どういう子なの?」
「いや、俺もさっき出会ったばっかりなんだ。」
魔法使いのトューサが疑問を投げかけてくる。出会ってから一言も話さず、ただついてくるだけの存在だ、役に立つのかも不安だろう。しかしチームワークが崩れるのは問題だ。
「俺たちはいつも通りやろう。」
そう声をかけて、町を出た。
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異変はすぐに表れた。
「前方!ゴブリン3!」
ゴブリンの群れを発見する。ただのゴブリンだ、何の問題もなく倒せるだろう。向こうもこちらに気づき、襲い掛かってきた。
キュイン
俺の体に光が降り注ぐ。・・・防御バフ!?
バフなんて強敵と戦う前に、ヒーラーの魔力に余裕があれば、本を見て読み上げながらかけるものだ。間違ってもこの程度の相手に、開戦後かけるようなものではない。
ゴブリンの一撃を盾で受け止める。ただでさえゴブリンの一撃なんて特に問題もないのに、バフまでかかってるんだ、防げないわけがない。防御じゃなくて攻撃にバフを割けばいいのに。いや、そもそもバフなんてかけないでいいんだけど。
攻撃をはじかれ、隙を見せたゴブリンにヴァティの二本の剣が襲い掛かる。ヴァティの腕なら、ほかのゴブリンの攻撃が来る前に、二発撃ちこんで致命傷を与えられるだろう。
ヴァティの腕は誰よりも俺が知っている。あとはゴブリンの追撃を俺が防いで・・・。
ヴァティの剣は一撃でゴブリンの体を真っ二つにした。
え?一撃?ヴァティにそこまでの力は・・・。ヴァティ本人も驚いている様子だ。
遠方からトューサの魔法が飛んでくる。鋭く尖った岩を相手にぶつける魔法だ。残り2体のゴブリンのうち、一体にダメージを与え、のけぞらせることで。攻撃を受ける俺の負担を減らす考えだろう。
トューサとも長いんだ。考えることは手に取るようにわかる・・・あれ?岩が大きくないか?トューサの放った岩はゴブリンの腹部に直撃し。一撃で葬り去った。
彼女は魔力の配分を間違えるようなへまはしない。・・・・・もしかして、全員にバフをかけている?そんな時間があったようには思えない。いったいどうやって?エヴァちゃんの方を見ると、彼女はビクッ!とこちらを見返してきた。
「アイティ!」
ヴァティが叫ぶ。そうだ、ゴブリンはもう一匹残っていたのだった。俺としたことが油断した。即座に回避行動をとるが、少しかすってしまった。少しのかすり傷だが、これが原因でパフォーマンスが落ち、さらなる大怪我につながらないとは限らない。すでに治った怪我とはいえ、余裕があるときには安全を第一に考え、下がって回復をする。それが俺らのルール。・・・え?もう治ってる?
何が起きたのか理解できない。いや、理屈は分かる。ヒールをかけてくれたのだろう。しかし早すぎる。いくらヒーラーがいるとしても、回復のために下がるのは基本だ。怪我をする、前線から引く、ヒーラーに頼む、ヒーラーが祝言を唱える。このプロセスがいる。怪我をするのを見越して、先に唱えていたのだろうか?いや、今回は完全に俺の油断だ、そんなことは不可能だろう。
エヴァさんの方を見ると、彼女はビクッ!とこちらを見返してきた。
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「なぁ、リーダー。」
「ねぇ、リーダー。」
最後のゴブリンをヴァティが葬った後、二人が声をかけてくる。いや、何の用かは分かっている。
「もしかしなくても、全員にバフをかけてたよな・・・?」
二人が頷く。敵を見つけてから、3人にバフをかける?そんな芸当が可能なのだろうか?
「私、隣で見てたんだけど。祝言の声は聞こえなかったけど、ものすごい速度で口を動かしてたのよね。あれ、祝言唱えてたのかなぁ?ていうか聞こえないほどの声でもいけるものなの?」
トューサがそう言うが、俺だって分からない。そもそも祝言は長く、覚えにくく、発音しにくい文字列が並ぶものだ。バフの祝言なんて暗記してるやつがいることに驚きだ。
「まぁ、邪魔してくるわけじゃないんだ。まさかあれだけの実力者が、魔力の配分もできないとは思えない。エヴァさんのことは置いておいて、俺たちはいつも通りで行こう。」
「雑魚敵相手に、あれだけ奇跡ぶっ放しても問題ない魔力量ってかなりやばいと思うんだけど・・・。」
ヴァティの言葉に心の中で頷いた。
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その後も何度かモンスターと遭遇するが、そのたびにエヴァさんは全員にバフをかけていた。そして皆が皆、そんなに使って魔力は大丈夫なのかとエヴァさんの方を見た。
「止まって、今回の標的が見えたぞ。」
全員と情報共有をする。と言っても特に有力な情報はない、だからこそ俺が受けるのを渋ったのだから。
ただし、ただの強いウルフなら問題はない。問題は突然変異種のモンスターはたまに、特殊な能力を持っている可能性があることだ。
ないことを祈るが、楽観視は良くない。様々なパターンを脳内シミュレーションし、不確定要素のある戦いに挑む。
ある程度近づくと、変異種のウルフもこちらに気が付いた。
ワオォオオオオォォオオオオォォン!
変異種のウルフが吠える!すぐに攻撃に備えようとするが、体が動かない。
麻痺か!
厄介な異常状態だ。普通ならかなり上位のモンスターしか持っておらず、まったく対処できない冒険者も多い。
幸いにも、変異種のウルフから遠い2人は麻痺にかかっていないようだ。麻痺状態になったことをエヴァさんに伝えるのはヴァティがやるだろう。
あとはエヴァさんが本を取り出し、麻痺の治療をするまで時間を稼がなくてはならない。俺は攻撃をこちらに向けるために、足を広げ、踏ん張ると、挑発の叫びを上げ・・・あれ?体が動く?
隣を見ると、ヴァティも動けるようだ。驚いた様子を見せながらも変異種のウルフに対峙している。
キュイン
二人に同時に光が降り注ぐ。AoE麻痺耐性付与!?そんな奇跡、普通なら一生見る機会のないような代物だぞ!?
かなり強力な能力を持ったウルフだとわかって数秒、ただの大きくて強いウルフに成り下がった。
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ギルドに戻り。モンスターの素材の清算をしている待ち時間。
モンスターの素材はギルドに依頼して回収屋を雇っていた。逃げるのに特化した冒険者がギルド所有の魔法のカバンにモンスターの死体を入れて回収してくれるのだ。魔法のカバンは見た目以上に物が入るカバンで、個人で所有する者は少なく、もちろん俺たちも持ってはいない。
「いやぁ、すごかったねぇ、エヴァちゃん。」
「あぁ、AoEの麻痺治療に麻痺耐性付与なんて初めて見た。」
「え?麻痺なんてかかってたの?」
そう二人が話している。気づかないのも無理はない。治るまでが超速だったし、麻痺は見た目に出ないから、気づきにくい。即気づき、即直した、エヴァさんが異常なのだ。ヒーラーという職業を極めるために、よく人を見ているのだろう。
「麻痺の治癒の祝言なんて、覚えてるものなの?」
「どうなんだ?リーダー?」
「んー・・・。一流のヒーラーが、麻痺を使ってくるモンスターを狩りに行く時なら、覚えるんじゃないか?」
麻痺を使ってくるモンスターなんて、俺は今回が初めてだが。
あの圧倒的な力。仲間にできれば、かなりの安全が・・・。しかし俺たち程度の冒険者が誘うのも失礼なんじゃないだろうか・・・。
俺が悩んでいると、二人が声をかけてくる。
「何悩んでんのさ。リーダー?・・・って何となく分かるけど。」
「お前らしくもない。安全のために全力を尽くす。それが俺たち安全第一だろ?」
「そうそう。安全性が増す手段があるのに飛びつかないなんて、リーダーらしくないよっ?」
「お前ら・・・。」
そうだな。ちょっと相手が凄すぎて、弱気になっていた。俺は安全のために全力を尽くす!土下座してでも仲間になってもらおう!
「エヴァさん!・・・っていねぇし!!」
「エヴァさんならギルドからの報酬だけ受け取ると、サッサとどっか行っちゃいましたよ?」
受付のお姉さんが教えてくれる。モンスター素材の清算がまだなんだが・・・。
「お前ら!」
「分かってる。」
「みんなで探すよ!」
「良し!人通りの多いところから、重点的に探すぞ!!」
「「おーっ!!」」
この日、俺たちがエヴァさんを見つけることはなかった。




