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五十年前のJKに転生?しちゃった・・・  作者: 変形P
昭和四十一年度(高校一年生)
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六十一話 卒業式、終業式、春休み

松葉女子高の卒業式がしめやかに行われた。


俺は三年生に知っている人がいなかったので、特に感傷的にはならなかったが、それでも『仰げば尊し』を合唱すると、ぐっとくるものがあった。


卒業式が終わって、臨席していた俺たちも教室に帰る。恵子は目を真っ赤にしていた。


「感極まって泣いちゃった」


自分の卒業じゃあないのに、卒業式の雰囲気で泣いちゃう女子生徒は昔から多い。俺は恵子の気を落ち着かせてから、自分の席に座った。


するとそこへ、頼子と良子がやって来た。


「ねえ、美知子さん、ちょっといいかしら」


二人に呼ばれて廊下の端に来ると、頼子が俺に囁いた。


「ねえ、知ってる?麗子さんが好きな相手とキスしたそうよ」


「ええっ?」


俺は驚いた。麗子がキスをしたということに驚いたわけじゃない。そのことを頼子たちに話したことに驚いたのだ。


「お相手とか、そのときの様子とか、・・・聞いたの?」


「相手についてはまだ教えてくれないの。ただ、二人きりになったときに、相手の方から抱きしめてよいか、聞かれたんですって」


それはそういうシチュエーションだったんじゃないのか!?


「最初は拒んでたんだけど、拒みきれなくなって、ぎゅっと抱きしめられたらしいの。そしたら・・・きゃーっ!これ以上言えないわ!」興奮する頼子。


「抱きしめられたまま、キスされたんですって」頼子が言えなかったことを、平然と説明する良子。


「そ、そうなの。・・・無理矢理なの?」俺はそ知らぬ顔で続きをうながした。


「無理矢理っぽく言ってたけど、麗子さんがそうなるよう差し向けたんじゃない?」


良子が冷静な評価を下す。


「でも、うらやましいわ。・・・私も恋人とキスしてみたい」頼子が恋に恋する乙女の目をして言った。


「私も・・・」と良子。


「じゃあ、二人でキスの練習をしてみたら」


俺が提案すると、二人がぎょっとした目で俺を見た。そりゃ、普通はそうだよな。


「あ、変な意味じゃないの。あくまで練習よ。二人は仲良しだから・・・」


頼子と良子がお互いの顔を見つめ合って頬を染めた。そしてそのまま顔をそらさなかった。


・・・まさか、本気になったんじゃないだろうな?


「じゃ、じゃあ、またね」俺はあわててそう言って二人を置いて逃げた。二人が道を踏みはずさないことを祈りつつ。


終業式の日になると、俺たちは体育館で三年生がいない終業式に参列した。一年生の最後の日であることが実感されて寂しい気分になった。


教室に戻ると、すぐに中村先生が通信簿が入ったふろしき包みを抱えて現れた。


「みなさん、今日で一年生は終わりです。学校に置いてあるものは全て持ち帰ってください」


中村先生が注意事項を述べた。


「二年生のクラスは始業式の日に発表されるので、指定されたクラスに集まってください」


クラス替えの話を聞いてざわつく教室内。


「先生は今度は二年生の担任になるの?」淑子が先生に聞いた。


「ええ、この中の十人くらいはまた私のクラスに入ってもらうことになるでしょう」


恵子がまた心配そうな顔をした。


「それでは通信簿を配ります」中村先生が通信簿を配り始めた。


俺の名前が呼ばれると前へ出て通信簿を受け取った。すぐに席に戻ってそっと開いてみる。英語がまたしても五、その他の科目は四が多く(美術も四だった)、家庭科は三のままだった。


トータルでは二学期と同じ程度で、先生が書く自由記述欄にも、二学期と同じように「面倒見が良い。勉強に頑張っている」といったことが書かれてあった。


今回は成績が上がらなかったが、まあこんなものだろう。特に気落ちすることなく、通信簿を学生カバンにしまった。


先生から春休みの過ごし方の注意事項を聞いたら今日は終わりだ。学校に置いてあった体操服やらもろもろを手提げカバンに押し込む。


「これで一年生が終わりだね」と恵子が言った。


「四月になると教室が変わるし、クラスメイトも変わるから、寂しいね」


「春休みにどこか遊びに行く?」俺は気落ちしている恵子を励ますために言った。


「いいわね」


「私もいいかしら」と委員長が口をはさんだ。


「私たちもご一緒したいわ」麗子が頼子たちを引き連れて寄って来た。


「みんなも一緒でいい?」俺は恵子に小声で聞いた。


恵子がうなずいたので、俺はみんなの方を向いた。


「じゃあ、いつ、どこに行く?」


まだ三月下旬だから、桜は咲いてないし肌寒い。かといってこの人数で誰かの家に押しかけるわけにもいかない。


「市内の百貨店はどう?」麗子が提案した。


バスで行かないといけないが、服や小物をウィンドウショッピングするのも悪くないだろう。


みんなが賛同したので、明日の午後二時頃に百貨店の入口付近で待ち合わせをすることにした。ちなみに淑子は帰省、河野さんは部活で不参加だ。


その日は恵子と一緒に帰った。途中、恵子が聞いてきた。


「ねえ、みーちゃん。今日、遊びに行っていい?」


「うん、いいよ。カバンや荷物を置いてすぐ来てよ。お昼ご飯を作ってあげるから」


「わかった」


俺は家に帰ると、母親に言った。「今日、ケイちゃんが来るから、ケイちゃんの分もお昼を作るわ」


「何にするの?」


「うどんがあったから、使っていい?」


「いいわよ」


そんなやりとりをしてる間に恵子が来た。セーラー服を着たままで、家が近所だからほんとにすぐだ。


「お邪魔しまーす」


「上がって、ケイちゃん。これからうどんを作るから」


うどんなんて簡単だ。生麺があるので、それをゆでる。もう一つの鍋でお湯をわかし、俺の時代にもあった定番のうどんスープの素を投入する。


どんぶりにうどんを移し、スープをかけ、後は冷蔵庫に端が残っていた青ネギとかまぼこを薄く切って上に載せた。俺は使わないが、お好みでかける七味唐辛子を出しておく。


既に冬休みになっていた武、恵子、俺と母親の四人で、お茶の間でうどんをすすった。


食事が終わって食器を片づけると、武はお茶の間でテレビを見ていたので、俺は恵子を連れて俺の部屋に入った。


「一年生がとうとう終わっちゃったね」畳の上に座るとすぐに恵子が言った。


「二年生のクラス替えが心配?」そう聞きながら俺は恵子の肩を抱いた。


「うん」恵子が俺にしなだれかかった。俺は恵子の体を軽くたたいた。


「いつまでも友だちだから、あまり心配しないで」


「うん。・・・みーちゃんて頼りになるね」


「そう?」


「男の子だったら、お嫁にしてもらうのに・・・」


「男だったら、松葉女子高に通ってないわよ」


「そうだね、ふふ・・・」恵子は笑って体を起こした。


その後、少しばかりたわいのないおしゃべりをして恵子は帰って行った。


翌日、昼食をとってからセーラー服を着て家の前に出た。百貨店のような人が多いところに行くときは制服が無難だ。知人、特に先生に出会いかねない。


まもなく、恵子が同じくセーラー服でやって来た。二人そろって近くのバス停に行くと、委員長が立っていた。


「美知子さん、会えてよかった」近寄って、俺に寄り添う委員長。


「こんにちは、喜子さん」


「委員長、こんにちは」そう言いながら、恵子も俺にそっと体を寄せてきた。


「小柴さん、一年生が終わったから、もう委員長じゃないわよ」と委員長。


「でも、委員長は二年生でも委員長になると思うわ」と恵子が言い返した。


そのときバスが来たので、三人で乗った。


市内の百貨店は小さめのデパートで、地階が食料品、一階が化粧品や靴、二階がレディースファッション、三階がメンズファッション、四階がおもちゃや書籍、雑貨類、五階が大食堂、屋上が小さな遊園地になっていた。


一階の入り口あたりで使ったことのない化粧品を三人で見ていると、店員のお姉さんが聞いてもいないのにいろいろと説明してくれた。あげくのはてにお試ししませんかと言われたけど、化粧しているのを先生に見つかったら大変なので、丁重にお断りした。


「美知子さーん!」俺を呼ぶ声がした。


振り向くと、麗子と頼子と良子が百貨店に入ってきたのが見えた。


「お待たせしたかしら?」


「いいえ、さっき来て、化粧品を見てたの」


俺たちは説明してくれた店員さんに会釈すると、みんなで連れだってエスカレーターで二階に上がった。


そしていろいろな服を見ながら、あれはいいとか、これは似合わないとか言い合って楽しんでいたが、特に頼子と良子が二人できゃっきゃ言いながら、仲良く服を見立てあっているのに気づいた。


「頼子さんと良子さん、何か前よりも仲が良さそうね」俺は麗子に囁いた。


「そうなの。前から仲良かったんだけど、最近は特に親密なの。・・・私たちみたいに」麗子が小声で言った。


俺は咳をしてごまかした。そして、二人が仲いいのが、俺のせいでありませんようにと願った。


「ねえ、屋上の遊園地に行かない?」恵子が提案したので、俺たちは屋上に上がった。


遊園地と言ってもそんなに本格的な遊具はない。パチンコ店から流出したような古いパチンコ台やスマートボールが並んでいるゲームコーナーがあったが、もちろんテレビゲームなどはない。


それでも屋上の隅に観覧車があったので、みんなで乗ることにした。ただし、ゴンドラが四個しかない、高さ数メートル程度のこじんまりしたものだ。


一つのゴンドラに四人までしか乗れなかったので、最初のゴンドラに俺と恵子と委員長、次のゴンドラに麗子たち三人が乗った。


一周わずか数分で、景色も屋上から見るのと大差ない。しかし俺は、実は高所恐怖症だったので、このくらいの高さで不満はなかった。


最後にお茶をするために大食堂に寄った。和洋中華なんでもありの食堂で、専門店化してなくて珍しいなと最初は思ったが、この時代では普通のことのようだった。


入り口で食券を買う。クリームソーダを頼む人が多かったが、俺は飲んだことがないレモンスカッシュにした。ほんのり甘酸っぱい炭酸飲料だった。


家に帰ると真紀子からのハガキが届いていた。「松葉女子高に進学することに決めた」という内容だった。


俺は返事を書きながら、ケンちゃんとコウちゃんが気落ちしてるだろうなと思いをはせた。


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